[KATARIBE 29289] Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005   Never Forget Memories 』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Wed, 28 Sep 2005 23:50:48 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29289] Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005   Never Forget Memories 』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200509281450.XAA39188@www.mahoroba.ne.jp>
In-Reply-To: <200509251700.CAA97810@www.mahoroba.ne.jp>
References: <200509251700.CAA97810@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29289

Web:	http://kataribe.com/HA/06/P/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29200/29289.html

2005年09月28日:23時50分48秒
Sub:Re:  [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005  Never Forget Memories』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
文化祭前の風景を書いてみました。
……こういう、何つか、一瞬の風景って書くの好きなんです。

*****************************************
エピソード『吹利学校高等部学園祭2005 Never Forget Memories』
============================================================= 
登場人物
--------
  関口聡(せきぐち・さとし)
   :周囲安定化能力者。現在片目は常に意思と感情を色として見ている。
  桐村駿(きりむら・しゅん)
   :野球部の主力投手。クラス一、もとい学校一のちびっこ。
  中里嘉穂(なかざと・かほ)
   :姐御肌の同人誌作成者。上二人と同じクラス 
  吉野歩(よしの・あゆみ)
   :メイド服作成係。中里嘉穂とは中学からの付き合い。

スカートと女装
--------------

 スカートを履いたことの無い一般男子生徒にとって、膝下丈のスカート(そ
れも生地はしっかりめ)の恐怖の一つといえば。

 駿      :「うわっ」
 嘉穂     :「ほーらやったっ(ばたばた)」

 スカートを気にせずに方向転換した際の、スカートの危なさであるかもしれ
ない。

 駿      :「うっわ、威力あるー」
 嘉穂     :「……感心してる場合かっ(べしっ)」
 駿      :「いって……カホちゃん乱暴だよっ」
 嘉穂     :「それでお客さんの紅茶とか引っくり返したら、笑えない
        :でしょうよっ」
 
 それはまあ、確かにそうではあるのだが。

 聡      :「……女子とかどうやって、あの狭い所をこのスカートで
        :無事に歩いてんの?(小声)」
 蓉子     :「……慣れ、かなあ……(小声)」

 普通に歩く分には大して困らない。ただ、注文が重複した場合や急ぎの注文
の場合、どうしても方向転換は急になり……スカートがあたりをなぎ倒す確率
は高くなる。

 嘉穂     :「動きにくいなら、一旦スカートをつまむなりなんなりし
        :てよ……いやそう握り締めるんじゃなくって!」
 駿      :「わかんないよっ」

 いや、そら、判るほうが変かもしれない。

 嘉穂     :「ええっと……わかった。男子達。捌き切れないと思った
        :ら、速攻近くの女子に言う。んで変わってもらう。お客さ
        :んも、基本は女子のメイドのほーが好きな筈だ!」

 ……そこで、『基本』と入れる辺り……凶悪である。

 嘉穂     :「じゃ……とりあえず男子、ちょっとそっちで歩き方練習」
 男子生徒達  :「げーー」
 嘉穂     :「そんで、関口君」
 聡      :「へ?」
 嘉穂     :「スカート、裾がほつれてる」
 聡      :「……あれ?」
 嘉穂     :「そっちで直してもらっといて。以上それぞれに解散!」

 ええと、と振り返った聡の視線の先で、メイド服作成係こと吉野歩が手を伸
ばしている。

 歩      :「えっと……服脱いで貰ったがいいよね、その裾縫うの」

           **

 一旦着替えて、メイド服を渡す。
 その間に針と糸の用意を済ませた相手は、教室の隅でそれを受け取った。
 教室の向こう半分では、嘉穂がメイド軍団を支持して、机の置き方を変えて
いる。歩き方教室の始まり、というところか。

 歩      :「……これ、どっかにひっかけた?」
 聡      :「あ、かも……」
 歩      :「裏だから大丈夫だとは思うけど……ちょっと時間かかる
        :けど、直しちゃうよ。いい?」
 聡      :「うん、勿論」

 別に急ぐものでもないし、別に用事も無い。受け取ってさっさと縫い始めた
歩の手元を、聡が何となく見ていると、

 歩      :「関口君は……平気なんだね」
 聡      :「え?」
 歩      :「もっと嫌がるかと思ってた」
 
 話しながらも、手は一切止まらない。鋏を取り上げてどうやら残り布らしき
ものを切り取り、ざっと当てる。

 聡      :「……別段喜んでもないけどね」
 歩      :「前に女装とかしたことある?」
 聡      :「ないよ(苦笑)」

 やりそうに見えるのかなあ、と、肩をすくめた聡に、歩はちがうちがう、と、
針を持った手を振った。

 歩      :「こういうのって、こちらが自信持ってると、案外相手は
        :笑ったりからかったりしないんだよね。だって実際、歌舞
        :伎の女役を笑う人いないでしょ?」
 聡      :「うん、でも……」
 歩      :「無論、あの人達はプロだし、比べることじゃないけどさ」

