[KATARIBE 29511] [HA06N]小説『爺さん対爪楊枝』

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Date: Fri, 11 Nov 2005 01:41:51 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29511] [HA06N]小説『爺さん対爪楊枝』
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ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
お題は
00:31 <Role> rg[hukira]HA06event: 鼻歌を歌っている酔っぱらいに使い古し
の爪楊枝がぶつかった ですわ☆

でした。
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小説『爺さん対爪楊枝』
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登場人物
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 火川猛芳(ひかわ・たけよし):http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
  帆川神社の宮司。

本編
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 夜の寒さが身に凍みるような季節。こんなときは一杯やるに限る。というわ
けで、なじみの居酒屋で呑んできた猛芳である。
 人通りのない道を少しふらつきながら歩いている。風は冷たいが、それが火
照った顔に丁度良い。
「むぅ。ちょっと飲み過ぎたかの」
 自分の頬を手のひらで軽くはたく。大丈夫な分量のつもりだったが、体の方
がもう弱ってきているのかもしれないと彼は思った。
 商店街を抜け、電灯が少ない道に入ったとき、猛芳は後ろに何かの気配を感
じた。
 立ち止まって振り返ってみるが、何もいない。辺りは暗いが人が隠れられる
ような物陰はない。気のせいか、と首をかしげて再び歩き出すが、やはり何か
の気配が後方にあった。
「ま、何かあったらそのときはそのときじゃ」
 そうして、点滅している電灯の下を通ったときである。後ろの気配が急に動
いたかと思うと、後ろの首筋にチクリと何かが刺さった。
「っつ!」
 慌てて振り返ってみるが、やっぱりそこには誰もいない。しかし、電灯が照
らしている辺りをじっと見ているうちに何かが浮いているのに気がついた。
「ん……爪楊枝、か?」
 明かりが点滅しているのではっきりとは見えないが、確かにあのフォルム、
あの色は爪楊枝である。猛芳は宙に浮いている爪楊枝に近づいてみた。微妙に
ささくれができているところを見ると、新品ではないようだ。
「しかし、何故に爪楊枝?」
 爪楊枝はその場でくるくると何度か回転すると、首をかしげている彼にその
先を向けた。
「お」
 そして、勢いよく彼にめがけて飛んでくる。今度は目標が見えていたので難
なく避けることができた。
「危ないのぉ……って、まだ来るかっ」
 避けられた爪楊枝が向きを変えて、再び彼を刺そうとする。
「爪楊枝に恨まれる覚えはないが、厄介じゃのう」
 そう言うと猛芳は右手を握りしめて、構えた。
 正拳突きだと自分の手に刺さるので、右フックのような感じで横から殴ろう
とする。
「おろ」
 しかし、酔っぱらっていたせいか踏み出した足に力が入らず、大きく右によ
ろけてしまう。放った拳は空を切ったが、大きく位置がずれたせいで爪楊枝が
刺さることはなかった。
「……いかんの」
 両足を両手で叩いて気合いを入れる。そして、再び中腰に構えた。
 爪楊枝は先ほどと同じように向きを変え、一直線に彼の方に向かってくる。
「せいっ」
 今度はよろけることもなく、右フックが爪楊枝の横っ腹に当たる。飛んでい
るとは言え、所詮は爪楊枝である。殴られたそれは勢いよくブロック塀に当
たって、地面に落ちた。
「ふん」
 しばらく落ちた爪楊枝を睨んでいたが、全く動かない。
「まさか、爪楊枝に苦戦するとはの」
 猛芳は苦笑を浮かべると、その場を後にした。
 酔いは既に抜けてしまっている。吹いてくる風がやけに冷たく感じられた。

時系列と舞台
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2005年11月。

解説
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○爺さん vs. 爪楊枝(K.O.)

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