[KATARIBE 29291] Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005   Never Forget Memories 』

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Date: Thu, 29 Sep 2005 21:49:03 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29291] Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005   Never Forget Memories 』
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2005年09月29日:21時49分02秒
Sub:Re:  [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005  Never Forget Memories』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
何だかとてもひどいめにあっている(宮沢賢治風)、劉斗君です。
がんがん台詞直し、お願いします>hiroさん
(というか、この台詞いわねーよとかあったら削って欲しいし、
ここではこう言うよ、ってのがあればどんどん追加もお願いしたいです)

 とりあえず、たたき台状態で、お送りします。
 早口に負けている劉斗君です。

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エピソード『吹利学校高等部学園祭2005 Never Forget Memories』
============================================================= 
登場人物
--------
  関口聡(せきぐち・さとし)
   :周囲安定化能力者。現在片目は常に意思と感情を色として見ている。
  中村蓉子(なかむら・ようこ)
   :SS部所属。秋風秦弥の彼女。関口とは同じクラス。
  中里嘉穂(なかざと・かほ)
   :姐御肌の同人誌作成者。上二人と同じクラス 
  吉野歩(よしの・あゆみ)
   :メイド服作成係。中里嘉穂とは中学からの付き合い。
  御剣劉斗(みつるぎ・りゅうと)
   :一年生の喧嘩人。実は親がいなく一人暮らし。さぼり気味。

破壊神を卵にて封じる
--------------------

 偽印度に行ってきた、と、彼は卵をゆでながら力説したという。

         **

 女子生徒A  :「嘉穂ー、クッキー集まったけどどうしよう」
 嘉穂     :「えっとね、種類別にそこの箱に入れて……そうね、ラッ
        :プで上から巻いといて」
 女子生徒A  :「うわ、厳重」
 嘉穂     :「つまみ食い厳禁(憮然)」

 文化祭の前日。材料の仕込やら何やら忙しいとかで、特に女子の調理班は、
ばたばた走り回っている。
 この手の作業を行うのは、普通は調理室。ただ、現在そこも他のクラスで満
杯で、特に冷蔵庫やオーブンは順番待ちであるらしい。ただ、そこらは流石に
抜かりなく、嘉穂は学校の門から歩いても3分の辺りに協力者を一名確保して
いた。冷蔵庫とオーブン(といっても電子オーブンレンジ)は、そこで使わせ
てもらうのだという。『というか、その人がいいって言ったから、喫茶店やろ
うって提案したんだ』と、後で嘉穂は笑って言ったものだ。

 女子生徒B  :「ねえねえ、そこの家にこれ持ってっていいの?」
 嘉穂     :「うん……っと歩、一緒に行ってあげて」

 その人、つまり嘉穂の従姉は、冷蔵庫等を一日使うことには賛成した。但し、
『一度に3人以上来たら、うち一杯になるから、ここ作業に使うのは駄目だよ』
とのことであった。

 女子生徒C  :「スコーンの種出来たよ」
 嘉穂     :「あ、じゃ、一緒に持ってってもらって……歩、手ぇ空い
        :てる?」
 歩      :「うん、まだそれなら持てる」
 男子生徒A  :「中里ー、テーブルクロス、これだとちっちゃくねえ?」
 嘉穂     :「え、ちょっと待って待ってっ」

 教室のセッティングやら何やらで、男子のほうも走り回っている。

 その、さなかに。
 がらがらっと教室の後ろの引き戸を引き開ける音。

 女子生徒D  :「いたっ」
 劉斗     :「……うわ、何だこれ」

 ある意味呑気な声を発した人物を見て、周囲全員が一旦停止した。ひたすら
に武闘派、何かあれば喧嘩の鍛えるのと、ただそれだけを主張しまくる一名は、
妙に呑気にあちこちを眺めている。

