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Date: Fri, 30 Sep 2005 22:07:40 +0900 (JST)
From: いー・あーる <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29294] Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005 Never Forget Memories 』
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2005年09月30日:22時07分39秒
Sub:Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005 Never Forget Memories』:
From:いー・あーる
ども、いー・あーるです。
hiroさん、訂正有難うございます。
訂正+多少の追加をまじえまして、こう言う形にしてみました。
問題があれば、どんどん指摘お願いします。
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エピソード『吹利学校高等部学園祭2005 Never Forget Memories』
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登場人物
--------
関口聡(せきぐち・さとし)
:周囲安定化能力者。現在片目は常に意思と感情を色として見ている。
中村蓉子(なかむら・ようこ)
:SS部所属。秋風秦弥の彼女。関口とは同じクラス。
中里嘉穂(なかざと・かほ)
:姐御肌の同人誌作成者。上二人と同じクラス
吉野歩(よしの・あゆみ)
:メイド服作成係。中里嘉穂とは中学からの付き合い。
御剣劉斗(みつるぎ・りゅうと)
:一年生の喧嘩人。実は親がいなく一人暮らし。さぼり気味。
破壊神を卵にて封じる
--------------------
偽印度に行ってきた、と、彼は卵をゆでながら力説したという。
**
女子生徒A :「嘉穂ー、クッキー集まったけどどうしよう」
嘉穂 :「えっとね、種類別にそこの箱に入れて……そうね、ラッ
:プで上から巻いといて」
女子生徒A :「うわ、厳重」
嘉穂 :「つまみ食い厳禁(憮然)」
文化祭の前日。材料の仕込やら何やら忙しいとかで、特に女子の調理班は、
ばたばた走り回っている。
この手の作業を行うのは、普通は調理室。ただ、現在そこも他のクラスで満
杯で、特に冷蔵庫やオーブンは順番待ちであるらしい。ただ、そこらは流石に
抜かりなく、嘉穂は学校の門から歩いても3分の辺りに協力者を一名確保して
いた。冷蔵庫とオーブン(といっても電子オーブンレンジ)は、そこで使わせ
てもらうのだという。『というか、その人がいいって言ったから、喫茶店やろ
うって提案したんだ』と、後で嘉穂は笑って言ったものだ。
女子生徒B :「ねえねえ、そこの家にこれ持ってっていいの?」
嘉穂 :「うん……っと歩、一緒に行ってあげて」
その人、つまり嘉穂の従姉は、冷蔵庫等を一日使うことには賛成した。但し、
『一度に3人以上来たら、うち一杯になるから、ここ作業に使うのは駄目だよ』
とのことであった。
女子生徒C :「スコーンの種出来たよ」
嘉穂 :「あ、じゃ、一緒に持ってってもらって……歩、手ぇ空い
:てる?」
歩 :「うん、まだそれなら持てる」
男子生徒A :「中里ー、テーブルクロス、これだとちっちゃくねえ?」
嘉穂 :「え、ちょっと待って待ってっ」
教室のセッティングやら何やらで、男子のほうも走り回っている。
その、さなかに。
がらがらっと教室の後ろの引き戸を引き開ける音。
女子生徒D :「いたっ」
劉斗 :「……うわ、なんだこりゃ」
ある意味呑気な声を発した人物を見て、周囲全員が一旦停止した。ひたすら
に武闘派、何かあれば喧嘩の鍛えるのと、ただそれだけを主張しまくる一名は、
妙に呑気にあちこちを眺めている。しかも、道着の腰に妙にごつい形のモデル
ガンを突っ込んだ格好で。
劉斗 :「ああ……ぶんかさいだっけか?」
嘉穂 :「……そこな一名」
『開閉厳禁』の札を、既に外に貼っていた筈なのだが、それをきっっぱり無視
したらしい相手を、嘉穂は睨みつけた。
嘉穂 :「開けるなって書いてあったでしょ、そこ」
劉斗 :「知らねえよ」
嘉穂 :「ああ、学校来るのも忘れたついでに四文字熟語もまとめ
:て忘れたか、若年性健忘症末期症状者!」
聴き取るのが精一杯の、えらい勢いの舌鋒である。
何を、と言い掛けた相手を完全に圧倒して畳み込むように言葉を続ける。
嘉穂 :「明日は文化祭。夏休み以降、皆それで忙しくしてるの。
:最後まで出てこないでサボるならともかく、出てきた途端
:に負傷者作成して、仕事に支障を及ぼすとはどういう神経
:だ一体!」
傍らで、さっき『いたっ』と叫んだ女子生徒が恨めしげに手を上げる。
指先に、かなり大きな血豆が出来ている。
女子生徒D :「……開かない扉を急に開けるから……」
さて一般的に。
自分の意思でないところで、人が自分のせいで怪我をする、というのは、や
はり後ろめたいものである。
ついでに自分が男子で、相手が女子である場合、その度合いは増す…らしい。
もっとついでに、クラス中の女子と、ついでに男子が、「ひでーっ」と冷た
い目で見ている、というのは……確かにこう……分が悪い。それもこれまで文
化祭準備のみならず、学校自体をかなりサボっていた身としては、『来た途端
女の子に怪我させてるってあれなに?』みたいな目は……多少イタい。
言葉にすれば非常に長いが、しかし実際には一瞬の怯みを、しかし総責任者
は見逃すことが無かった。
嘉穂 :「というわけで御剣君。貴君には任務を与える」
劉斗 :「……俺が?!…ち、晩飯の買い物、遅れちまうなぁ」
嘉穂 :「晩御飯?……ほほーうそうやって逃げるヒマがあると思
:うたか、それほどあたしたちがヒマそうか」
劉斗 :「ん、いや、俺んちおやいねぇし」
嘉穂 :「それは重畳、じゃあ残って任務を果たす障害はない、と」
一瞬たりと動じる隙も無く、たんたんと畳み掛ける。
嘉穂 :「だいたい、今一名を即戦力から省いたのは貴君だ。当然
:その分任務に従事すべきだろうが」
『即戦力』に『任務に従事』。
微妙に劉斗向けの単語を織り交ぜながら。
嘉穂 :「というわけで、はいこれっ」
劉斗 :「え」
小さめの鍋と、大きなビニールの手提げ袋(中身そこそこ一杯)を押し付け
られて、劉斗が目を白黒させた。
嘉穂 :「っていかんな、男子誰か……あ、沢井君、これ持ってっ
:てやってくれる?」
沢井 :「いいけど、なんだこれ?」
嘉穂 :「卵。調理室のガスコンロのうちの2つがうちのクラスに
:割り当てられてるから、そこでゆで卵作ってきて」
はいこれお鍋、はいこれ割り箸、はいこれ塩、と、見事有無を言わさぬ勢い
で手渡される。
劉斗 :「……待てよ、何でこんな小さい鍋でやらなきゃなんねぇん
:だ?」
嘉穂 :「ガスコンロの割り当てが小さいのよ。大きい鍋使ったら
:他に迷惑でしょ。ええとね、水にはしっかり塩を入れて、
:自ら卵を入れて、ゆっくりお箸でかき回して。12.3分
:で固ゆでになるから、即水にとって殻を剥く。剥いたのは
:こっちに入れる!」
単に聞いているだけでも目がまわるほどの早口説明と共に、タッパーを取り
上げて、ほいっと卵の入ったビニール袋に入れる。
嘉穂 :「茹で上がったら即水に入れて、速やかに殻を剥くことね。
:青くなった卵ってキモチワルイから。あ、あとね、面倒だ
:からって卵を押し込まないでね。ころころ動かす余地がな
:いとまずいから」
劉斗 :「いやちょっとまて、何が何だかわかりゃしねぇっつーの」
嘉穂 :「……固ゆで卵の作り方、知ってるんでしょ?」
劉斗 :「当たり前だろ」
嘉穂 :「ならばこの作戦に於いて、貴君が知っておくことは他に
:無い」
恐らくは説明がどうこう以前に、まくし立てるような口調についていけなかっ
たのだろう相手を、嘉穂はきっと睨んで。
びしっと一言。
嘉穂 :「どうせ卵持たせたら、全部壊れるの目に見えてるから。
:それ、持ってくの手伝ってね、沢井君」
沢井 :「諒解……じゃ、行こうか」
何だかまだ、全く要領を得ていない顔の劉斗を半ば引っ張るように沢井が出
てゆき……何となく全員がほうっと息をついた。
男子生徒B :「……中里。あの鍋だと相当時間かかるんじゃねえ?」
嘉穂 :「うん。多分あの卵ゆでて殻剥いてってやるだけで、結構
:放課後近くまでかかるんじゃないかな」
女子生徒E :「いいの?……というか、彼にゆで卵なんて任せたら、卵
:が全部破裂しない?」
嘉穂 :「大丈夫。どうせあれの殆どは、卵サンドイッチに使う分
:だから」
あれ?と……基本的に女子生徒が首を傾げる。
蓉子 :「……あの、それなら別に、卵をずっと転がさなくても」
嘉穂 :「うん、あれは口実」
蓉子 :「え」
ざわめくように一同が、疑問符を口にのぼせたところで。
嘉穂 :「生徒会の会長から、ちょっと言われてね」
女子生徒C :「ええっ?!」
有能かつ厳格。弱小同好会やクラブに対しても改革の大鉈を振り下ろした、
と評判の会長が、一体何を言ったというのか。
嘉穂 :「御剣君の破壊活動を、出来るだけ抑えて頂けると有難い
:わ、ってことだった」
聡 :「……それで、小鍋」
ぽん、と、手を打った聡に、嘉穂はにっこりと笑った。
嘉穂 :「そう、それで小鍋」
小鍋には、一度にせいぜい6つしか卵は入らない。それをころころ箸でかき
混ぜろというなら、その前から離れるわけにもゆくまい。
13分かけて、卵の殻を剥いて。
男子生徒B :「……あ、そんで沢井なわけ?」
嘉穂 :「逃げるのに多少は躊躇するかなってね」
沢井健司。合気道を小学校の頃から習っているという。
嘉穂 :「てか、あれが下手にこっち来て、手伝うのあれやらせろ
:の俺の仕事何かだの言われるほうが迷惑よ。ついでに学校
:の大半が用意でばたばたしてる時に、訓練の鍛えろのって
:他のクラスで言われるのも迷惑」
そこまで言って、嘉穂はにやっと笑った。
嘉穂 :「古いSFにね、『超人』ってのがあるの。それこそトラッ
:ク一台くらい、かるーく持ち上げられる力の持ち主の話」
男子生徒C :「あ、俺それ知ってる」
ひょっと手を上げて。
男子生徒C :「最後は、確か、炭鉱の労働者として、落雷で死亡するん
:じゃなかったっけ」
嘉穂 :「それそれ」
きっ、と嘉穂は皆を見回した。
嘉穂 :「現在、各クラス、みんなばたばたしてるわ。そこに彼を
:下手に放てば、どっかで決闘騒ぎを起こす可能性もある。
:『超人』もその力を用いる場を封じれば大したことは無い。
:御剣君も同様。破壊神を封じる……御協力をお願いします」
ほぼ一同 :「はいっ」
……そういうところは、妙にノリが良かったりする。
嘉穂 :「じゃ、各自それぞれの仕事お願い。あたしは第一弾の卵
:が茹で上がるくらいで行ってみるから……あ、あと」
女子生徒D :「針もらったら突付いとくから。バンドエード、誰か持っ
:て無い?」
ばたばたばた。
皆が、また走り出す。
文化祭初日は、明日である。
時系列
------
2005年9月。文化祭前日。
解説
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打ち合わせの出来てない相手に、それでも仕事を与えることの困難さを思い
知ることが時折あります。
卵は速攻水につけましょう。青い食物はキモチワルイです。
*******************************************
という具合にしてみました。
どんなもんでしょ。
ではでは。
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