[KATARIBE 29515] [HA06N]小説『子猫の磁力』

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Date: Mon, 14 Nov 2005 23:27:31 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29515] [HA06N]小説『子猫の磁力』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
と言いつつ最早三十分で終わらせることを忘れつつある今日この頃。
お題は

21:39 <Role> rg[hukira]HA06event: 片隅に寂しげな子猫(雌)が転がっている 
ですわ☆

でした。
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小説『子猫の磁力』
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登場人物
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 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

本編
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 ニャア、と猫の鳴き声が聞こえたので、ついそっちの方向に行ってみたのが
いけなかった。更に言うなら、鳴き声の主が交差点の隅で丸まっている子猫
だったのがとどめだった。
 薄汚れた子猫とじゃれ合いはじめて十数分。子猫は思いの外、神羅に懐いて
しまい、全く飽きようとする素振りを見せないでいる。
 通勤、通学の時間帯を過ぎた商店街の通りは、そんなに人通りが多いという
わけではないが、道行く人は子猫と遊んでいる神羅をちらりと見て過ぎてい
く。何を思っているのか、想像したくもない。
 神羅は携帯電話を取り出してディスプレイの時計を見た。いつもだと既に研
究室に着いている時間。別に講義があるわけではないので、いつ研究室に行っ
ても良いのだが、それでもスケジュールが狂うと何となく嫌な気持ちになるわ
けで。
「でも、こいつがなあ……」
 神羅は立ち上がって、数歩進んで後ろを振り返った。先ほどまでじゃれてい
た子猫が後ろについてきて、彼を見上げている。その姿を見て溜め息をつく
と、再びしゃがんで子猫を撫でてやる。
「朝からこんなところで転がってるってことは飼い猫じゃないんやろしなあ」
 困った困った、とか言いつつも手はずっと子猫を撫でている。
「さすがに研究室に連れて行くわけにもいかんし…… かといって、神社で飼
うわけにもいかんし……」
 撫でている手の力を少し強めてやると、子猫は気持ちよさそうに目を細め
る。
「……ひょっとしてどつぼに嵌りつつある?」
 誰に問うたわけではないが、その推測は正解である。
「だよなあ……」
 一人で納得。
 しかし、このままずっとここで子猫とじゃれ合っているわけにはいかない
し、そろそろ道行く人たちから不審がられそうな気もすると神羅は思った。
「自分から関わり合っておいて、自分から去っていくなんて勝手な奴だと思っ
てくれてもええよ」
 子猫に話しかけつつ、神羅は鞄に付けている御守りを外して子猫の首に巻い
た。
「ま、せめてもの……何やろ? 駄賃か、餞別か。まあ、どっちでもええけど」
 首に掛かっている紐がくすぐったいのか、子猫はしきりに肩をすくめるような
仕草をした。
「うちの神社謹製の御守りに、ささやかな祝福付きや。これで事故には遭いにく
くなるやろ」
 そう言って子猫の頭を二度ほど叩くと、神羅は立ち上がった。
「ほなな」
 いつもより足早にその場を去る。500メートルほど進んで角を曲がってから振
り返ってみるが、子猫の姿はない。しばらく、その場に立っていたがついてくる
気配もなかった。案外、あっさりと忘れられてしまったのかもしれない。
「ま、その方がええか」
 神羅はそう呟くと、研究室への道を急いだ。 

時系列と舞台
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2005年11月。

解説
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これもまた一期一会。

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