[KATARIBE 29543] [HA06N]小説『アヒルの冒険』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Mon, 28 Nov 2005 23:57:53 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29543] [HA06N]小説『アヒルの冒険』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200511281457.AA00121@hikaru-h8akl379.blue.ocn.ne.jp>
X-Mail-Count: 29543

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29500/29543.html

ふきら@溜まりっぱなし です。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
お題は
22:59 <Role> rg[Morris]HA06event: トイレットペーパーの芯を持ったアヒル
のぬいぐるみがきらきらと光を振りまいた ですわ☆

でした。
**********************************************************************
小説『アヒルの冒険』
====================

登場人物
--------
 アヒルのぬいぐるみ:
  帆川神社にいる人外。

 火川猛芳(ひかわ・たけよし):http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
  帆川神社の宮司。


本編
----
 ガアガアと鳴きながら、アヒルのぬいぐるみが誰もいない帆川神社の本宮の
廊下を歩いていた。その足取りはふわふわと軽い。
 冬も間近に迫った秋の昼下がり、日の照っていない木の板の廊下はひんやり
と冷たいが、もちろん、そんなことはぬいぐるみには関係ない。
 本宮の中からは猛芳が祝詞をあげている声がしている。その他には何の音も
聞こえない。
 アヒルは鳴くのをやめて、静かに廊下を進む。毎日磨かれているせいか、廊
下はつるつるとしていて、思うように前に進めない。走ろうとしてみたが、あ
まり変わらないので、アヒルは走るのをやめて、再びふわふわと歩く。
 廊下は延々と続いているわけはなく、アヒルはやがて行き止まりにたどり着
いた。
「グワ?」
 前に立ちはだかる木の戸を見上げて、首を捻る。そのまま前に進もうとする
が、当然戸は動く気配を見せない。
 アヒルは数メートル後ろに下がると、勢いを付けて走り出した。……もっと
も、床はつるつるなので足の回転と進む勢いが食い違っている。本人にしてみ
れば、勢いよく走っているつもりだろうが、端から見たらそれほど進んでいる
ようには見えていない。
 そんなことは気にせず、アヒルは先ほどよりは力強く戸にタックルした。
 ぽふ、という情けない音がして、それでも戸はほんの少し開き、数センチの
隙間を作る。その隙間にくちばしを挟み込んで、アヒルは中に入り込んだ。
 戸の向こうは、小さく薄暗い倉庫になっていて、いろんな物が所狭しと積ま
れていた。
「グワ」
 とりあえず、何も考えず、直進してみる。
 コツン、と足に何か引っかかったかと思うと、アヒルの上に影ができる。
 見上げると、迫ってくる看板。足に引っかかったのはそれを絶妙なバランス
で支えていた棒で、その棒がずれたために看板が倒れかかってきたのである。
「ガーッ」
 どんがらがっしゃん、とまさに漫画のような音がした。
 それを聞きつけた猛芳が慌てて、倉庫へとやってくる。
「なんじゃ、なんじゃ」
 彼は戸を開こうとしたが、やけに重い。どうやら中から何かが押しているよ
うで、頭を入れる程度に開くのが精一杯だった。
 戸の付け方を逆にせねばな、と思いながら、その隙間から顔を覗かせると、
中は凄い有様になっていた。
「……ガァ」
 看板の下からアヒルの鳴き声が聞こえる。猛芳は溜め息をついた。
「お前か……」
 とりあえず、隙間から手を入れて、内側から戸を押さえている物を退ける
と、猛芳は中に入って看板を持ち上げた。
 掃除道具やら神事で使う道具やらの中からアヒルがもぞもぞと顔を出す。
その顔を見て猛芳は笑った。
「何くわえてるんじゃか」
 顔を出したアヒルは何故か口にトイレットペーパーの芯が嵌っていた。掃
除道具の中に混じっていたのだろう。
 顔は出せたものの、そこから身動きが取れない。猛芳は慎重に足を進めて
いって、アヒルのところまで行くと道具をかき分けて、アヒルを抱え上げた。
「……ありゃ」
 持ち上げたアヒルは体中に金粉をまとっていた。それがくすぐったいのか、
猛芳の手の中でアヒルは身を震わせる。
 金粉が宙を舞い、窓から入ってくる日に反射して、金粉がきらきらと光る。
「きれいなのはいいんじゃが……これはどうしてくれるかのう」
 猛芳が困った顔をしてアヒルを持ち上げると、アヒルの口に嵌っている芯を
取ってやる。
「グワ」
 アヒルはとりあえず、一声鳴いてしょんぼりと頭を下げた。


時系列と舞台
------------
2005年11月。帆川神社にて。

解説
----
ぬいぐるみなので、潰れても平気。

$$
**********************************************************************
 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29500/29543.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage