[KATARIBE 29383] [HA06N]小説『弱らせるべし、食らうべし』

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Date: Sun, 16 Oct 2005 15:47:54 +0900
From: chita <chita@ma.akari.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29383] [HA06N]小説『弱らせるべし、食らうべし』
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[HA06N]小説『弱らせるべし、食らうべし』
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物語
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 さわさわと、風が鳴る。
 風に揺られて、地から延びた触手が揺れる。
 蠢く触手が何本も何本も、子供に巻きついている。
 枝分かれしている触手の先端はまるで掌のように、子供の体のそこかしこに
 張り付いて、小さい体を地面から持ち上げている。

 子供     :「……」

 力尽きた子供はすでに逆らうこともできずにいる。
 もう逃げることを諦めたようだ。
 そして、諦念を嗅ぎ付けてやってくるものがある。

 なぐさめ   :「すーい」
 子供     :(なぐさめを見る)
 なぐさめ   :「……」

 地を泳ぐ肉食獣は、子供が動きを止めるのを待っている。

 なぐさめ   :「……。?」

 触手もまた、子供が力を失うのを待っている。
 いずれ地下の本体に取り込んで消化するつもりなのだ。
 なぐさめがいくら待っても、子供を得ることは叶わない。

 なぐさめ   :「がじ」

 なぐさめは触手を噛み始めた。

 なぐさめ   :「がじがじがじ」

 なぐさめは触手を何本も頬張り、むしるように首を振りながら、ゆっくりと
 子供の方に近づいていった。
 肉食獣の行動に気付いた触手の何本かが、なぐさめの体に向かった。
 なぐさめの巨体は、触手の静止を受け入れない。どんどん子供のほうに近付
 いて行く。
 触手たちは、なぐさめを押しとどめるために、どんどんなぐさめの体に自身
 を巻きつける

 なぐさめ   :「……?」

 ついになぐさめは触手たちに持ち上げられてしまった。
 地面から浮かされてしまっては、どうしようもない。

 子供     :「あ」

 触手が手薄になり、子供は魔物から逃げ延びることができた。
 子供は慌てて走り去っていく。

 なぐさめ   :「……」

 なぐさめはとうとう、もがくことを止めた。
 陸に上がった魚も同然だった。もはや逃れることはできない。子供の替わり
 に触手たちの餌になるのが、どうやら彼の定めだったようだ。
 勝ち誇るように揺れる触手たち。総出でかかった甲斐があったという訳だ。

 なぐさめ2  :「すーい」

 諦念を嗅ぎ取って、別のなぐさめがやってきた……

時系列と舞台
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 2005年10月、吹利市内いずれかの野原

解説
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 「腹を空かせた手の怪が音を立てた」がお題の30分勝負。

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