[KATARIBE 29516] [HA06N]小説『消息不明のあいつ』

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Date: Wed, 16 Nov 2005 00:46:09 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29516] [HA06N]小説『消息不明のあいつ』
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
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ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
もはや三十分で書き上げることを忘れつつある今日この頃。

お題は
01:25 <Role> rg[hukirdead]HA06event: 道行くサボリの学生が土下座する ですわ☆
でした。

……「道行く」じゃないですが。
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小説『消息不明のあいつ』
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登場人物
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 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

本編
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 11月ともなると、さすがに研究室の空気がピリピリと引き締まったものに
なってくる。特に修士二年がいると修士論文締め切りまで実質二ヶ月と少しし
かないので、引き締まるというよりは張りつめた雰囲気になる。
「頑張ってるねぇ」
 昼食から帰ってきた神羅は難しい顔をしている修士二年の姿を見て、ニヤニ
ヤしながら言った。
「あ、津久見さん。最近、あいつ来てます?」
 二年の一人が神羅の隣の席を指した。その席の主も彼と同じ二年だがここ最
近、というか後期に入ってから姿を見ていない。
「そういや見てへんな」
「大丈夫なんすかねえ……」
「まあ、あかんかったら来年もここにおることになるだけやしな」
 はは、とその二年は笑ってから、自分の作業に戻る。神羅も自分の席に戻
り、学会発表用の資料作成を再開する。
 研究室が再び静かになる。キーボードを打つ音が恒常的に響き、時折それに
まじって溜め息や小さなうめき声が聞こえてくる。
 三時間が経ち、ブラインドの隙間から差し込んでくる日光が橙色に染まりは
じめる。神羅はディスプレイから目を離すと、大きく背伸びをした。
「あー ちょっと、コンビニ行ってくるけど何か買ってこよか?」
 相変わらず難しい顔をしている修士二年に尋ねる。
「え? 奢りですか?」
「あほう」
「ですよね…… 肉まんでいいです」
「あいよ」
 そう言って、ジャケットを羽織り学科棟を出る。
 道路には落ち葉が散乱し、ところどころで自転車が倒れていた。どうやら風
が強いらしい。
「さむっ……」
 背中を丸めて、学科棟から歩いて五分のコンビニに入る。
「いらっしゃいませ」
 店内には立ち読みしている客が数名。その中によく知った人物を発見する。
神羅は後ろから近づいて、その人物の肩を叩いた。
「うわっ」
 彼は驚いて、神羅の方を見る。そしてまずそうな表情を浮かべた。
「げ、津久見さん」
「げ、はないやろ。ところで、こんなところで何してんの?」
 神羅が尋ねると、彼はいきなり店内で土下座した。
「どうか、ここで会ったことは先生には言わないでくださいっ」
 いきなりの行動に店員と彼の隣で立ち読みしていた客が二人の方を見る。神
羅は慌てて土下座している彼を立ち上がらせた。
「何を唐突に」
「いや、先生には風邪で寝込んでいるって言っちゃったもんで……」
 困った顔をして頭を下げる彼。どうやら、全く姿を見せなかったので先生か
ら直々に電話があったらしい。そのときについ仮病を使ってその場を逃れたと
いうことを彼は言った。神羅はそれを聞いて溜め息をついた。
「まあ、別に告げ口する気もあらへんけど……修論を書くのはアンタやで?」
「はあ……それは重々」
「それやったらええけどね。ほんじゃ」
 彼に言って、神羅は自分の買い物を済ませてコンビニを後にする。
「やれやれ、やなあ」
 道の途中で溜め息をつく。
「ほんまに大丈夫やとええんやけどな」
 そう呟いて、神羅は買った肉まんが冷めないようにと歩くスピードを上げた。


時系列と舞台
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2005年11月。大学近くのコンビニにて。

解説
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もうしばらくすると学部四年もピリピリし始めます。

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