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Date: Mon, 17 Oct 2005 22:52:57 +0900 (JST)
From: いー・あーる <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29400] [HA06N] 小説『日だまりの猫石』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200510171352.WAA18981@www.mahoroba.ne.jp>
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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2005年10月17日:22時52分57秒
Sub:[HA06N]小説『日だまりの猫石』:
From:いー・あーる
ども、いー・あーるです。
30分勝負、後だしです。
一応、30分には収まってますが……
真帆の一人称です。
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小説『日だまりの猫石』
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登場人物
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軽部真帆（かるべ・まほ）
：自称小市民。多少毒舌。ネズミ騒動以来相羽宅に移住。
本文
----
思い出を刺激したしてきたのは友好的な雰囲気ののたっとした大猫だった。
……考えてみればあの猫は、友好的でも、そんなに大きくも無かったけど。
でも、何となく三毛の色合いやら胸の毛の真っ白いところなんかが、思い出さ
せる。
あの猫を。
そしてあの時隣に居た友を。
**
その石は通りから路地に入るあたり、一番躓き易い位置にひょいと置かれて
いる。大きさはさほどでもないから、その上に現在寝っ転がっている猫は、何
となく石の両側から溶けて落ちそうな雰囲気がある。
「……その石、好きかお前は」
弓のように細い目のまま、猫はふわあと欠伸をする。
「猫石を、相棒にしてるのか？」
聞いているのかいないのか……多分聞いちゃいないだろうけど。
「……何か気持ち良さそうだね」
猫は一つ頭を振った。
猫石、と、花澄は言った。
ゆっくりと年を経た猫は、人になると言うけれど。
そんな面倒なものになるくらいなら、石の猫になって雨も風も構わず、ただ
いつも眠り続けているほうを選ぶのではないか、と。
……無論、人になるのも石になるのも幻想。どちらもおとぎばなし。
ただ。
「なあんとなくね、そんな感じしない？」
穏やかな声で、花澄が笑いを含んでそう言うと。
それは確かにそうかな、と、思えてしまって。
（あの時この路地に差し込んでいた、淡く茜色を帯びた陽光）
今も背中を暖めるようにこの路地に差し込む日の光を、そういえばこの石は
一番良く浴びる位置にある。
（だからこの猫がここに居るのだろうか）
少し前に、一日だけ猫になった。
不安であったり怖かったりした。
ただ……もし、あれがずっと続くなら。
自分はむしろ、石になることを選んだろうか。
（ことりと眠るように、いつまでも眠り続けるように）
ふと気が付くと、大きな猫はするりと石の上から降りて、その隣にやはりの
んびりと腰をおろしていた。そのまま欠伸をし、二度、三度と頭を石にこすり
つけ……
（……あ）
一瞬。
灰色を基調とした淡い縞模様の猫が、大きな猫の隣に目を細めて寝転がって
いるのが見えた。
一瞬。
そして瞬きをすると……そこにあるのは。
猫石。
**
眠り出した大きな猫の邪魔をしないように、靴音を忍ばせて路地を出る。
彼女と一緒に見ていた不思議は、やっぱりこの日だまりに残っている。
いつかそのうち、あのひとに話してみようと思う。
猫に変わる石と……それを教えてくれた彼女のことを。
時系列
------
2005年10月初旬
解説
----
路地裏に転がる静かな不思議の話。
真帆の一人称です。
お題は『思い出を刺激したしてきたのは友好的な雰囲気ののたっとした大猫だった』です。
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てなもんで。
ではでは。
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