[KATARIBE 29502] [HA06P]エピソード『悩む人、二人』(修正版)

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Date: Mon, 07 Nov 2005 23:31:18 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29502] [HA06P]エピソード『悩む人、二人』(修正版)
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/P/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29500/29502.html

ふきらです。
とりあえず、登場人物紹介を適当に(本当に適当に(汗))付けて、ちょこちょこと
修正したんで流しておきます。
もっとも、一番直したかったのはサブジェクトのヘッダサインでした。

そんなわけでございますが、修正などよろしくお願いします。

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エピソード『悩む人、二人』
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登場人物
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 中内音々(なかうち・ねね):http://kataribe.com/HA/06/C/0582/
  何かに没頭すると周りが見えなくなる人。

 高瀬夕樹(たかせ・ゆうき):http://kataribe.com/HA/06/C/0581/
  無口な歌詠みな人。

 蒼雅紫(そうが・ゆかり):http://kataribe.com/HA/06/C/0573/
  武術以外はちょっと不器用な人。

 一之瀬二条(いちのせ・にじょう):http://kataribe.com/HA/06/C/0578/
  実は彫刻ができる人。

 御厨正樹(みくりや・まさき):http://kataribe.com/HA/06/C/0534/
  最初はどこにいたのか分からない人。

本編
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 創作部の部室。人はいるものの他の部室に比べて静かである。

 音々		:「〜〜〜〜」
 夕樹		:「悩んでるねぇ」
 紫		:「…………」
 一之瀬	:「悩んでますね。考えてるのは日本文学ですか?」

 一方はネタで悩み、もう一方はそもそも何をすべきかで悩んでいるようであ
る。

紫の悩み:不器用ですから……
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 一之瀬	:「もしもし、蒼雅さん? どうされましたか?」
 紫		:「え?…… あ、一之瀬さま…… ええと、私、何を創作
		:したらいいのかで躓いてしまっていて」
 一之瀬	:「まず、何か得意なものはありますか?」
 紫		:「……得意なもの……といいましても、剣術と扇術…… 
		:あとは」

 紫は肩に止まっている隼に目をやった。

 紫		:「……この子を使役するくらい、しか……」
 一之瀬	:「まぁ、その鳥さんは置いておいて、武術ばかりですか
		:(苦笑)」
 紫		:「……すみません、他に何一つ身に着けておらず……」

 そんな会話の中、音々は相変わらず一人ネタを考えることに没頭している。
どうやら、周りの状況なぞ全く気にしていないらしい。

 一之瀬	:「ふむ、小さな細工はどうですか? こういうのですが」

 一之瀬は木彫りの花を見せた。

 一之瀬	:「まぁ、私もまだまだで、指導できる立場ではないです
		:が、提案だけはしてみるわけですね。少しでも役に立て
		:ば嬉しい限りですが」
 紫		:「……彫り物、ですか」

 その花を見ながら、紫は恐る恐る木片に彫刻刀を入れた。

 紫		:「……いたっ」

 いきなり指を切ってしまう。指先から流れてきた血が小さな玉を作る。

 紫		:「……あ」
 夕樹		:「あらら(汗」
 紫		:「あ、す、すみません、ティッシュをっ(汗」
 夕樹		:「はいはい。ついでに絆創膏もどうぞ」
 一之瀬	:「大丈夫ですか?……絆創膏無いですし、やってしまい
		:ますか」

 一之瀬が本を出そうとするのと、ほぼ同時に夕樹がティッシュと絆創膏を
出す。

 紫		:「……すみません、お手数かけます」

 紫がにじんだ血ふいて、絆創膏をはる。

 一之瀬	:「ああ、要らなさそうですね」

 一之瀬は出そうとしていた本を再び仕舞った。

 一之瀬	:「ふむ、無理そうでしたら木彫りの細工は止めて措きま
		:しょうか?」
 紫		:「……はい」

 そう言って紫は俯く。

 紫		:「……戦うことしかできないんです。何かを作るこ
		:と…… 何ができるのか」
 一之瀬	:「まぁ、私は護身術程度ですけど、格闘は出来ますよ。
		:扇術してたら器用にはなりませんかね?」
 紫		:「修行の時はこなせるのですが……」
 一之瀬	:「戦いの器用さを応用できないんですか……」
 紫		:「……すみません、応用がきかないのです」

 再び項垂れる紫。

 一之瀬	:「まあ、練習ですよ。最初は危なくないものから頑張りま
		:しょう」
 紫		:「……はい、がんばります」
 一之瀬	:「粘土が良いですかね。今度材料持ってきておきますの
		:で。好きなように何度もやれば上手になりますし。」

 一之瀬は笑顔を浮かべる。しかし、その笑顔はなぜだかちょっと怖い。

 紫		:「は、はい(ど、どうしてそんな怖い顔をなさるので
		:しょう)」
 夕樹		:「(小声で)一之瀬先輩が微妙にスパルタになって
		:る……」
 一之瀬	:「ああ、すみません。私も私で人との付き合いと、笑顔が
		:苦手ですので、ある意味不器用なわけですね。失礼しまし
		:た」
 紫		:「い、いえ、ありがとうございました」
 一之瀬	:「ああ、やはり笑顔の練習はするべきなのでしょうか。多
		:少悩みますね……」

