[KATARIBE 29316] [HA06N]小説『一白と子猫』

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Date: Fri, 07 Oct 2005 01:11:05 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29316] [HA06N]小説『一白と子猫』
To: kataribe-ml@trpg.net
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ふきらです。ヘッダを付けてなかったので再送です。申し訳ありません。
いつまで続くか分からない三十分一本勝負。今回は

00:18 <Role> rg[hukira]HA06event: 積み上がった木の葉を持った白い子猫がポケットに向かった ですわ☆

ちなみに10分ちょいオーバーでした。

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小説『一白と子猫』
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登場人物
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 一白(いっぱく):津久見神羅の式神。外見は小学三年生くらいの少年。

本編
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 晴れた日の午後二時頃。太陽の光もすっかり秋らしくなって、昼寝するには
もってこいの状況。
 山の中腹にある帆川神社には街のざわめきもほとんど届かず、参拝客もいな
い。時折吹いてくる風が、木の葉を揺らして音を鳴らす。
「あー……暇、だな」
 一白は家の縁側でごろりと横になった。一白の主である神羅と最近家にやっ
てきたフィルはそれぞれ学校に行っている。いつもなら家にいるはずの神羅の
祖父も今日は近所の将棋仲間の家に出かけていた。
 テレビを付けても、面白い番組はやっていない。
「あー」
 そう言ってテレビの電源を切ると、一白はごろりと体を反転させた。
 家の縁側からは神社の境内が一望できる。
 ぼーと何の変化もない景色を眺めていると、
「にゃあ」
と、下の方から声がした。縁側から身を乗り出して、下を覗き込むと子猫が青
い目をこちらに向けている。
「にゃあ?」
 一白が声をかけると、その猫は驚いて一白のいる反対側へと逃げていった。
「あ、そっちはっ」
 制止の声が通じるはずもなく、猫はどんどん奥へと走っていく。しばらくし
て、バチンと大きな音とともにギニャーという猫の悲鳴が一白の耳に届いた。
「ど、どうしよう」
 床下はそんなに高くないが、一白なら何とか入ることができそうである。
(服とか汚すと、神羅が怒るだろうなあ)
 怒られるところを想像してへこみそうになるのを、ぐっとこらえて、一白は
床下へと入っていった。
 ところどころから光が入ってくるおかげで、真っ暗というわけではない。ま
だ続いている猫の鳴き声を頼りに床下を進むと、やがてねずみ取りに引っか
かっている子猫の姿を見つけた。
「猫がねずみ取りに引っかかってどうするんだよ」
 猫から仕掛けを外そうとするが、狭いし猫が暴れるしでうまく取れない。仕
方なく、暴れる猫を抱えたまま入ってきた方へと戻っていく。
 床下から出る。入ってからそんなに時間は経っていない。特に変わりはない
はずなのに、やけに時間が過ぎたような気がした。
 今まで暗いところにいたのでよく分からなかったが、その猫は真綿のような
ふんわりとした白い毛をまとっていた。もっとも、今は汚れているが。
 猫を押さえつけて仕掛けを外すと、白い子猫は一白の拘束からするりと逃れ
て境内の林の方へと走っていった。
「……行っちゃった」
 ふと、自分の着ていたパーカーを見ると誇りや砂で汚れている。
「あーあ……」
 猫には逃げられるしで、更にへこみそうになる。
「……にゃあ」
 ほどなくして、先ほどの猫が戻ってきた。何枚かの木の葉をくわえている。そ
の子猫は一白の方に駆け寄ってくると、まるでダンクシュートでもするかのよ
うにパーカーのポケットにくわえていた木の葉を押し込んだ。
「わっ」
 驚いて、しりもちをつく一白。
 子猫は再びやって来た方に戻っていく。林に入る前で、一白の方を振り返る
と「にゃあ」と鳴いて、林の奥へと消えていった。
「何なんだよ」
 お尻をさすりながらパーカーのポケットを探る。
 取り出したのは五枚の丈夫そうな木の葉。そこには一枚に一文字ずつひらが
なが書かれてあって。
「『い』『が』『あ』『う』『と』……ああ、『ありがとう』ってことかな?
 り、じゃなくて、い、だけど」
 何だかよく分からないけど、これがお礼らしい。
「でも、なんでこんな物を持ってたんだ? まさか猫が文字を勉強してる……
 なんてことがあるのかな?」
 猫の消えた方を見て首をかしげる。
「ま、あっという間の出来事だったけど楽しかったな」
 一白はそう言って笑い、ふと自分の汚れた姿を見てため息をついた。
 
時系列と舞台
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ある秋の日。帆川神社にて。

解説
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何の変哲もない日常。猫がひらがなを理解できても、別に、ねえ?

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