[KATARIBE 29437] [HA06P]エピソード『西洋風の、マッチョが、相手を、噛み砕いた。』

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Date: Sat, 22 Oct 2005 16:04:05 +0900
From: 月影れあな <tk-leana@gaia.eonet.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29437] [HA06P]エピソード『西洋風の、マッチョが、相手を、噛み砕いた。』
To: kataribe-ml@trpg.net
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 おいっす、月影れあなです。
 三十分一本勝負とか挑戦してみました。無理です。一時間半かかりました。

 お題は
[Role] rg[TK-Leana]HA_SVOC: 西洋風の、マッチョが、相手を、噛み砕いた。
ですわ☆

 ということで。

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エピソード『西洋風の、マッチョが、相手を、噛み砕いた。』
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登場人物
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 六兎結夜   :SRAの日本支部の平吸血鬼。
 巨漢     :SRAの幹部

本文
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 一口に吸血鬼といったところで、ピンからキリまで色々ありまして。

 その日、眼前に聳え立つ異様を目の当たりにしたその瞬間、結夜は回れ右を
してそのまま帰りたくなった。

 巨漢     :「ほほう、貴公が此度のSRAの遣いか」
 結夜     :「ははぁ、金眼と申します。侯爵閣下に於かれましてはご
        :機嫌……」
 巨漢     :「格式ばった挨拶は良い。儂はそういうのは苦手だ」

 喉から唸り出た雷を転がしたような声に、結夜の体はその主の意図と関係な
く、反射的にその場に平伏していた。
 そう、その様相はまさに「聳え立つ」であった。椅子に座っていながら、そ
の身長は結夜を遙に越えており、もし立ち上がったならば身の丈は優に二メー
トル半はあろう。
 威風堂々と鈍色に曇る鉄甲冑を身に纏い、背には朱一色の派手なマント、太
い首の上には褐色の髭に覆われた彫りの深いゲルマン系の顔立ちがズドンと乗っ
かっている。神代の巨人がそのまま現代に蘇ったかのような迫力がそこにはあっ
た。

 彼こそは闇の世界で“蛮人”と呼び畏れられるSRAの有力幹部、破格の吸血鬼
ゼルギウス・カーン侯爵その人である。

 巨漢     :「して、要件は何だ」
 結夜     :「は、此の度黒狐めの企てましたデルメル計画に於きまし
        :て深刻な地脈汚染が確認され、我々の手には負えません。
        :つきましては閣下の所有されます秘宝『白の聖血』をお借
        :り受け願いたく、ここまで足を運ばせていただきました」
 巨漢     :「黒狐か。あやつめまだ生きておったか」
 結夜     :「しぶときのみが取り柄と聞き及んでおります」
 巨漢     :「まあ良い。陛下からの口添えもあれば無碍に断る事も出
        :来ん。特別に貸与を許すが故、何なりと持っていくが良い」
 結夜     :「ははぁ、ありがたき幸せ……」

 さらに深く平伏してから、結夜は顔を挙げて気になっていた疑問を口にした。

 結夜     :「ところで閣下」
 巨漢     :「なんじゃ?」
 結夜     :「それはナンデショウ?」

 結夜が恐る恐る指差した先、侯爵の手元に置かれた大きな波斯風の皿の上に
は、数匹うさぎが生きたまま盛り付けられている。

 巨漢     :「これか?」

 と言いながら、疑問に答えるように侯爵は一匹のうさぎを掴み取ってみせる。

 結夜     :「それです」
 巨漢     :「うさぎじゃ」
 結夜     :「そりゃ分かります」
 巨漢     :「では何が分からん?」
 結夜     :「その使い道です」
 巨漢     :「使い道も何も……」

 と、言いながら侯爵はそのうさぎを躊躇無く自らの口の中に放り込んだ。

 SE      :バリッゴリッベキブチッゴリゴリ

 やたら生々しい咀嚼音を立てて、そのまま嚥下する。呆然とする結夜を尻目
に、侯爵はさも当然と言った風情で言い放った。

 巨漢     :「ただのおやつじゃ」
 結夜     :「……えッ?」

 結夜は愕然として、目の前の蛮人を見直した。
 SRAは吸血鬼の寄り合いである。多少の例外はあれど、その構成員は基本的に
吸血鬼とその眷属以外存在しない。ましてや古参の幹部連中など海千山千の大
吸血鬼ばかりである。まかり間違ってもオーガがいたなんて話は聞いたことが
ない。
 だが、念のために確認しておく。

 結夜     :「ええと、閣下は吸血鬼であらせられますよね」
 巨漢     :「そうじゃ」
 結夜     :「なんで生きたままうさぎなんぞを咀嚼してますか」
 巨漢     :「ああ、わざわざ血を抜くのも面倒なんでな。なに、肉な
        :んざ血袋とそう変わらんよ」

 そんな豪快な。

 結夜     :「……いや、でも骨とかあるでしょ」
 巨漢     :「なに、小骨くらいしかありはせんよ。むしろ食いでがあっ
        :て良いくらいじゃ。貴公も一つどうじゃ?」
 結夜     :「謹んで遠慮させて下さい。頼みますから」

 必死になって断りながら結夜は、この恐るべき吸血鬼がなにゆえ蛮人などと
呼び称されているのかしみじみと実感するのだった。


場所・時系列
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 2005年夏ごろ、ドイツのある古城にて

解説
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 SRAのお仕事で色々やってる結夜の一シーン。


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