[KATARIBE 29422] [HA06N] 小説『講義の時間』

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Date: Wed, 19 Oct 2005 23:22:29 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29422] [HA06N] 小説『講義の時間』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年10月19日:23時22分29秒
Sub:[HA06N]小説『講義の時間』:
From:久志


 久志です。
(Role) rg[Hisasi]HA06accident: 食べ忘れた ですわ☆

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小説『講義の時間』
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登場キャラクター 
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 本宮和久(もとみや・かずひさ) 
     :吹利県警生活安全部巡査の生真面目さん。犬にたとえると豆柴。
 相羽尚吾(あいば・しょうご) 
     :吹利県警刑事部巡査。ヘンな先輩。犬というか狼。
 波佐間光孝(はざま・みつたか)
     :吹利県警生活安全部巡査。犬にたとえると土佐犬。

鬼講師
------

「さて、今日の講義は、だ」
 こつん、と。相羽さんの拳がホワイトボードを軽く叩く。
「異常事態発生時において、援助行動を取る際の段階について、だ」
 さほど広くはない県警の会議室は、自分らを含めた十数人の受講者達で埋め
尽くされていた。教壇ギリギリまで詰められた机にはぎっしりパイプ椅子が並
べられて、ノートを取る時に隣の人と肘がぶつかりそうになるほどだった。

「まあ、最近の人は情が薄いだの人間関係が希薄だの言うけれど、それはただ
単に心が冷淡になったというだけじゃあない。たとえば異常事態が発生した可
能性を察知した時、その状況を誰に伝えるべきか、援助の必要性があるかどう
か、どういう対応をすればいいのかということがわからない、もしくは誰から
も教えられていないというのもあげられる」
 一息で説明し終えると、相羽さんはくるりと背を向けて黒マーカーでホワイ
トボードに向かって文字を書き出す。箇条書きに書かれた文字を見逃さないよ
うにノートに書き留める。
「異常事態に対する人の反応の段階」
 びしりと箇条書きに書かれた文章を差す。
「1、発生した異常事態に気づく。
 2、異常事態が援助を必要とするか否かの判断する。
 3、異常事態に対し、その場における責任者を明らかにする。
 4、援助の手段を選択する。
 5、援助行動を行う」
 動きを止めて受講者達の顔を一瞥する。
「まずは1の異常事態に気づく段階、これはまあ何かおかしいと気づく最初の
ハードルだね。例えば悲鳴が聞こえた、聞きなれない物音がした、最近妙に人
の出入りが増えた、逆に人がいなくなった等等。これらの信号に気づくことは
続く対応全てに対する基本であり、この段階での遅れは致命的な捜査の遅れに
つながる。また、周到な犯人であればあるほどこれらの異常性をしめすサイン
を漏らさず行動を実行しようと試みる。この段階でのサインを見落とした場合、
当然、援助・介入はできない。そして、俺が思うにだが、最近は特にこの段階
でのサインの伝達がうまくいかず、本来回避できたはずの異常事態が起こって
しまうということが増えてるように思う。まあ、お隣さん付きあいや家族同居
が減少してるってのがありだろうけどね」
 よどみなく続ける言葉の必要箇所を走り書きでメモする。相羽さんの講義は
ちょっとでも気を抜くと必要なことを聞き漏らしてしまったり、メモを取り損
なってしまう。説明されたきちんと内容を把握して置かないと、この後にくる
地獄の質疑応答で泣く羽目に陥る、その上レポートもきっちりまとめて提出し
なければならない。
 気を入れて段階2の説明を聞きながら、レポートをいかにしてまとめたもの
かと今から頭が痛い。


講義終了
--------

「おし、今日のところは終わりにしよっかね」
 ぎっちり埋め尽くされたホワイトボードを指先で軽く叩いて、にやりと笑う。
 講義の間中張り詰めっぱなしだった空気が緩み、そこかしこで息をつく音が
聞こえる。
「はぁ……」
 ノートにびっしりと書かれた説明をざっくり読み返してため息が出る。そこ
かしこでミミズがのたくったような文字が数箇所ある。これは後でつき合わせ
て見ないとダメかもしれない。
「んじゃま、レポートは三日以内提出。見るのは俺だけじゃなくって卜部女史
もご覧になるからしっかり書かないとだめだよ?いっとくけど俺より厳しいか
らね」
 思わずどよんと沈む自分らを眺めながら、相羽さんは片手でホワイトボード
を消しつつにやにやと楽しそうに笑っている。
「まあ、がんばって」
 軽く片手を挙げて、会議室を出て行く。

「本宮さん、ノートどうです?」
「あ、波佐間さん。ちょっとつき合わせてもいいですか?」
「俺も頼む、ちょっと途中抜けたかも」
「レポートどうしよう……」
 頭をつきあせながら、埋め合わせをする。

「はぁ……」
 情報補完を終えて、やっと会議室からでて伸びをする。
「お腹空きましたねえ」
「……そういえば、すっかり忘れてた」
「あれ、本宮さんお弁当じゃないんですか?」
「ああ、最近はちょっとサボってて……」
 このところ、弁当を作るのをサボってる。前までローザと一緒にいた頃は、
あれこれ家事を頑張っていたけど、一人だとどうしても手を抜きがちで。

「食堂、もうお昼終わってますよ?」
「あ」
 くぅ、と腹の虫が鳴る音が重なった。


時系列 
------ 
 十月某日。
解説 
---- 
 先輩の講義を聞いて昼を食べ損ねる和久。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。

 資料集めで時間食いましたよ、たはー



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