 劉斗     :「ああ……文化祭だっけ?」
 嘉穂     :「……そこな一名」

『開閉厳禁』の札を、既に外に貼っていた筈なのだが、それをきっっぱり無視
したらしい相手を、嘉穂は睨みつけた。

 嘉穂     :「開けるなって書いてあったでしょ、そこ」
 劉斗     :「知らねえよ」
 嘉穂     :「ああ、学校来るのも忘れたついでに四文字熟語もまとめ
        :て忘れたか、若年性健忘症末期症状者!」

 聴き取るのが精一杯の、えらい鋭い舌鋒である。
 何を、と言い掛けた相手を完全に圧倒して畳み込むように言葉を続ける。

 嘉穂     :「明日は文化祭。夏休み以降、皆それで忙しくしてるの。
        :最後まで出てこないでサボるならともかく、出てきた途端
        :に負傷者作成して、仕事に支障を及ぼすとはどういう神経
        :だ一体!」

 傍らで、さっき『いたっ』と叫んだ女子生徒が恨めしげに手を上げる。
 指先に、かなり大きな血豆が出来ている。

 女子生徒D  :「……開かない扉を急に開けるから……」

 さて一般的に。
 自分の意思でないところで、人が自分のせいで怪我をする、というのは、や
はり後ろめたいものである。
 ついでに自分が男子で、相手が女子である場合、その度合いは増す…らしい。
 もっとついでに、クラス中の女子と、ついでに男子が、「ひでーっ」と冷た
い目で見ている、というのは……確かにこう……分が悪い。それもこれまで文
化祭準備のみならず、学校自体をかなりサボっていた身としては、『来た途端
女の子に怪我させてるってあれなに?』みたいな目は……多少イタい。
 言葉にすれば非常に長いが、しかし実際には一瞬の怯みを、しかし総責任者
は見逃すことが無かった。

 嘉穂     :「というわけで御剣君。貴君には任務を与える」
 劉斗     :「……俺が?!」
 嘉穂     :「一名を即戦力から省いたのは貴君だ。当然その分任務に
        :従事すべきだろうが」
 
『即戦力』に『任務に従事』。
 微妙に劉斗向けの単語を織り交ぜながら。

 嘉穂     :「というわけで、はいこれっ」
 劉斗     :「え」

 小さめの鍋と、大きなビニールの手提げ袋(中身そこそこ一杯)を押し付け
られて、劉斗が目を白黒させた。

 嘉穂     :「っていかんな、男子誰か……あ、沢井君、これ持ってっ
        :てやってくれる?」
 沢井     :「いいけど、なんだこれ?」
 嘉穂     :「卵。調理室のガスコンロのうちの2つがうちのクラスに
        :割り当てられてるから、そこでゆで卵作ってきて」

 はいこれお鍋、はいこれ割り箸、はいこれ塩、と、見事有無を言わさぬ勢い
で手渡される。

 劉斗     :「……待てよ、何でこんな小さい鍋で」
 嘉穂     :「ガスコンロの割り当てが小さいのよ。大きい鍋使ったら
        :他に迷惑でしょ。ええとね、水にはしっかり塩を入れて、
        :自ら卵を入れて、ゆっくりお箸でかき回して。12.3分
        :で固ゆでになるから、即水にとって殻を剥く。剥いたのは
        :こっちに入れる!」

 単に聞いているだけでも目がまわるほどの早口説明と共に、タッパーを取り
上げて、ほいっと卵の入ったビニール袋に入れる。

 嘉穂     :「茹で上がったら即水に入れて、速やかに殻を剥くことね。
        :青くなった卵ってキモチワルイから。あ、あとね、面倒だ
        :からって卵を押し込まないでね。ころころ動かす余地がな
        :いとまずいから」
 劉斗     :「いやちょっとまて、何が何だか」
 嘉穂     :「この作戦に於いて、貴君が知っておくことは他に無い」

 説明がどうこう以前に、恐らくまくし立てるような口調についていけなかっ
たのだろう相手を、嘉穂はきっと睨んで。
 びしっと一言。

 嘉穂     :「どうせ卵持たせたら、全部壊れるの目に見えてるから。
        :それ、持ってくの手伝ってね、沢井君」
 沢井     :「諒解……じゃ、行こうか」