 やはりちくちく縫いながら、

 歩      :「案外自信持って堂々としてるとからかわれないって……
        :やったことある人なら分かると思うんだけど、やったこと
        :なさそうな関口君が堂々としてるから」
 聡      :「……そういうことかあ」

 と、言うからには。

 聡      :「もしかして吉野さん、やったことあるの?」
 歩      :「これでも中学の頃は、演劇部」
 聡      :「え?」
 歩      :「……っても、背景と衣装係ね」

 こういうの得意だから、と、ちょっと布を持ち上げて見せた。

 歩      :「嘉穂ってね、そこら辺分かってるから……ああやってま
        :じに特訓させるのよね」
 聡      :「……吉野さん、中里さんと知り合いなんだ?」
 歩      :「中学一緒(笑)」
 
 ああなるほど、と、聡は頷く。

 歩      :「中学の頃、嘉穂って一時期苛められててね」
 聡      :「え?!」
 歩      :「そんな度胸がある奴が居たのかって、思ったでしょ今」
 聡      :「ごめん、思った」
 歩      :「変わってるからね、嘉穂って」

 それについては、深く頷いてしまった聡である。

 歩      :「それでさ、一度、椅子に透明なボンドをべったり塗られ
        :て、嘉穂、気がつかないで座っちゃったことがあるの」

 怪我も何もなかったそうだが。

 歩      :「制服の夏スカートの後ろに、ボンドのあとがべったりよ」
 聡      :「……酷いことするね」
 歩      :「制服って高いじゃない。それも夏服って着る期間短いし、
        :丁度身長が伸びるときだしってんで、嘉穂のお母さん、ス
        :カートを買わなかったらしいの」
 聡      :「それって……」

 洗っても取れないスカートの汚れを、毎日つけたまま学校に来る。
 それは……嫌だろう。

 歩      :「でも、嘉穂は堂々とその服着ててね。理由を知らない子
        :が、遠慮しいしい『糸がついてるよ』って言ったら『ああ
        :それ糸じゃないの、莫迦がボンドつけやがったんだよ』、
        :って、その度がっつり説明してたよ」
 聡      :「…………ああ、それは中里さんだ」

 思わず納得した聡を、歩は横目で見た。

 歩      :「その時に嘉穂は言ってたよ。こちらが堂々としてると、
        :ボンドの汚れが糸に見えて、指摘するのも気が引けるんだ
        :ね、って」
 聡      :「ああ」

 堂々と、汚されたスカートの裾を捌いて、歩いてゆく。
 そういう嘉穂ならば。

 聡      :「それで、特訓させるんだね」
 歩      :「そそ(笑)」

 女装メイドの姿を、恥ずかしいと自分で思ってしまうと、多分相手も『変』
と見なして笑うだろう。でも、これは役目だ、と、堂々と振舞うなら。

 歩      :「案外、相手が呑まれちゃうんだよね」
 聡      :「それは、よくわかるよ」

 笑いを取るためではなく、一つの『役目』として。
 
 聡      :「……中里さん、だから皆がそれでもついてゆくのかな」
 歩      :「ん?」
 聡      :「葛西君の時も……彼女が来るならって」
 歩      :「うん。元いじめられっこだからね」

 ぷち、と、糸を切って。

 歩      :「これ以上はやっちゃいかんってのは、何となく分かるし、
        :それ以上はほんとにやっちゃいかんのだろうって言ってた」
 聡      :「……ふうん」

 どんがらがっしゃん、と、誰かが転んだような音と、うわっという声。

 歩      :「はい、でけた」
 聡      :「あ、ありがとう」
 歩      :「じゃ、関口君も特訓頑張って」
 聡      :「…………頑張りたくないけど頑張る」
 歩      :「頑張っといたほうがいいよ?」
 聡      :「?」

 首を傾げると、歩は、なんでもない、と苦笑した。

 駿      :「関ちゃん、早くこいよーっ」
 聡      :「へ?」
 男子生徒A  :「共に犠牲者になろうっ!」
 聡      :「あー……ちょっとまった。着替えてくるから」
 嘉穂     :「じゃ、着替えてる間に、次、誰?」


 道理で……と、頷きながら、聡はメイド服を手に取る。
 着替えようと席を立ちながら、もう一度嘉穂達のほうを見る。

 
 確かに彼等を包む空気は。
 柔らかな秋の陽だまりのような光を帯びている…………


時系列
------
 2005年9月。文化祭前

解説
----
 文化祭のほんの一瞬の風景。
 実際……知り合いに女装の名手が居ますが、この人が余興で女性になると、
皆一瞬黙ります。並みの女性よりよほど綺麗で。
 メイド服係、吉野歩に昇格です(笑)。

****************************************:

 てなもんです。
 ではでは。
 


 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29200/29289.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage