[KATARIBE 29438] [HA06N]小説『靴飛ばし』

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Date: Sat, 22 Oct 2005 17:15:30 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29438] [HA06N]小説『靴飛ばし』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。

お題は、
16:16 <Role> rg[hukira]HA06event: 鼻歌を歌っている酔っぱらいに片方だけ
の靴がぶつかった ですわ☆

一時間近くかかった……
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小説『靴飛ばし』
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登場人物
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 一白(いっぱく):
  津久見神羅の式神。

 金木犀の少女:帆川神社にある金木犀の精。秋の花を咲かせる時期に現れる。

 火川猛芳(ひかわ・たけよし):http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
  帆川神社の宮司。

本編
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「明日天気になーれ」
 一白が飛ばした靴が真上にくるくると回転しながら上がっていく。
 その様子を金木犀の少女が帆川神社の境内の真ん中辺りのベンチに座って眺
めていた。横にはぬいぐるみのアヒルがいて、彼女にずっと撫でられている。
 靴が落ちてきて、何回か回転すると裏を向いた状態で止まる。それを見て一
白は難しい顔をし、少女はけらけらと笑った。
「これで三回連続やね」
 そう言って空を見る。秋の気配を十分含む、遠く青く澄んだ空。雨が降りそ
うな気配は今のところ全くないのだが。
「変だよねえ……」
 一白は首をかしげてから、片足跳びで靴を取りに行った。そして、靴を拾い
上げると今度は手で軽く放り投げる。
 靴は2メートルほど先のところでバウンドし、少女の足下で止まった。
「普通やね」
 靴は表を向いている。別に靴がおかしいというわけではないようだった。
「もう一回やってみる」
 靴を取りに来た一白が言った。
 足に靴を引っかけて、サッカーボールを蹴るみたいに足を振り上げる。靴は
きれいな放物線を描いて、鳥居の方に飛んでいった。
「あ」
 思いの外よく飛んだ靴は鳥居を越えて、石段を降りるように飛んでいく。
「あーあ」
 それを見ていた少女が言った。ついで、「おわっ」という声が石段の方から
聞こえてきた。
 一白と少女は顔を見合わせると、鳥居の方へと駆けていく。しかし、一白は
片足跳びなので少女よりもスピードが遅い。
「……なんや、爺さんか」
 先に鳥居に着いた少女が言った。
「なんや、とはなんや」
 靴を持った猛芳が少しふらふらとした足取りで、石段を登ってきた。足取り
や顔の色を見ると少し酔っぱらっているようだ。
「昼間っから酒?」
 やっと到着した一白が、顔をしかめて言った。猛芳は少し照れ笑いを浮かべ
ると靴を一白の方へと放り投げた。
「それより気をつけえよ。……せっかく、ええ気持ちで歌っておったのが台無
しじゃわい」
「何か変な音が聞こえると思てたら、あれ爺さんの歌やったんや」
 少女はクスクスと笑った。その言葉に猛芳はむっとした表情を浮かべる。
「失礼な。これでも昔はなあ……」
「ところで何で昼間から酒を飲んでんの?」
 昔話が始まるのを察知した一白が猛芳の言葉に重ねるように慌てて言う。彼
はむっとした顔を一転させて、苦笑いと照れ笑いを混ぜたような顔をした。
「いや、ちょっと散歩の途中で知り合いに会ってな……話が弾んで、じゃあ
ちょっと飲んでいこうかということに……」
「その、ちょっと飲んでいこうか、ていう流れになるのが分からんわ」
 少女が呆れた口調で言う。
「まあ、そう言うな」
 ごまかすようにして猛芳は大きく笑った。それを見て、一白は困ったような
表情を浮かべ、少女は溜め息をついた。


時系列と舞台
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2005年10月。帆川神社の境内にて。

解説
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で、結局次の日は雨になったのか否か。

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