 一之瀬は寂しげな笑みを浮かべた。

 紫		:「……ええと、私も笑顔は得意とは言いかねますので。練
		:習のお手伝いはできそうにありません……」
 紫		:「お世話になっておりながら……お役に立てずにすみませ
		:ん」
 一之瀬	:「心遣い、どうもありがとうございます」
 紫		:「いえ、その、こちらこそ」
 一之瀬	:「いえ、心遣い受けること自体少ないので、嬉しい限りで
		:す。ありがとうございます」
 紫		:「はい……」

 紫はぎくしゃくと頭を下げた。
 その様子を隠れて見ているのが一人。

 正樹		:(じぃ〜)
 一之瀬	:「ああ、時間が。用事がありますので失礼いたします。あ
		:りがとうございました」
 紫		:「は、はい、ありがとうございました、一之瀬さま」

 一之瀬が会釈をして慌ただしい様子で部室を出て行く。

 正樹		:(なんというか……不器用だねぇ……)
 夕樹		:「む。御厨先輩、いつの間に」
 正樹		:「あ、ばれた。もうちょっとばれないかと思ったんだけ
		;ど……」
 紫		:「正樹さま、いらしたんですね」
 正樹		:「いやまぁ、うん」

 紫の両手が絆創膏だらけになっている。

 正樹		:「また、今日は怪我が多いね」
 紫		:「…………実は」
 正樹		:「実は?」

 正樹に居間までのことを説明する。
 話し終えて、紫は溜め息をついた。

 紫		:「武術での器用さは、応用できないようなのですね……」
 正樹		:「えぇっ!? だ、大丈夫なの!?」
 紫		:「い、いえ、怪我自体は稽古での打ち身にくらべれば」
 正樹		:「そ、そっか……」
 紫		:「……本当に、戦うことしか学んできておりませんでした
		:から……」
 紫		:「鍛錬をおこたった酬いです」

 俯く紫。

 正樹		:「うーん、まぁ……簡単な事からなれて行けば良いと思う
		:よ」
 正樹		:「いっそ、折り紙とか」
 紫		:「折り紙、ですか」

 不安そうな表情を浮かべる。

 正樹		:「もしかして……やったこと無い?」
 紫		:「…………」
 正樹		:(ショック受けてる)
 正樹		:「ま、まぁ……とりあえずやってみようよ」
 紫		:「え、ええとっ、その、私は……兄弟……がおりません
		:で、一人だと稽古をするか本を読むくらいしか」
 正樹		:「はい、折り紙」
 紫		:「はい……」

 紫は渡された折り紙と資料を真剣な顔で見つめる。その横で正樹は折り方を
見ることなく、手早く鶴を折っていく。

 紫		:「……正樹さま、器用でいらっしゃいますね」
 正樹		:「いや……そうかな……」

 一方の紫が折っている鶴はところどころが折れ曲がったりしていて。

 正樹		:「慣れだよ、慣れ。やってるうちにうまくなるって」
 紫		:「……はい」
 正樹		:「そ、そんなに落ち込まないで」
 紫		:「あ、いえ、がんばりますっ」
 正樹		:「そうそう、そんなにすぐに器用に慣れるわけでも無いん
		:だから。気長に行こう」
 紫		:「……はい、ありがとうございます、正樹さま」

 とりあえず、折り紙と粘土を頑張ってみよう、と紫は思った。

 正樹		:(とはいえ……これは重症だなぁ……)

 一応完成した鶴を見て正樹はそっと苦笑いを浮かべた。

音々の悩み:実は別のことで……
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 夕樹		:「ところで、ネタは思いついた?」>音々
 音々		:「……はっ、すみません、考え事をしていて耳に入ってい
		:ませんでした……あの、何でしょう?」
 夕樹		:「いや、別に用があるわけではないけど。邪魔したなら、
		:ごめん」
 音々		:「いえ、そんな、邪魔だなんて」

 慌ててフォローする音々。

 夕樹		:「で、ネタの方は?」
 音々		:「もう少しで形になりそうなんですが、なかなか……」
 夕樹		:「まあ、そんなもんだよねえ」
 音々		:「高瀬さんの方は、どうですか?」
 夕樹		:「いや、僕はふと思いついたものを歌にする方だから」
 夕樹		:「思いつかなければ、さっぱりで」
 音々		:「わかりますね……思いつくときはすぐにでも思いつくん
		:ですが、駄目なときは本当に何も出ないんですよね」
 夕樹		:「ま、そんなわけで、あまり悩みすぎるのもやめた方が良
		:いと思うよ。さっきからずっと悩みっぱなしだし」
 音々		:「そうですね」
 音々		:(津海希お姉さまに会う機会がなくて悩んでたとは言えな
		:い……)

 実は別のことを考えていたようで。

 夕樹		:「では、ぼちぼち帰るとしますか」
 音々		:「あ、はい」

 帰り支度をする二人。

 音々		:(いつになったらお会いできるのか……)


時系列と舞台
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2005年11月。創作部部室にて。

解説
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……本当に特徴値3がつくほどに不器用な紫さんなのでした。
そして、憧れの人が実は生徒会長ということを知らない音々さんでした。

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