[KATARIBE 29450] [HA06N]小説『ケーキの恨み』

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Date: Tue, 25 Oct 2005 01:03:48 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29450] [HA06N]小説『ケーキの恨み』
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29400/29450.html

ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。
大幅に時間オーバー……
お題は
00:11 <Role> rg[hukira]HA06event: おじいさんが土下座する ですわ☆
でした。
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小説『ケーキの恨み』
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登場人物
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 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

 フィルオナ:http://kataribe.com/HA/06/C/0504/
  神羅をマスターとする意思を持つ人形。

 一白(いっぱく):
  津久見神羅の式神。

 火川猛芳(ひかわ・たけよし):http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
  帆川神社の宮司。

本編
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 神羅が大学から帰ってくると家の中は微妙に緊張した空気に包まれていた。
気配を察した彼はいつもより慎重に廊下を進んでいく。一歩踏み出すたびにキ
シリと鳴る廊下の音がやけに響いて聞こえた。
 居間に近づくに連れて、声が聞こえてくる。どうやら祖父の猛芳らしい。神
羅はゆっくりと居間へ続く障子を開け、そっと顔を覗かせた。
 居間の座卓を猛芳と一白とフォルオナが囲んでいる。神羅が入ってきたと
ころに一番近い辺の対面にフィルが、そして、彼女の右隣に立っている一白が
いて、その対面になぜか土下座をしている猛芳がいた。
「あ、おかえりなさい」
 神羅に気付いたフィルがおろおろとした表情で言った。
 一白は怒った表情を浮かべている。
「……えー、どういうこと?」
 神羅はとりあえず一番聞きやすそうな彼女に尋ねた。
「いや、私が帰ってきたときには既にこの状況だったのです」
「大したことあらへん、という割には空気が緊迫しているのはなんでや」
「儂が一白のケーキを食べてしまっただけじゃよ……」
「……あ?」
 猛芳の言葉にあっけにとられた顔を浮かべる神羅。しばらくして、やっとそ
の意味が理解できたのか、苦笑いを浮かべて盛大な溜め息をついた。
「そんなことで、この状況か」
「神羅ぁ、どうにかしてくれんか」
 心底弱ったような声で猛芳が神羅に言う。どうやらいくら謝っても許してく
れないらしい。
 神羅は一白の方を向いた。
「なあ、許してや……」
「だめ」
 神羅の言葉を遮って、一白はきっぱり言った。こんなに怒っている一白を見
るのは主である神羅にしても珍しかった。
「どうせ、爺さんはケーキ買ってやろうって言ったんやろ? それでもだめ
なん?」
 猛芳が首を振って答えた。
「それが駄目らしい……」
 どうやら、その手が効かなくてかなり途方に暮れているようだ。
「なんでまた」
 と、言いかけてふと神羅はその原因に思い当たった。
「あー、あのケーキか」
 その言葉に一白は大きく頷く。一白が取っておいたケーキとは、神羅がこの前
遊びに行っていた神戸で買ってきた限定品だった。当然、この近くで買えるわけ
もない。
 神羅は苦笑を浮かべて腕組みをする。もう一度神戸に行ってもいいが、わざわ
ざケーキのためだけに行くのも馬鹿馬鹿しい。そもそも、神戸まで行く余裕はし
ばらくはない。
「しゃあないな……なあ、一白。もうすぐハロウィンやろ?」
「ん? うん」
 真意を掴みきれず疑問の表情を浮かべた一白がとりあえず頷く。
「確か駅前のケーキ屋で限定のパンプキンプティングを売るらしいんや」
「プティング!?」
「それで許してやってくれんか?」
 その言葉に一白はしばらく考え込んで、やがてこっくりと頷いた。その仕草を
見て猛芳とフィルは安堵の溜め息をもらす。
 神羅は座ったままの猛芳の方を向いた。
「そんなわけで、近々広告が入ると思うんで」
「おう。万難を排してきっちり手に入れてくるわい」
 意気込んで請け負う猛芳。神羅は、ふと、ケーキ屋の前に並んでいる女性の中
で居心地悪そうに並んでいる猛芳の姿を想像して苦笑を浮かべた。



時系列と舞台
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2005年10月下旬。

解説
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ケーキ一つでおおげさな……とは言い切れない辺りが何とも。

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