[KATARIBE 29381] [HA06N]小説『揺らめく影』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Sun, 16 Oct 2005 14:51:08 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29381] [HA06N]小説『揺らめく影』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200510160551.AA00082@hikaru-h8akl379.blue.ocn.ne.jp>
X-Mail-Count: 29381

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29300/29381.html

ふきらです。
三十分一本勝負。頑張っている人がいるので頑張ります。
お題は

14:19 <Role> rg[hukiwrite]HA06event: 片隅からゆっくりとした影がこちらを見ている ですわ☆

**********************************************************************
小説『揺らめく影』
==================

登場人物
--------
 火川猛芳(ひかわ・たけよし):http://kataribe.com/HA/06/C/0580/
  帆川神社の宮司。

本編
----
 何かがいる。
 どうも後ろから視線を感じる。
 時折、振り返ってみるが何もいない。
「もう年かの……」
 猛芳は読んでいた本を閉じると、首を回した。ゴキゴキと良い音が鳴る。
 神社の倉庫の中は、ひんやりとしている。中には祭事で必要な道具や古くか
らの資料の他に色々と厄介な代物も納められていた。
「少し休憩するか」
 本を書棚に戻し、ふと動きを止める。しばらくして勢いよく振り返った。
 カサカサ、と音を立てて視界の隅で何かが動いた。その方を音も立てずじっ
と見つめる。
 しばらくして、見つめていたところから黒い影がゆっくりと姿を見せた。そ
して、猛芳が見ているのに気付くと慌てて身を引っ込める。
「なんじゃありゃ?」
 影がいたところに近づいてみるが、特に変わったことはない。ふむ、と首を
かしげて振り返ると、今度は先ほどまで猛芳がいたところあたりで何かが動い
た。
 そこに行ってみてもやっぱり何もない。で、そこで振り返ってみると最初の
位置に影が戻っているわけで。
「あー、もうっ。出てくるなら出てくる、出てこないなら出てこないではっき
りせんかい!」
 そう怒鳴って猛芳は倉庫の床を殴った。ドン、と盛大な音がして倉庫が揺れ
る。最初の位置にいた影が驚いて、姿を見せた。
「……あ?」
 現れたのは真っ黒な影。それを映している物はない。影だけが倉庫の床に
あった。
 影も怯えることがあるのか、小刻みに震えている。それをみて猛芳は苦笑し
た。
「お前何者じゃ?」
 その問いに影は動かない。
「答える口がないから無理か…… 別に何か悪いことしようとかは思ってない
な?」
 今度は大きくその身を揺らめかす。その行動に猛芳は微笑んだ。
「肯定の意味ととっておくわい。もし何か変なことしたら……」
 そう言って、右手を握ってみせる。それを見て、影は慌てたように先ほどと
同じ動作を繰り返した。
「なら、よし」
 猛芳は頷くと倉庫の明かりを消して出ていく。
 真っ暗な倉庫の中で、影がゆっくりとした動きで隅の方へと沈んでいった。


時系列と舞台
------------
某月某日。帆川神社の倉庫にて。

解説
----
爺さんが微妙に男気溢れるキャラになりつつあるような気がします。

$$
**********************************************************************
 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29300/29381.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage