Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage
Date: Sun, 16 Oct 2005 15:47:54 +0900
From: chita <chita@ma.akari.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29383] [HA06N]小説『弱らせるべし、食らうべし』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20051016154754.5E362440.chita@ma.akari.ne.jp>
X-Mail-Count: 29383
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29300/29383.html
**********************************************************************
[HA06N]小説『弱らせるべし、食らうべし』
=======================================
物語
----
さわさわと、風が鳴る。
風に揺られて、地から延びた触手が揺れる。
蠢く触手が何本も何本も、子供に巻きついている。
枝分かれしている触手の先端はまるで掌のように、子供の体のそこかしこに
張り付いて、小さい体を地面から持ち上げている。
子供 :「……」
力尽きた子供はすでに逆らうこともできずにいる。
もう逃げることを諦めたようだ。
そして、諦念を嗅ぎ付けてやってくるものがある。
なぐさめ :「すーい」
子供 :(なぐさめを見る)
なぐさめ :「……」
地を泳ぐ肉食獣は、子供が動きを止めるのを待っている。
なぐさめ :「……。?」
触手もまた、子供が力を失うのを待っている。
いずれ地下の本体に取り込んで消化するつもりなのだ。
なぐさめがいくら待っても、子供を得ることは叶わない。
なぐさめ :「がじ」
なぐさめは触手を噛み始めた。
なぐさめ :「がじがじがじ」
なぐさめは触手を何本も頬張り、むしるように首を振りながら、ゆっくりと
子供の方に近づいていった。
肉食獣の行動に気付いた触手の何本かが、なぐさめの体に向かった。
なぐさめの巨体は、触手の静止を受け入れない。どんどん子供のほうに近付
いて行く。
触手たちは、なぐさめを押しとどめるために、どんどんなぐさめの体に自身
を巻きつける
なぐさめ :「……?」
ついになぐさめは触手たちに持ち上げられてしまった。
地面から浮かされてしまっては、どうしようもない。
子供 :「あ」
触手が手薄になり、子供は魔物から逃げ延びることができた。
子供は慌てて走り去っていく。
なぐさめ :「……」
なぐさめはとうとう、もがくことを止めた。
陸に上がった魚も同然だった。もはや逃れることはできない。子供の替わり
に触手たちの餌になるのが、どうやら彼の定めだったようだ。
勝ち誇るように揺れる触手たち。総出でかかった甲斐があったという訳だ。
なぐさめ2 :「すーい」
諦念を嗅ぎ取って、別のなぐさめがやってきた……
時系列と舞台
------------
2005年10月、吹利市内いずれかの野原
解説
----
「腹を空かせた手の怪が音を立てた」がお題の30分勝負。
$$
---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29300/29383.html