[KATARIBE 29411] [HA06N]小説『逃げる男、追う女』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Tue, 18 Oct 2005 23:27:20 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29411] [HA06N]小説『逃げる男、追う女』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200510181427.AA00089@hikaru-h8akl379.blue.ocn.ne.jp>
X-Mail-Count: 29411

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29400/29411.html

ふきらです。
三十分一本勝負(http://hiki.kataribe.jp/HA06/?OneGameMatchfor30Min)。

お題は

22:48 <Role> rg[hukira]HA06event: 道行く貧相なチンピラが走っている ですわ☆

でした。
**********************************************************************
小説『逃げる男、追う女』
========================

登場人物
--------
 火川猛芳(ひかわ・たけよし):http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
  帆川神社の宮司。

本編
----
 平日の昼下がりは商店街の人通りも少なく、どことなしにのんびりとした空
気が漂っている。
「暇じゃが、それもまたよし」
 作務衣姿の猛芳は特に用事もなくぶらぶらと歩いていた。
 通りの向こうが何やら騒がしくなり、その方向からふらふらと、やけに派手
な服の男が走ってきた。男は頻繁に後ろを振り返りながら、ぜいぜいと息を切
らせている。走り疲れているのか、その足取りは危なっかしい。
 やがて、彼は何もないところで足をもつれさせて転倒した。
「おいおい、大丈夫かいの?」
 猛芳が声をかける。
「う……うるひゃい」
 金髪で変な髪型をして、チャラチャラとしたアクセサリを着けているが、体
力はそんなにないらしく、強がった台詞も声が裏返っていた。
「何かに追われとるのか?」
 ぶつくさ文句を言いながら立ち上がった男に尋ねる。
「ひっ」
 男は慌てて後ろを振り返る。猛芳もつられてそっちの方向を見ると、白い服
を着た女性が近づいていた。その足取りはゆったりとしているが、スピードは
速い。
 再び逃げようとする男の襟を掴むと、猛芳は言った。
「まあ、逃げるな」
「何だよ。爺いには関係ないだろ」
「じじい呼ばわりか……」
 猛芳は襟を掴んでいた手に力を入れる。やばげな雰囲気に気付いて、男は
黙った。
「あれはお前とどういう関係があるんじゃ?」
 女性は二人から十メートルの距離まで来ていた。
「だから、爺さんには関係ないだろって」
「いや、そこまで言うんじゃったらええけど。多分、あれはいつまでも追いか
けてくるぞ」
「何で分かるんだよ」
「彼女があんたに恨みを持ってるからの」
 その言葉にぐ……と詰まる男。
「……どうしたら助かるんだ?」
「まあ、彼女を説得できたらな。お前らの間に何かあったんじゃろ?」
「説得っても……」
 彼女との距離は五メートル。手には包丁を持っている。
 男の姿を見て、彼女は包丁を振りかざした。
「まあ、待ってやれ」
「煩い!」
 猛芳の言葉には耳を傾ける様子がない。男を睨む彼女の顔は鬼かと見まごう
ほどに歪んでいる。猛芳はそれを見て眉をひそめた。
「……遅かったか」
「どうすんだよ!?」
 男は襟を掴まれたまま後ろに下がろうとしている。猛芳は掴んでいた手を離
した。体勢が崩れて転ぶが、急いで立ち上がると今度は振り返りもせずに走っ
ていった。
「あんな男のことはもう忘れた方がええんじゃないか?」
「ううう……」
 女性は逃げていく男性をじっと睨んでいる。相変わらず、耳を貸そうとはし
ない。
「……仕方ない。悪く思わんでくれよっ」
 そう言って、猛芳は左ストレートを彼女に向かって放った。
 拳が当たった瞬間、彼女は悲しげな顔をして遠くを見つめて、ゆっくりと消
えていく。
 完全に消えた後、彼女がいたところに指輪が一つ落ちていた。
「……」
 猛芳は指輪を拾うと懐にしまった。
「せめて、丁寧に供養させてもらうわ」
 そう呟いて猛芳は神社へと戻っていった。

時系列と舞台
------------
2005年某月。商店街にて。

解説
----
爺さんは幽霊との交渉が下手なのです(汗

$$
**********************************************************************
 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29400/29411.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage