[KATARIBE 29324] [HA06N]小説『アヒルとの遭遇』

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Date: Sun, 09 Oct 2005 17:30:17 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29324] [HA06N]小説『アヒルとの遭遇』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。
三十分一本勝負 便乗編。今回のお題は

16:41 <Role> rg[lute]HA06event: 古びたアヒルのぬいぐるみが突進してきた ですわ☆

でした。
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小説『アヒルとの遭遇』
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登場人物
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 津久見神羅(つくみ・から):http://kataribe.com/HA/06/C/0077/
  何げに陰陽師な大学院生。

 一白(いっぱく):津久見神羅の式神。外見は小学三年生くらいの少年。

本編
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 帆川神社の本宮から少し離れたところに小さな蔵がある。主に行事に使う道
具がしまってあるのだが、中には奇妙な物も混じっている。お祓いを依頼され
た物で、依頼客が受け取りに来なかったり、一度は持って帰ったものの「やっ
ぱり気味が悪いから」ということで結局こちらが引き取った物などである。
 持ち主から見放された物は「化けやすい」。しかも、たちの悪い物に、であ
る。だから、ずっと仕舞っているだけではなく、ときどき取り出して慰めてや
らなければならない。
「えーと……」
 本宮の中に並べられた物を前に神羅が腕組みをしている。メジャーな人形か
ら、包丁などの故人が生前使っていた物まで様々な物がある。で、神羅が悩ん
であるのはその中にぬいぐるみがあったからである。
「……爺さんか?」
 ぬいぐるみを抱えて境内に出る。その途端に、
「ガァ」
 ぬいぐるみが鳴いた。そして、神羅から逃れようと思いっきりもがく。
「しまった。もう化けてたか」
 本宮には霊が暴れないように特別な処理が施してある。しかし、境内にはそ
の効果は及んでいなかった。
「一白」
「あいよ」
 神羅の呼び声で瞬時に一白が現れる。
「こいつを鳥居の柱に貼り付けて」
 一白に手渡したのは二枚の札。
 ガアガア鳴いて歩き回っているアヒルのぬいぐるみの脇をすり抜けて、一白
が走っていく。
 一白が行っている間に、神羅が本宮の両端に同じような札を貼り付ける。
「おっけー」
 鳥居の方で一白が叫ぶ。神羅は少し集中してから柏手を打った。
 外の雑音が小さくなって、中から見える外の景色から色が無くなった。結界
が張られたのである。
「とりあえず、これであいつが外に行くことはなくなった、と」
 あらためて、アヒルの方を見る。 
「どうすんのさー」
 戻ってきた一白が言った。
「まずは捕まえなあかんやろね」
 捕まえる、という言葉が理解できたのだろうか。アヒルは神羅の言葉に反応
して、慌てたように神羅の方から逃げ出していく。ぬいぐるみとはいえアヒル
のくせに、動作は機敏だ。
「わ、わ」
 自分の方に向かってきたアヒルに逃げようとする一白。
「逃げるなって」
 神羅に言われて、仕方なくアヒルの正面に立ちはだかる。しかし、アヒルの
勢いは緩まない。
 衝突する、と一白は覚悟した。
 ……ぽふ。
「あ、あれ?」
 勢いの割には情けない音。いくら動いていても所詮ぬいぐるみだった。
「あれ、ひょっとしてびびってた?」
 神羅がニヤニヤと笑いながら一白に言った。
「ち、違うよ!」
 照れ隠しにぬいぐるみをぐにぐにといじる。アヒルはガアガア言いながらも
一白のされるままになっている。
「……かわいいかも」
 えへへ、と笑いながら更にぐにぐにといじり続ける。
「ひょっとして、飼いたいとか言わんやろね」
 眉をひそめて神羅が言う。
「……だめ?」
 一白の問いに神羅は溜め息で答える。
「やったー」
「ガアー」
 いつもより静かな境内に一白とアヒルの声が響いた。


時系列と舞台
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某月某日。帆川神社にて。

解説
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神社だけにお祓いの頼みとかも引き受けてます。そうなると、時々厄介な物が
でてくるわけです。

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