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Date: Wed, 19 Oct 2005 01:03:10 +0900 (JST)
From: いー・あーる <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29413] Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005 Never Forget Memories 』
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2005年10月19日:01時03分10秒
Sub:Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005 Never Forget Memories』:
From:いー・あーる
ども、いー・あーるです。
のんびりのこのこ、進めます。
てか、聡の動揺っぷりを書きたかったんだけど、なんかえぴそどだと上手くいかない……
ここだけ別に書くかのう。
とりあえず、まあ、次のよーなもので如何でしょう。
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エピソード『吹利学校高等部学園祭2005 Never Forget Memories』
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登場人物
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関口聡(せきぐち・さとし)
:周囲安定化能力者。現在片目は常に意思と感情を色として見ている。
蒼雅巧(そうが・たくみ)
:霊獣使いの家の一員。高校二年生。非常に真面目。
中里嘉穂(なかざと・かほ)
:姐御肌の同人誌作成者。上二人と同じクラス
中村蓉子(なかむら・ようこ)
:SS部所属。秋風秦弥の彼女。関口とは同じクラス。
秋風秦弥(あきかぜ・しんや)
:SS部部長、中村蓉子さんとお付き合い中。
桃実匠(ももざね・たくみ)
:桃実一刀流小太刀術の伝承者。ギャップは激しい(?)。
無音壊音
--------
手足が動かないほどに怖いと思った。
後から考えれば、そんな莫迦なことをどうして思ったろう……と。
けれども夢の中で何かに追われる時の恐怖が紛い物ではないのと同じように、
その恐怖もまた紛い物ではなかったと思う。
どうして。どういうわけで。
**
校医 :「あららー(汗)」
巧 :「すみません」
顔色の悪さから、どう考えても冗談ごとではないとわかったらしく、校医の
先生はぱたぱたとベッドを用意する。そこに巧はゆっくりと聡を降ろした。
抱え上げた時と同様、聡は片腕を抱え込むように身体を丸めている。泣き出
しそうな顔は、それでも多少血の気を取り戻しているように見えた。
校医 :「気分悪い?熱は?」
聡 :「多分……無いです。ごめんなさい」
校医 :「別に謝らなくても(苦笑)。今ならお客さんも居ないし」
とにかく少し休んでなさい、との声に、聡はほっと息をついて頷いた。
校医 :「あと、その……ヘッドドレスだけは外したほうがいいか
:もね」
聡 :「あ、はい」
頷いて手をやる前に、巧が手を伸ばす。首の後ろの結び目をするりと解いて
素早く外し、枕元に置いてやる。
巧 :「大丈夫ですか聡殿」
聡 :「大分……楽になりました」
ようやく抱え込んでいた腕を離して、聡が少し笑った。
巧の肩の上の秋芳が、小さく羽ばたいた。
校医 :「まあ、それでも少しゆっくりしてたほうが――」
女子生徒 :「せんせーすいませんっ」
校医 :「なに?」
女子生徒 :「ちょっと、一人包丁で手を切っちゃって」
校医 :「あらら、どこどこ」
女子生徒 :「いえ、その子はバンドエードで何とかしたんですけど、
:見てたうちの一人が引っくり返っちゃって」
校医 :「…………男の子でしょ。それもかなりでかい」
女子生徒 :「何でわかるんですかっ(汗)」
校医 :「……そういうものらしいわね、ヘリオット先生の時代か
:らずっと(何となく遠い目)」
女子生徒 :「はあ……(わけわからんな顔)」
とにかく重くて運べないんです、来てください、と、女子生徒は言い、やれ
やれと校医は後をついてゆく。
巧と聡は何となく溜息をつき……そして同時に少し笑った。
巧 :「確かに、顔色が戻っているようです」
聡 :「……さっきは、有難うございました」
横になったまま、ぺこりと頭を動かす。
巧 :「それは、構わないのですが」
心配そうに……そして少し躊躇いがちに、言葉を続ける。
巧 :「何が、あったのですか?」
聡 :「…………」
途端に聡の顔が蒼褪めた。
迷路から聡を抱えて出る際に、巧は秋芳を飛ばしている。最短の脱出路を探
らせるのが第一目的だったが、同時に聡が泣き叫ぶように恐れたものが何なの
かも探るよう、伝えたのだが。
秋芳の答えは、『否、そのようなものは無し』であったのだ。
巧 :「話したくないならば、それで良いのですが」
聡 :「いえ……そうじゃないんですが」
そうではない、と言いながら、聡は暫く口をつぐんだ。
聡 :「あの迷路を、風が通路に沿って、流れていたんだと思い
:ます」
巧 :「…………」
聡 :「それがまるで、篠笛の音みたいに聞こえて……そしたら」
少し息を呑んで、聡は不意に右耳に手をやった。
何かから庇うような仕草だった。
聡 :「上手くいえないですけど……まるで僕が、そのまま身体
:中をばらばらに刻まれて、その部分ごとにこの世界から消
:えてしまう…………そんな風に」
