[KATARIBE 29382] [HA06N] 小説『庭に居るモノ』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Sun, 16 Oct 2005 15:03:09 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29382] [HA06N] 小説『庭に居るモノ』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200510160603.PAA49560@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29382

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29300/29382.html

2005年10月16日:15時03分09秒
Sub:[HA06N]小説『庭に居るモノ』:
From:久志


 久志です。
(Role) rg[Hisasi]HA06action: まつわりついてきた ですわ☆

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『庭に居るモノ』
========================

登場キャラクター 
---------------- 
 蒼雅梓(そうが・あずさ)
     :蒼雅家長女、少々ぼんやりした姉。霊狐・穂波を使役する。
     :http://kataribe.com/HA/06/C/0530/
 弧杖魎壱(こづえ・りょういち)
     :弧杖家長男、陰陽奏士の青年。梓の婚約者。
     :http://kataribe.com/HA/06/C/0518/

本文
----

 日も傾いて、庭のあちこちから虫の声が鳴り響く。
 着物姿で梓は縁側に腰をかけて、影の落ちた庭をぼんやりと眺めている。本
来人の目に見えない影に潜むもの、かさかさと駆け回る音だけでその存在を感
じるアヤカシ達。
「ふふ、あなた達の時間ですものね」
 ふわりと笑った梓の隣で、主の梓を守るように三本の太い尻尾をゆらした狐
が膝にまつわりついている。その頭をそっと撫でながら梓は庭を見回す。
「魎壱さま、まだお戻りになられないのかしらねえ」
 広い庭、そこかしこに植えられた庭木の間からちらちらっと覗く目、灯篭の
影に潜んでこちらを伺う目に見えぬ存在を感じるだけのなにか。本来なら怖れ
の対象となるはずだが、霊獣使いの一族として生まれ、見鬼としての才を生ま
れ持った梓にとっては幼い頃から見慣れた懐かしいもの達でもある。
「蒼雅のお家に似ていますね」
 ふと、実家の庭を思い出す。吹利郊外にある蒼雅の家も、きちんと手入れさ
れた広い中庭で、そこかしこを霊獣達が駆け回り、庭木を揺らす人ならぬモノ
の気配で常に満ちていた。
 それは梓にとっては当たり前のことで、皆も当たり前のように人ならぬ気配
を感じてその姿を見ているものだと、ずっと信じていた。
 ふと自分と命を分かつ霊獣、穂波の頭を撫でながら思う。
 いつだったろうか。人ならぬモノを見ることを薄気味悪いと言われたのは。
 生まれて初めて通った学校で、目に見えぬモノの話をしてそれは大層いじめ
られたらしい。当初、自分がいじめられているいうのが良くわかっておらず、
人づてで話を聞いてようやく気づいたのではあったけれど。
「そういえば、そんなこともありましたねえ」
 さわさわと穂波の毛並みを指先で撫でながら、ふと思う。あの頃の皆は穂波
のこのふわふわの毛並みを見ることも感じることもできなかったのかと思うと
少し気の毒に思う。
「とってもふわふわですのにね、ねぇ穂波?」
 問いかける声に、きゅうと鳴いて。目を細めて耳を伏せる。
「うふふ」
 擦り寄る鼻先を撫でて、ふと鼻がむずむずする。

「くしゅっ」

 ふと、両肩がふわりと暖かくなる。肩に掛けられた、薄手のカーディガン。
「あずちゃん、風邪ひくよ?」
「あらあら、魎壱様」
 振り向いた先には、細面の顔に細く吊りあがった目を更に細めて笑う顔。
「風も強くなってきたし、お部屋においで」
「ええ、そうしますわ」
 手を引かれて立ち上がる。傍らの穂波が梓を守るように足元に擦り寄る。
 ふと、庭を振り返ると、さわさわと木々の陰でうごめくアヤカシ達の存在を
確かに感じる。
「また、後で、ね?」
 小さく手をふる。
 庭でざわめく気配がちいさく肯定した気配するが梓にはわかった。

時系列 
------ 
 2005年10月中旬。
解説 
----
 普通でない家に生まれそだった梓、弧杖家に嫁いで物思う。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。




 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29300/29382.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage