[KATARIBE 29348] [HA06N]小説『転がってきた災難』

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Date: Thu, 13 Oct 2005 00:38:35 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29348] [HA06N]小説『転がってきた災難』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負。今回のお題は、

23:54 <Role> rg[hukira]HA06event: 薄汚れたオーダースーツのサラリーマンに
ヒビの入ったガラス玉がぶつかった ですわ☆

……もう何のことだか分からないよorz
「薄汚れたオーダースーツ」の部分は無理矢理です。

ま、そんなわけで火川神社の宮司にして津久見神羅の祖父、初登場です。
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小説『転がってきた災難』
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登場人物
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 火川猛芳(ひかわ・たけよし):
  帆川神社の宮司。口より先に拳が出るタイプ。

本編
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 火川猛芳は緩やかな坂道をダッシュで駆けていた。別に運動をしているわけ
ではなく、誰かに追われているわけでもない。むしろ、追いかけている方
だった。
 彼の追いかけている対象は、十数メートル先を転がっている大きめのガラス
玉。
「はやく、捕まえんとっ」
 猛芳が慌てているのには訳がある。追いかけているガラス玉はただのガラス
玉ではなく、少々厄介な代物なのである。知り合いの骨董屋にお祓いを頼まれ
た曰く付きの物で、それを引き取って帰る途中だった。
 坂道なのでガラス玉の速度は上がり、猛芳との距離は広がるばかり。
 やがてガラス玉の先に、遠くから見ても冴えないと分かってしまうほど、く
たびれているサラリーマンが現れた。
「おーい、そこの若いのー。それに触れるなよー」
 彼はガラス玉の近くに人がいることに気付いて、大声で叫んだ。
「えっ?」
 しかし、猛芳の注意に男性が気付いたときには、既にガラス玉は彼の靴に触
れていた。
 ガラス玉が淡く光ったかと思うと、一瞬辺りが強い光に包まれる。光が収
まった後には、男性の姿はなくガラス玉と彼の持っていたカバンがそこにある
だけだった。
「ありゃりゃ、間に合わなんだか」
 追いついた猛芳が息を整えながら呟いた。
「どうしたものかの」
 ガラス玉を拾い上げて、太陽にかざす。中には先ほどガラス玉を触った男性
が入っている。
「定員一名じゃからな。このままだと安全なんじゃが……そういうわけにはい
かんよなあ」
 手のひらでガラス玉を転がしてみる。
「ん?」
 猛芳は違和感を感じて、ガラス玉に顔を近づけた。よく見ると微かにひびが
入っている。どうやら転がっている間にできたものらしい。
「これならなんとかなるかの」
 そう言うと、猛芳はひびの入ったところを上にしてガラス玉を地面に置いた。
「勿体ないが……仕方あるまいっ!」
 そう言うと同時に、空手の瓦割りの要領で拳をガラス玉に打ちつける。
 しばらくして、ピシ、とガラス玉が微かな音を立てた。
「あーあ」
 自分でやっておきながら、残念そうな声を出して猛芳は溜め息をついた。
 ヒビが大きくなっていき、その割れ目から光が漏れ始める。やがて、ヒビが
完全にガラス玉を真っ二つにすると、ひときわ大きな光が辺りを包んだ。
「うわっ」
 光が消えると、ガラス玉の近くに尻餅をついた先ほどの男性の姿があった。
「変な目に遭わせて、すまんかったの」
 猛芳は二つになったガラス玉を拾うと、まだ呆然としている男性のスーツに
ついた砂埃をはたいてやった。
「せっかくの一張羅なのに、申し訳ない」
 猛芳は男性に軽く礼をすると、元来た道を引き返していく。
「これって弁償もんじゃよなあ……神羅が何て言うか……」
 しばらく進んだところで、立ち止まり先ほどまでガラス玉だった物を取り出
して溜め息をつく。
「憂鬱じゃわい……」
 吹いてくる風がことさら冷たく感じる。猛芳は背中を丸めて身を縮ませた。

時系列と舞台
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某月某日。緩やかな坂道で。

解説
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この爺さん。面倒くさいことは拳で解決してしまうのです。

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