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Date: Tue, 18 Oct 2005 22:16:51 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29409] [HA06N] 小説『軒先の風景』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200510181316.WAA63147@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29409
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29400/29409.html
2005年10月18日:22時16分51秒
Sub:[HA06N]小説『軒先の風景』:
From:久志
久志です。
過去お題で三十分勝負に挑戦。
って、夕べ書ききれず落ちたのであんまし意味がなかったりする。
題「思い出を刺激したしてきたのは友好的な雰囲気ののたっとした大猫だった」
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小説『軒先の風景』
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登場キャラクター
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富良名裕也(ふらな・ゆうや)
:方向音痴な一見中学生(中身も?)のお気楽極楽青年。
:http://kataribe.com/HA/06/C/0067/
本文
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「ど〜っれにっしようっかなあ〜〜」
保温気の硝子ケースの中に並んだ白い中華まんをあれこれと見比べながら、
フラナは弾むように口ずさんだ。
「肉まんかなあ〜うーん、ピザまんもいいなあ……えーとえーと」
硝子ケースを指差してどれにしようかと楽しげに選ぶ姿は、子供が学校帰り
にコンビニに立ち寄って、という風情である。実際に学校帰りなのは間違いな
いが、フラナはもう学生ではない。
年寄りかなり子供っぽい、下手すると一見中学生にも見えてしまう外見だが、
これでもれっきとした紅雀院大学史学科の職員である。
「えっと、肉まんひとつくださいなっ」
「はい、かしこまりました」
もっとも、店員も気づいていなさそうだが。
会計をすませてコンビニを後にする。両手で暖かい肉まんを包み込むように
持ってぴこぴこと跳ねるような足取りで商店街を歩く。
「にっくまん、にっくまん〜♪」
顔一杯に極太マジックで『幸せ』と殴り書きしてあるような極上笑顔で熱々
の肉まんにかぶりつく。
「ん〜〜ん〜〜♪」
もごもごと肉まんを噛み締めながら歩いていると、ふとシャッターの閉まっ
た一軒の店の前でごろりと一匹の猫が丸くなっているが目に留まった。
「あ……」
ふと足を止めて、シャッターの閉まったままの店を見上げる。
かつて学生の頃何度となく通った店。ふわふわと穏やかな春を思わせる雰囲
気の人が笑顔で出迎えてくれた店。
「なぅ」
足を止めたフラナに気づいて、店の前で丸まっていた猫が顔をあげる。野良
の割には随分ところころと血色のいいのたっとした猫が目を細めて一声鳴いた。
「…………違う、ね」
主がいなくなってシャッターがいつも下ろされたままになってからしばらく
の間、いつもこの店の軒先で日向ぼっこをしていた一匹のふてぶてしい猫。
何かにつけて立ち寄って、餌をあげていた猫も、既にここには居ない。
「な〜」
「よしよし」
いかにも人に慣れた、というか餌ねだりに慣れた様子で足元に擦り寄る猫を
そっと撫でる。
「なう〜」
「あは、よしよし。ちょっとだけあげるね」
手元の肉まんを少しちぎって軽く吹いて冷ましてから地面に置く。
かふかふと肉まんを齧る猫を見て、微かにこみ上げてくる懐かしさ。
「どうしてる、かなあ?」
あの猫も。
あの人も。
なう、と。まるで相槌を打つように、足元の猫が小さく鳴いた。
「あはは、も少し食べる?」
にゃあ、という元気な返事にもうひと口分、肉まんを千切る。
「……きっと、元気だね」
時系列
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2005年10月中旬。
解説
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閉まったままのシャッターの前で、懐かしい光景を思い出すフラナ。
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以上。
思い出しているのは花澄さんと瑞鶴の猫です、ええ。
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