[KATARIBE 29518] [HA06N]小説『ぞうきんに紛れた石ころ』

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Date: Fri, 18 Nov 2005 00:00:25 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29518] [HA06N]小説『ぞうきんに紛れた石ころ』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
お題は
23:11 <Role> rg[hukira]HA06event: 使い古しのぞうきんなどの中からすべす
べの石がでてきた ですわ☆

でした。
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小説『ぞうきんに紛れた石ころ』
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登場人物
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 一白(いっぱく):http://kataribe.com/HA/06/C/0583/
  津久見神羅の式神。

 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

本編
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 玄関の戸を開けると冷たい空気が入ってきて、神羅は思わず肩をすくめた。
その脇を一白が抜けるようにして外に出る。
「うわー さむーい」
 とか言いながら全然寒そうな素振りを見せていない。
「……お前さ、実はそんなに寒くないやろ?」
 両手をポケットに入れたままの神羅が言った。
「まあね」
 そう答えて一白は境内の鳥居の方へと駆け出していく。
 入り口の鳥居に到着した一白は大きく息を吸い込んだ。鼻の奥の方が冷たさ
でつーんとなる。
「はぁ」
 吸った息を吐いて、鳥居から街を見下ろした。時間は午前六時半を少し過ぎ
たところ。街は白い霧に包まれていて、いつも見ている風景とは違っていた。
「うわぁ……」
 思わず声を上げる一白。その隣にはいつの間にか神羅が立っている。
「たまには早起きするもんやなぁ」
 両手を擦りあわせながら神羅は言った。そして、振り返って本宮へと歩いて
いく。隣にいた神羅がいなくなったのに気付いて、一白も慌てて本宮へと走っ
ていく。
「さて、爺さんがおらへんしさっさと終わらせよか」
「うん」
 普段は本宮などの掃除は平日は祖父の猛芳が、休日は神羅がやるのだが、今
日は老人会かなにかの旅行で猛芳がいないので神羅がすることになっていたの
だった。しかし、平日なので神羅は研究室に行かなければならず、帰ってくる
のは夜遅い。そんなわけで、こんな朝早くに掃除をすることになった。
「さて、どうするかな……」
「僕、ほうき」
 一白がすかさず言った。掃除は簡単に箒で床を掃いてぞうきんを掛けるだけ
のものである。
「わしだって、ほうきしたいわ」
 む、とにらみ合う二人。
「じゃんけんといくか」
「うん」
 そう言ってグーの形にした手を互いに前に出す。
「「じゃんけん、ほいっ」」
 神羅はチョキ、一白はパー。
「うし」
 小さくガッツポーズをする神羅。
「えー ずるいー」
 対する一白は口をとがらせた。
「ずるいも何も、じゃんけんで決めたやんか」
 そう言って神羅は箒を持つと、廊下の端から掃いていく。一白はその間にぞ
うきんを取りに行った。
 無造作に積まれているぞうきんの山からきれいなぞうきんを探していると、
その山の中から何かが転がり落ちて、コツンと乾いた音を立てた。
「ん?」
 一白はその転がった物を拾い上げる。それは白くすべすべとした石だった。
境内に敷き詰められている石とは見た目が違う。
 その石をとりあえずポケットにしまって、選んだぞうきんを濡らしにいく。
 水は当然冷たく、ぞうきんを絞ったら手がじんじんと痺れるような感じがし
た。
「うへー」
 赤くなった手に息を吹きかけているところに、箒を持った神羅がやって来
た。
「廊下は全部掃いたから」
「あ、神羅」
 そう言って一白はポケットから先ほどの石を取り出して、神羅に見せた。
「こんなのがぞうきんの中にあったんだけど」
「へえ」
 神羅はその石をつまんでぐるぐると回したり、日に照らしてみたりすると、
表面を爪でひっかいた。石は思ったより柔らかく爪の傷跡が残る。
「これって滑石か」
「かっせき?」
「非常に柔らかい石で、曲玉とかの原料に使われたらしい」
「なんで、そんな石がこんなところに?」
「さあ? カラスか猫が持ってきたんちゃうか」
「ふーん」
 一白にその石を返す。
「ねえ、曲玉の原料ってことはこれも磨いたら曲玉になるのかな?」
 一白が尋ねる。
「柔らかいからなあ……でも、まあうまく削ればできるんちゃうか」
「やってみよか」
「やってみ。ただ、ワシよりも爺さんの方がそういうのに詳しいやろから爺さ
んが帰ってきてからな」
「うん」
「んじゃ、とりあえずぞうきんがけ行ってこいー」
「えー」
「えー、じゃなくて」
「はーい」
 しぶしぶ廊下へと向かっていく一白。その後ろ姿を見届けてから、神羅は境
内の掃き掃除を始めた。

時系列と舞台
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2005年11月。

解説
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滑石について詳しいことは聞かないでください。

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