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Date: Sat, 15 Oct 2005 20:24:21 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29371] [HA06N] 小説『少年の宝物』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200510151124.UAA13667@www.mahoroba.ne.jp>
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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2005年10月15日:20時24分21秒
Sub:[HA06N]小説『少年の宝物』:
From:久志
久志です。
挑戦返しをくらってしまいました。
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小説『少年の宝物』
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登場キャラクター
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本宮幸久（もとみや・ゆきひさ）
：霊感の強い兄ちゃん、職業葬儀屋。
本文
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吹き付ける風が結構冷たい。
そろそろ厚めの下着と喪服の内張りの出番かもしれねえ。
仕事柄、会場の内外問わず作業することが多いせいで、自身の温度調整には
結構気を使う。こっちは大抵喪服のみでの作業で、よほどの冷え込みでもなけ
ればめったに上着など羽織れない上に、外での作業は結構多い。
少し手をすり合わせて、駐車場へと抜ける裏道を歩く途中。
「ふぇぇん」
この肌寒い中で半袖半ズボンの小さい――幼稚園くらいか？――が目を赤く
腫らしてしゃくりあげてる。
なんつか……なあ。
めんどくせえな、くそ。
「よう、どした」
「ひっく……」
ぐすぐすと小さな鼻を鳴らしながら、黒目の大きい目が俺を見上げてくる。
「お前、迷ったのか？」
「ううん」
「じゃあ、どした？」
「これ……」
伸ばした手を掴んで、もう片方の手にしっかり握っていた物を俺の目の前に
差し出す。
薄汚れた人型のビニール人形。たしか子供向けのアニメのキャラかなにか、
どこかで見覚えがある。その片足が何かに齧られたのか半分千切れかけてる。
「ネズミかなにかか？」
手にとって見る。人形の足の付け根辺りにデコボコとした噛み跡が見える。
そーいや、夏あたりにもマンション周辺でネズミが出たとかなんだで大騒ぎ
があったのを思い出した。
服の裾を掴んだガキの目からぽつりと涙が落ちる。
「宝物なのに」
「ああ、わかったわかった、ったく」
つか、ダメだな。ここまで跡がぼろぼろだと直しようがねえ。こういうモン
はどこで売ってたもんか。小学生の姪がいる桜木あたりに聞いてみるか。
「同じキャラの奴でいいか？」
「え？
「……もってってやるから」
「ホント？！」
泣いてたガキの顔がぱっと明るくなる。現金だよなあ、実際。
「だから、さあ」
「うん」
ったく、めんどくせえな。
「先、行ってな」
「…………」
「あんまりこっちいると、迷うぞ？」
「…………」
「ちゃんと持ってってやるから」
「……うん」
見上げたまま小さく頷いて俺の手を離す。
そのままガキの姿が小さく揺らいだ。
「ったく」
そこには誰も居ない。
ガキが消えた後をしばらく眺めて、小さくため息をついた。手の中に転がる
ビニール人形。確かミスティなんちゃらとかいうガキ向けのアニメキャラだっ
たかね。
しょうがねえな、ったく。
時系列
------
九月某日。
解説
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泣いてる幼稚園児を見かけた幸久。
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以上。
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