[KATARIBE 29368] [HA06N]小説『式神と幼稚園児とソフトクリーム』

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Date: Sat, 15 Oct 2005 19:29:26 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29368] [HA06N]小説『式神と幼稚園児とソフトクリーム』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負。挑戦状をたたきつけられました(w

18:51 <Hisa_kaki> 齧られて泣いている園児が転がっていた、ですわ☆

固くない物でも齧られていいですよね?

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小説『式神と幼稚園児とソフトクリーム』
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登場人物
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津久見神羅:
 なにげに陰陽師な大学院生。
  
一白:津久見神羅の式神。外見は小学4年生くらいの少年。

本編
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 スーパーの入り口から出た神羅と一白はそれぞれ対照的な表情を浮かべてい
た。神羅は両手にスーパーの袋を提げ疲れたような顔をしていて、一白は入り
口で打っていた屋台のソフトクリームを持ってニコニコと笑みを浮かべてい
る。
「荷物持ち手伝うって言ったんじゃなかったっけ……」
 神羅が恨めしそうな声で言う。
「だから、これを食べ終わったら持つって言ってるじゃない」
「報酬ってのは仕事を終えてから貰うもんやろうが」
「前払いだよっ」
 片方は重い足取りで、もう片方は軽い足取りでスーパーを出る。店の前は少
し広い場所になっていて待ち合わせなどに使われている。
「うええん」
 そんな中で幼稚園児がしりもちをついた状態で大きな声を上げて泣きじゃ
くっていた。こんなところに小さい子が一人で来ることはまずないだろうが、
その子の親らしき人は見あたらない。
 子供の足下にはソフトクリームが潰れていた。
「あーあ」
 そう言った一白を黒い小さな影が飛びかかってきた。
「うわっ」
 その影は一白の持っていたソフトクリームに食いつくと、彼の体を蹴って飛
び退く。その反動で一白はソフトクリームを落とし、しりもちをついた。
「……そういうことか」
 その光景はまさにあの幼稚園児と同じである。飛び退いた影は黒猫で、嘲る
ように一白の方を見て悠々とした足取りでどこかへ行っている。
 一白は勢いよく立ち上がった。
「あいつっ」
 追いかけようとする彼を神羅が引っ張って押しとどめる。
「これ持ってけ」
 差し出したのは韋駄天の真言が書かれた符。
「どうせ普通に走ってたんなら負けるやろ」
「ありがと!」
 身を翻して一白が黒猫を追っていく。それに気付いた猫が走って逃げる。猫
と一白の差は広がっていった。
「加速っ」
 一白が先ほど貰った符を胸に貼る。彼の走る速度が飛躍的に上がった。
「……さっさと帰ってくるとええけど」
 追走劇を見送って神羅は泣いている子を見た。まだ相変わらず泣いている。
溜め息をついて神羅はその子の側にしゃがみ込んだ。
「ほら。もう泣きやみなって。泣いたって元にはもどらんで」
 それでも泣きやまない。神羅はもう一度溜め息をつくと、買い物袋からアイ
スクリームを取り出した。
「これやるから」
 アイスクリームを差し出されると、子供はスイッチが切れたように泣きやん
で、手を出した。
「ありがとう、は?」
「……ありがとう」
「はい」
 そう言ってアイスクリームをあげる。
 神羅はその子を立ち上がらせると、服の汚れを払ってやる。
「お母さんと一緒やないの?」
「うん。ここで待っててって言われた」
「さよか。一人でちゃんと待ってたなんてえらいなあ」
「えへへ」
 神羅はその子の頭を撫でると、立ち上がった。
「こら暴れるなって」
 遠くから一白の声が聞こえてきた。目をやると、猫を抱えている彼の姿が見
える。どこをどう追っていったのか服には葉っぱやら何やら色々付いている。
「その猫どうすんねんやろ……」
 誇らしげな表情を浮かべている一白に対して、神羅は溜め息をついて渋い表
情を浮かべた。

時系列と舞台
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 某月某日。商店街にて。

解説
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 式神と使い主の関係のはずなのにそう見えないところが何とも。

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