 何だかまだ、全く要領を得ていない顔の劉斗を半ば引っ張るように沢井が出
てゆき……何となく全員がほうっと息をついた。

 男子生徒B  :「……中里。あの鍋だと相当時間かかるんじゃねえ?」
 嘉穂     :「うん。多分あの卵ゆでて殻剥いてってやるだけで、結構
        :放課後近くまでかかるんじゃないかな」
 女子生徒E  :「いいの?……というか、彼にゆで卵なんて任せたら、卵
        :が全部破裂しない?」
 嘉穂     :「大丈夫。どうせあれの殆どは、卵サンドイッチに使う分
        :だから」

 あれ?と……基本的に女子生徒が首を傾げる。

 蓉子     :「……あの、それなら別に、卵をずっと転がさなくても」
 嘉穂     :「うん、あれは口実」
 蓉子     :「え」

 ざわめくように一同が、疑問符を口にのぼせたところで。

 嘉穂     :「生徒会の会長から、ちょっと言われてね」
 女子生徒C  :「ええっ?!」

 有能かつ厳格。弱小同好会やクラブに対しても改革の大鉈を振り下ろした、
と評判の会長が、一体何を言ったというのか。

 嘉穂     :「御剣君の破壊活動を、出来るだけ抑えて頂けると有難い
        :わ、ってことだった」
 聡      :「……それで、小鍋」
 
 ぽん、と、手を打った聡に、嘉穂はにっこりと笑った。

 嘉穂     :「そう、それで小鍋」

 小鍋には、一度にせいぜい6つしか卵は入らない。それをころころ箸でかき
混ぜろというなら、その前から離れるわけにもゆくまい。
 13分かけて、卵の殻を剥いて。
 
 男子生徒B  :「……あ、そんで沢井なわけ?」
 嘉穂     :「逃げるのに多少は躊躇するかなってね」

 沢井健司。合気道を小学校の頃から習っているという。

 嘉穂     :「てか、あれが下手にこっち来て、手伝うのあれやらせろ
        :の俺の仕事何かだの言われるほうが迷惑よ。ついでに学校
        :の大半が用意でばたばたしてる時に、訓練の鍛えろのって
        :他のクラスで言われるのも迷惑」

 そこまで言って、嘉穂はにやっと笑った。

 嘉穂     :「古いSFにね、『超人』ってのがあるの。それこそトラッ
        :ク一台くらい、かるーく持ち上げられる力の持ち主の話」
 男子生徒C  :「あ、俺それ知ってる」

 ひょっと手を上げて。

 男子生徒C  :「最後は、確か、炭鉱の労働者として、落雷で死亡するん
        :じゃなかったっけ」
 嘉穂     :「それそれ」

 きっ、と嘉穂は皆を見回した。

 嘉穂     :「現在、各クラス、みんなばたばたしてるわ。そこに彼を
        :下手に放てば、どっかで決闘騒ぎを起こす可能性もある。
        :破壊神を出来るだけ封じる。御協力をお願いします」
 ほぼ一同   :「はいっ」

 
 ……そういうところは、妙にノリが良かったりする。

 嘉穂     :「じゃ、各自それぞれの仕事お願い。あたしは第一弾の卵
        :が茹で上がるくらいで行ってみるから……あ、あと」
 女子生徒D  :「針もらったら突付いとくから。バンドエード、誰か持っ
        :て無い?」


 ばたばたばた。
 皆が、また走り出す。

 文化祭初日は、明日である。


時系列
------
 2005年9月。文化祭前日。

解説
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 打ち合わせの出来てない相手に、それでも仕事を与えることの困難さを思い
知ることが時折あります。
 卵は速攻水につけましょう。青い食物はキモチワルイです。
*******************************************

 てなとこです。
 ではでは。
 


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