そこまで言って、聡はうろたえたように巧を見やった。
聡 :「……あの、今考えたら莫迦らしいって僕も思うんですが」
巧 :「莫迦らしいとは思いません」
いつも生真面目なこの先輩は、この時も生真面目なままだった。
巧 :「聡殿がそう思われたのは、事実でしょうから」
聡 :「……そう、なんですが」
口に出せば、本当に他愛のないことなのだ。
聡 :「以前、夢で手や耳が落ちた時に似てたんです」
手が落ちて。
耳が落ちて。
そして目が落ちてゆく。
その夢どころではなく、身体中が崩壊し、そのまま落ちてゆく。
そのことを揺るぎなく確信する……恐怖。
聡 :「落ちて、この世界から消えてゆく。それがとても怖かっ
:たけど」
でも、それ以上に怖かったのは。
聡 :「……巧先輩」
巧 :「はい?」
聡 :「僕が」
不意に聡は肘をついて、上半身を起こした。
聡 :「僕が居なくなるのは、先輩はさびしいですかっ?」
抑えてはいるものの、悲鳴に近い声に、巧はきっぱりと返した。
巧 :「ええ、さびしいです」
聡 :「…………っ」
聡は片手で顔を抑えた。手の間からこぼれるように、悲鳴とも泣き声ともつ
かない声が漏れる。
聡 :「……あの時僕は、落ちてゆきたいと思ってたんです」
巧 :「怖い、のではなく?」
聡 :「怖かったです!怖かったけど!」
けれども同時に。
聡 :「落ちてゆきたいって……自分から落ちてしまいたいって」
落ちて。
ここにはもう戻ることがなくても。
それこそ何かに魅了されるようにも切望して。
聡 :「だけどもし僕がここに残りたいって思わなかったら、本
:当に落ちていって戻れなくて……それが……っ」
自分すら自分を裏切る。
他人と異なるものを自然に見、故に自分の足で世界に立つしかないと覚悟し
ている聡にとっては、それはとても恐ろしいことであったのだろう。
聡 :「…………すみませんっ……」
顔をわし掴むようにして泣き出した聡の頭を、巧は幾度も撫でた。
巧 :「……大丈夫です」
静かに、染み入るように。
**
さてところで、少しだけ時間を遡る。
匠 :「もちろん生真面目な顔で寂しいって答えるに決まっとる
:やんかっ。そしてぎゅっと抱きしめるんや」
軍服姿の巧がメイド服姿の聡を抱えて、非常に厳しい顔で保健室に行く……
……となると。
これは無論のこと、相当に目立つわけである。
嘉穂 :「……(ばこっ)」
故に……こういうおまけが廊下でたむろしていたりする。
匠 :「ぎゃふん」
蓉子 :|・)
秦弥 :「何でも良いけど、誤解を招くようなまねはやめときなよ〜」
せっかくの自由時間に、何故か釣れてしまったカップルまで一緒だったりす
るのはご愛嬌かもしれない。
ちなみに腐女子達が居ないように見えるが、大丈夫、廊下の角を曲がった辺
りにきっちりとたむろしている。相当美味しい場面ではあったにしろ、聡の顔
色の悪さは尋常ではなく、確かにこれは悪ふざけをして良い状態ではない、と、
これは流石に判断したらしい。
……しかしながら。
匠 :「誤解とちゃうやん」
胸を張って堂々と。
匠 :「涙はキスで拭うもんやと決まっとる」(きぱっ)
蓉子 :「…………(@_@)」
免疫の無い子の目を廻すよーなことを言う一名もいたりする。
秦弥 :「(ため息)」
やれやれ、と、肩を落とした二年生に構わず。
嘉穂 :(鉄拳制裁!)
容赦無く拳で殴ってから、こちらも堂々と。
嘉穂 :「曲解ならば良し、誤解にしてどうするっ!(どーん)」
……曲解はええんかい。
匠 :「がふっ──あ、あんた、えぇパンチの持ち主」
秦弥 :「曲解もあんまよく無いんだが。」
溜息交じりの声を他所に。
匠 :「っちゅーか、こんくらいウチの女子部員かて言うてるぞ?」
嘉穂 :「それを楽しく煽ってるのは誰かなーとこう疑問なんです
:がねっ」
匠 :「そりゃぁ、か──」
途中まで言いかけてどうやら何かにはっと気づいたようで。
匠 :「それはヒミツやっ」
『たくみ は にげだした!』……と、ついついゲーム口調で言いたくなる
ほど、ある意味御約束な逃げだしっぷりである。
嘉穂 :「……ったくなー」
むーと口をへの字に曲げた嘉穂の横で、
秦弥 :「……何で巧にあんなうわさ流れるんだろう……たま……
:弧杖が居るのに。」
首を傾げている一名と。
蓉子 :「……ついていけない私はおかしいのでしょうか」
くらくら、と、めを廻している(継続中)な一名と。
嘉穂 :「あーそれ普通普通(手をぱたぱた)」
秦弥 :「おかしくないおかしくない」
好んで来るならともかく、自分から足を突っ込むことはない>腐女子世界。
……などとやってる間に。
校医 :「ただいまー……ってあら、何やってんの?」
蓉子 :「あ、え、いえ、あの(わたわた)」
嘉穂 :「同じクラスなもんで、メイドが倒れたって聞いて、どん
:な調子か見にきたんです」
わたわたっとしている横で、堂々と。
校医 :「熱とかは無さそうだったけど、今日は無理させないほう
:がいいと思うわよ」
嘉穂 :「はあ、それはそう思うんですが……そう言わないと無理
:しそうだから」
校医 :「おやおや(苦笑)」
じゃあ、そう言わなきゃね、と、笑って。
校医の先生は、医務室の扉を開けた。
時系列
------
2005年9月文化祭1日目午後。
解説
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迷路を潜った末にぶっ倒れた聡と、巧との会話。
そして廊下での風景。
……まあ、ねえ……そういうもんでしょかねえ(謎)
*******************************************:
てなもんで。
ではでは。
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