[KATARIBE 29331] [HA06P] エピソード『眩暈』

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Date: Mon, 10 Oct 2005 00:26:09 +0900 (JST)
From: 葵一  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29331] [HA06P] エピソード『眩暈』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年10月10日:00時26分09秒
Sub:[HA06P]エピソード『眩暈』:
From:葵一



 こんにちは葵でございます。
 ネタ帳にあった「その後の稽古」こーなりました。w
 であー(脱兎

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[HA06P]エピソード『目眩』
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登場人物
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 如月 尊:見た目は15、中身は三十路の花屋のお姉さん。
      本業は退魔師。

 本宮和久:吹利県警生活安全課所属のお巡りさん。
      愛称『豆柴』君。

 相羽尚吾:県警の刑事さん、通称「ヤク避け相羽」
      県警で敵に回しちゃいけない人ベスト3のうちの一人。


道場にて
--------


 お久しぶりの県警道場。
 9月に入って蝉の声は絶えましたが。
 稽古の響動は絶えません。

 和久     :「めぇぇぇぇんっ!」
 尊      :「遅いっ!」

 和久の小手が、振り上げられようと動き始めた瞬間、尊の繰り出した鞭のよ
うにしなる竹刀がそれを捕らえ、剃刀のような切れ味の出端小手が容赦なく叩
き込まれる。

 和久     :「つぅっ」

 竹刀とはいえ、使い手によってその痛みは全く異なる。

 尊      :「次っ! 組み討ち行くわよっ」
 和久     :「おうっ!」

 打ち込みにビリビリ痺れる腕の痛みに顔をしかめつつ、組み付いてくる尊の
両手を掴み力比べの体制に入る。

 和久     :「こっちじゃ負けませんっ(がっ)」

 力比べの耐性から、手首を崩して組み付いた尊の両腕を閂に決め、諸手投げ
にのけぞりながら投げる。

 和久     :「せいやぁぁぁっ!」

 通常なら、難なく受け身を取って反撃に入れるレベルの投げ技だったのだが。

 尊      :「あっ(汗)」

 道場の壁際、しかも。

 和久     :「しまっ!」

 両腕閂に決められてちゃぁ。

 SE:ごちっーん☆

 和久     :「あっ(滝汗)」
 尊      :「ぐっ……ぅ……(きゅぅ)」

 あーあ。

 和久     :「尊さんっ(焦)」

 意識が遠のく尊の耳に最後に届いたのは、和久の焦りまくった声だった。


医務室
------

 声      :「莫迦野郎、いくら本気つったって……両手決めて壁に叩
        :きつけたら……」
 和久     :「すみませんっ」
 尊      :(う……ん……)

 沈んでいた意識が浮上してくると。
 聞こえてきたのは和久君が怒られてる声。

 尊      :(あ……れ……この声……)
 声      :「どんな情況であれ警察官が周囲の情況、自分の置かれた
        :位置、体制を忘れてどうする。 熱くなるのは勝手だがな、
        :冷静さを忘れて自分や周りの人間を危険にさらすようなら
        :警官なんざ辞めちまえ」

 突き放すように言い切る相場さんの声。

 和久     :「それは……すっ……すみません……(落ち込み)」
 尊      :(ちょ……相羽さん?……ひどい事……言って……)

 あれは、受身を取れなかったのはひとえに自分の未熟さだと思っている。

 相羽     :「とりあえず、氷嚢の氷がもう無いから、急いで買って来
        :いや」
 和久     :「はっはいっ!」

 SE:たたたっ……ガラッピシャン

 そういえば、後頭部にひんやりした水枕が当てられているのが分かる。

 相羽     :「で、気づいてるよね、お嬢さん(くくくっ)」

 厳しい声から一転、軽く笑いながら振り返る。

 尊      :(え(汗)……気づかれてるっ)

 そーっとうっすら片目を開けてみると。
 あの笑いを浮かべた相羽さんがこちらを見ている。

 相羽     :「ずっと聞いてたんでしょ? まぁ、ちぃと薬がキツいと
        :は思うけど、たまにはあの位の事言わないとねぇ……熱血
        :だけじゃいつか自滅するからね」
 尊      :「もしかして、あたしが聞いてるのを知ってて?」

 ゆっくり目を開けて顔を向けてみる。

 相羽     :「まぁ、ね(くくっ)」

 ……相変わらず。
 人を喰った笑いと共にサラリと言ってのける。

 相羽     :「で」

 一瞬表情引き締めて。

 相羽     :「モロに後頭部打ったみたいだけど、大丈夫かい」

 そういわれると、やっぱり。

 尊      :「ん、ちょっと、ね、受身取れなかったし……ま、意識あ
        :るし、多分大丈夫」
 相羽     :「そいつぁ良かった。 それにしても……豆柴、手加減抜
        :きでやれるようになったみたいだねぇ」

