[KATARIBE 29397] [HA06N] 小説『幽霊の身元調査』

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Date: Mon, 17 Oct 2005 12:01:03 +0900 (JST)
From: ふきら  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29397] [HA06N] 小説『幽霊の身元調査』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年10月17日:12時01分02秒
Sub:[HA06N]小説『幽霊の身元調査』:
From:ふきら


ふきらです。
三十分一本勝負便乗編。お題は

<Role> rg[H_Aoi]HA06event: 風に乗った鬼火が鼻の頭を舐めようとした ですわ☆

でした。[HA06N]小説『幽霊の存在意義』の続きです。

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小説『幽霊の身元調査』
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登場人物
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 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

一白(いっぱく):
 津久見神羅の式神。

本編
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 とっぷりと闇に沈んだ墓地は季節を問わず不気味な雰囲気を醸し出してい
た。周囲の草むらから聞こえてくる鈴虫の鳴き声が余計にもの悲しさを増幅さ
せている。
 神羅と一白はそんな墓地に明かりも持たずやって来た。
「……お前さあ、式神やろ? 怖がってどうすんねん?」
 さっきから神羅の服の裾を握って離さない一白にあきれた口調で言った。
「式神だって怖いものは怖いんだよぅ」
 神羅は少し笑う。そして、人間らしい式神もいいかもしれん、と思った。
 二人がこんな時間に墓地にやってきた訳は、この前の石焼き芋の爺さんにつ
いて調べるためである。
「でもさあ……名前も知らないのにどうやって見つけるの?」
 一白が尋ねた。
「だから、この時間に来たんやって」
 冷たい風が吹いてきた。かさかさと草の葉が擦れる音がする。
 真っ暗だった墓地に、急に明かりが付いた。
「あれ? 誰かいるのかな?」
 身を乗り出した一白に向かってその明かりが向かってくる。
「うわっ」
 慌てて頭を引っ込める。向かってきた明かりは一白の頭があった位置をかす
めて、そのままどこかへと行ってしまった。
「あっぶなー」
 安堵のため息をついて、一白は明かりが行った方向を見た。
「鬼火か」
 神羅が前を見たまま呟いた。一白が振り返ると、そこには先ほどと同じよう
な明かりが三つ四つ浮かんでいる。
「え、火の玉?」
「そう。お前は当たったら一発やから戻っとき」
 式神の一白の正体は人型の紙である。それ故に火にはめっぽう弱い。
 一白は紙に戻り、神羅がそれをポケットにしまった。
「さて……少し聞きたいことがあるんだが」
 神羅の言葉に鬼火たちは相談するように身を寄せ合うと、やがてその中の一
つが神羅の前に現れた。
「なんだ?」
「焼き芋の屋台の爺さんの墓ってここにあるかい?」
「焼き芋の屋台……?」
「最近、亡くなったと思うんやけど」
「たぶん、これじゃないかな?」
 後ろで固まっていた鬼火の一つがある墓の上で揺らめいた。
 神羅はその墓に書かれてある文字を見てみる。鬼火がいるおかげで明かりが
なくても十分に読めた。墓石は新しく、刻まれている日付も最近のものである。
「どうやら、そうみたいやね」
「用事はそれだけか?」
「後一つ。この墓の主を見かけたことは?」
「ないな。まだ成仏しきってないんだろ」
「そうか……じゃあ、ここに芋を置いておいてもだめか」
「なんだ、その爺さんは死んでも焼き芋屋をやってるのか?」
「そう」
「……人間というのは執念深いな」
 鬼火の言葉に神羅は曖昧な笑みを浮かべただけで何も言わない。
「とりあえず、ここでの用事は済んだわ。ありがとな」
「こっちも丁度よい退屈しのぎになった」
 そう言って鬼火はかき消えた。
 墓地が再び闇に包まれる。神羅はため息をついて、もう一度その墓を見ると
元来た道を引き返しはじめた。

時系列と舞台
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小説『幽霊の存在意義』の後日。どこかの墓地にて。

解説
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とりあえず、幽霊の身元は確認できたようです。

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