[KATARIBE 29378] [HA06N]小説真夜中の学校のささやかな怪奇現象『』

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Date: Sun, 16 Oct 2005 14:12:51 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29378] [HA06N]小説真夜中の学校のささやかな怪奇現象『』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負。お題は

13:12 <Role> rg[hukira]HA06event: ピンポン玉が潰れたジュース缶をくれた ですわ☆

です。ジュース缶じゃないし、くれたわけでもないですが勘弁。

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小説『真夜中の学校のささやかな怪奇現象』
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登場人物
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 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

本編
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 久しぶりに足を踏み入れた中学校の校舎は昔と変わっていないような変わっ
ているような、奇妙な印象を受けた。
「懐かしいな……」
 扉には鍵がかかっていて、中に入ることはできない。神羅は一度校舎を見上
げた。
「真夜中に学校に来たのはこれが初めてやけどな」
 空には満月が浮かんでいて、神羅の影をくっきりと地面に描いている。風は
少し冷たくて、神羅は持っていた缶コーヒーを両手で包む。時刻は午前一時を
過ぎたあたり。こんな時間に中学校にいる人はいない……はずだった。
 カコン、カコン。と遠くから乾いた音がした。
「お、出たな」
 音は体育館の方から聞こえる。神羅はゆったりとした足取りでその方に向
かっていった。
 そもそも、真夜中に中学校に来たのは、時々中学校から変な音が聞こえると
いう噂を耳にしたからだった。
 体育館の入り口にも当然鍵がかかっていた。音はこの中から聞こえている。
「さて……」
 体育館の周囲を回りながら、開いているところがないか探す。
「あそこはどうかな。ワシらの頃は開いてたけど……」
 神羅が中学生だったとき、体育館の裏手、倉庫となっている部屋の上の方の
窓の鍵の一つがずっと壊れっぱなしだった。本当なら修理されるべきなのだ
が、生徒たちは誰も鍵が壊れていることを先生に言わなかったので、入学する
ときに壊れていた鍵は結局卒業するときも壊れたままだった。
 その場所に行って、窓をスライドさせてみる。窓のサッシが曲がっているの
か、動きはするものの三分の一ほどしか開かなかった。
「まだ鍵が開きっぱなしなだけ感心するべきか」
 神羅はポケットから人型の紙を取り出すとその隙間に放り込んだ。
 中でごそごそ物音がし、倉庫の別の窓が開く。そこから一白が顔を出した。
「何だか怖いよ……」
「お前が怖がってどうするよ」
 その窓から入った神羅は苦笑を浮かべる。
「も、もういいかな」
 周囲を気にしながら泣きそうな表情の一白を紙に戻して、神羅は倉庫から体
育館へと入っていった。
 がらんとしている体育館で先ほどから聞こえてくる音が響いている。窓から
入ってくる月の光で、中は様子が分かるくらいには照らされていた。
「お、あれか」
 神羅の視線の先にはぼろぼろになった卓球台が立てかけられている。それに
向かってピンポン球が何度もぶつかっていた。何となくその光景はピンポン球
が卓球台に向かって遊ぼうとせがんでいるようだった。
「何というか、これも妙な縁だな」
 卓球台はところところで塗料がはげていたりして、かなり古い物のようだっ
た。妙な縁というのは中学生の頃、神羅は卓球部だったからである。
「ひょっとしたら、ワシも使っていたのかもしれん」
 神羅が台に近づいていくと、ピンポン球はピタリと動くのをやめた。まるで
こちらの動きを警戒しているようである。
 そして、神羅が台に手を触れようとした瞬間、ピンポン球は神羅の方に飛ん
できた。
「うわっ」
 とっさに持っていた缶コーヒーで防御する。ガコン、という音がして缶がへ
こんだ。
「まじかい……」
 へこんだ缶をいて神羅は呆れた表情を浮かべた。
「さて、どうしたものか」
 台に触れようとしない限り、ピンポン球は攻撃してこないようである。どう
やらピンポン球は台を守ろうとしているらしい。
「台をどうにかせんとあかんのか…… て、これはどうしようもないなあ」
 勝手に台を処分するわけにもいかない。ここは一度退くべきか、と神羅は考
える。
「そもそも、頼まれたわけでもないしな」
 そう言って神羅は体育館を後にした。
 後日、中学校の側を通ったときにゴミ捨て場に件の卓球台が置いてあるのが
見えた。
 それ以来、中学校で変な音がするといった話は聞かなくなった。


時系列と舞台
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 某月某日。神羅が通っていた中学校にて。

解説
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 噂がするというだけで、中学校に忍び込むのはいけません。

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