 近くの椅子を引き寄せて、背もたれを抱えるようにどっこいしょと腰掛ける。

 尊      :「ええ……そのうち追い越されちゃいそうです(くす)」
 相羽     :「俺からも礼を言っとくわ」
 尊      :「え?」
 相羽     :「俺らが相手するとね……奴は競い合うんじゃなくて教え
        :てもらおうとしちゃうんでね」

 ああ、なるほどと頷く。
 競い合うことで自分の中にあるものを掘り出すことが出来る。
 かつて自分も同じ事を言われた覚えがある。

 尊      :「で。 一つ聞きたいんですけど」
 相羽     :「なに?」
 尊      :「道場にはあたしと、かず……本宮君しか居なかった筈な
        :んですが」
 相羽     :「それが?」
 尊      :「なんで『両手を決められて壁に叩きつけられた』ってご
        :存知なんですか?」

 一瞬、きょとんと表情が止まる。

 相羽     :「……」
 尊      :「……」

 数刻。

 相羽     :「あー……それ、ね、そういうこと(にやり)」
 尊      :「(赤面)こっ……あ、あくにんっ」

 先輩、相変わらず、悪人です。

 と。

 SE:がらっ

 和久     :「先輩っ、氷買ってきましたっ!」
 相羽     :「……怪我人が居るんだから、もうちっと静かに、な」
 和久     :「あ(汗) すっ……あ、尊さんっ気がつきましたかっ」

 心配してたのか、思わず先輩を押しのけんばかりにベッドにかぶりつく和久
君。

 和久     :「だ、大丈夫ですかっ?」

 さっき先輩に叱られたのがかなり利いたのか、心配そうに覗き込む和久君。

 尊      :「あ……う、ん……だい……じょぶ(真っ赤)」

 顔を上から間近で覗き込んではイケマセン。
 その距離に思わず目を逸らせちゃったり。

 相羽     :「本宮巡査」
 和久     :「はっはいっ(びしっ)」
 相羽     :「万一の事があるといけないから、彼女を病院に連れて行って
        :検査を受けて貰え」
 和久     :「は、了解しましたっ(びしっ)」

 めったに無い相羽さんの命令に、思わず直立不動、敬礼で答える豆柴君。

 尊      :「え、ちょっ……大丈夫ですってば(焦)」
 相羽     :「(尊の方みて)ま、念のためにね、ああ、後のことは俺
        :が課長に言っとくから(にやり)」
 和久     :「よろしくお願いします」

 言ってる事はまともなんだが。
 その笑いが。

 尊      :「は、はぁ……(不請不請)」
 和久     :「じゃ、尊さん、起きられますか?」
 尊      :「うん、もー大丈夫よ」

 ゆっくり起きるが。

 尊      :「あ、れ(ぐらっ)」
 和久     :「危ないっ」

 起き上がった瞬間、ぐらりと揺らぐ景色。

 SE:がしっ

 和久     :「大丈夫、ですか?」
 尊      :「うん(くらくら)」

 違う意味で大丈夫でないような気がしますが。

 相羽     :「言わんこっちゃない(苦笑)」
 和久     :「と、とりあえず病院にっ」

 と、いいつつ和久君、周りを見回すが。

 和久     :「あ……れ?」
 相羽     :「どうした?」
 和久     :「いえ、あの、担架が……」

 尊さん運ぶ時、さっき使ったはずなんですが。
 と続ける。

 相羽     :「ああ、担架ね、ほら、今日防災の日だろ? さっき訓練
        :に使うってんで持ってったけど?(くっくっくっ)」
 和久     :「え?(汗)」

 ぢゃ、運ぶには。

 相羽     :「まぁ、そんな訳で、ね、とりあえず裏口に車回すから、
        :彼女おぶって来てくれや(くくっ)」
 尊      :「え゛(赤面)」
 和久     :「あ゛(赤面)」

 思わず顔見合わせちゃったり。
 で、目が合うとまた逸らせちゃったり。

 相羽     :「じゃ、俺、車回すから、後宜しく」

 背中越しにヒラヒラと手を振って医務室から出てっちゃう相場さん。
 残されたのは。

 和久     :「えーっと……(そっぽ向いて赤面)」
 尊      :「……(上半身起こして布団握り締めて硬直っ)」

 きまづい(w

 和久     :「と、とりあえず……病院、いきましょう」

 ベッドの脇でしゃがみこんで背中を見せる和久君。

 尊      :「あ……(真っ赤)……う、ん」

 暫く逡巡していたけど。

 尊      :「あり……がと(おぶさる)」
 和久     :「じゃ、行きますね」

 軽くゆすり上げてから、ひょいと立ち上がって。

 和久     :(あ……軽い……な)
 尊      :(あ……背中……広い……な)

 二者二様に思うのでした。


県警裏口ロータリー
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 そして。
 裏口で車にもたれて一服する悪の策士が一人。

 相羽     :「さて……出てくるまでに何分かかるかな?(腕時計見つ
        :つ一服)」

 空には秋の鰯雲。
 世は全て事も無し。


 ……ホントか?

時系列と舞台
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 九月一日、防災の日
 県警道場と医務室。


解説
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 なんと言うか、亀の歩みですのう(謎

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