[KATARIBE 29412] [HA06N]小説『緊張する夕食』

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Date: Wed, 19 Oct 2005 00:51:40 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29412] [HA06N]小説『緊張する夕食』
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ふきらです。

金木犀の話の続きです。やっと一日が終わった……
きしとくん、フィルの台詞チェックよろしくー

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小説『緊張する夕食』
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登場人物
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 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

 フィルオナ:http://kataribe.com/HA/06/C/0504/
  神羅をマスターとする意思を持つ人形。

 金木犀の少女:帆川神社にある金木犀の精。秋の花を咲かせる時期に現れる。

 一白(いっぱく):
  津久見神羅の式神。

 火川猛芳(ひかわ・たけよし):http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
  帆川神社の宮司。

本編
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 台所では神羅が遅くなった夕食を作っていた。ガスコンロには一人用の土鍋
が二つ並んでいて、中ではうどんがぐつぐつと煮えている。現在、この家には
五人住んでいるが、食事を必要とするのは人間である猛芳と神羅だけである。
 不意に後方に気配を感じて、振り返ると猛芳が困った顔で立っていた。
「祖父さんが台所に来るなんて珍しい」
 そう言われた猛芳が苦笑いを浮かべる。
「お前なあ……あんな雰囲気の中でのほほんとしてられるか?」
「まあ、確かに……」
 先ほどまで猛芳がいた居間には金木犀の少女とフィルが少し離れて座ってい
る。二人とも黙っているが、互いに出方を伺っているようにも見える。
 やがて、ぱたぱたと別の足音がして、今度は一白が台所に現れた。
「お前も逃げてきたか」
 猛芳が笑いながら言う。
「だって、どっちのお姉ちゃんも怖いよ……」
 一白の頭をポンポンと叩くと、猛芳は神羅の方を見た。
「お前がどうにかしろよ」
「……分かってる」
 神羅は溜め息をついて、コンロの火を消した。
 台所で夕食を食べるという選択肢もあったが、結局いつものように居間で食
べることにした。食事の雰囲気が場を和らげる効果があることを期待しての選
択だった。
「いただきます」
「……いただきます」
 しばらく、うどんをすする音が居間に響く。
「マスター?」
 不意にフィルが口を開いた。
「はい」
 神妙な口調に思わず姿勢を正す神羅。
「一体この人は誰なのです?」
「そういや、ちゃんと言ってなかったっけか。この子は……」
「あんたこそ一体誰よ? この人とはどういう関係よ?」
 神羅の台詞に割って入る金木犀の少女。
「ど、どういう関係って…… マスターはマスターですっ」
「ま、マスターって…… 何よそれっ」
 どこから取り出したのか白いハンカチを加えてきーと引っ張る少女。
「いやいやいや、ちょっと待てって」
 神羅が慌てて間に入る。
 その光景を一白はあっけにとられた表情で眺め、猛芳は食事を終えニヤニヤ
しながら見ていた。
「とりあえず、二人とも黙っとれ」
 疲れた表情でフィルと少女に言う。
「あの人何なんですっ?」
 怒った表情を浮かべるフィル。
「だから、それを説明するから……」
 やれやれ、と溜め息をついて、神羅はお茶を一口飲んだ。
「この子の正体は境内の裏にある金木犀の精。二年前にふとしたことで人間の
形を取るようになった」
「ふとしたこと、って、神羅のせいやん」
 少女が口をとがらせて文句を言う。
「まあ、そうとも言う。で、こっちがフィルオナ。正体は人形で、少し前から
この家に住むことになった」
「で、マスターってのは?」
「単に持ち主ってこと」
「なんや、そうやの」
 拍子抜けした口調で少女が言った。
「……何を想像してたんだか」
 神羅の言葉に照れ笑いを浮かべる。
 そして、神羅がフィルの方を向いた。
「ということ。分かった?」
「……分かったのです」
 とは言いつつ、まだ納得していない表情のフィル。
「でも、あまりマスターにくっつくとマスターは困ると思うのです」
 神羅が苦笑いを浮かべる。
「まあ、堪忍してや。どうせ数週間だけしかおらへんのやし」
 少女がフィルに笑いながら拝む仕草をして答えた。
「数週間って……?」
「ああ、彼女は金木犀の花の精やからな。花が散ったらまた来年、ってこと」
「そうなんですか……」
 しんみりとした表情を浮かべるフィルに少女は慌てて手を振る。
「おっと、変な気遣いは無用やで。どうせまた来年会えるんやから」
 そう言ってから少女はにやりと笑みを浮かべた。
「ま、不憫やと思うんやったら、おる間はせいぜい仲良くしてやってや」
「分かったのです」
 今度は普通に少女が微笑み、それを見たフィルも微笑みを返した。
「やれやれ……」
 神羅が溜め息混じりで呟く。ふと猛芳と一白を見ると、二人とも同じように
笑みを浮かべていた。
 
時系列と舞台
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小説『金木犀と少女の綱引き』の続き。

解説
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これでやっと一日が終わりです。

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