[KATARIBE 29260] [HA06N] 小説『気まずい朝』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Mon, 26 Sep 2005 00:46:00 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29260] [HA06N] 小説『気まずい朝』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200509251546.AAA95050@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29260

Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29200/29260.html

2005年09月26日:00時46分00秒
Sub:[HA06N]小説『気まずい朝』:
From:久志


 久志です。
『後悔後を絶たず』の先輩バージョン。
先輩の難儀っぷり炸裂。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『気まずい朝』
==================

登場キャラクター 
---------------- 
 相羽尚吾(あいば・しょうご) 
     :吹利県警刑事課巡査。ヘンな先輩。ヤク避け相羽。
     :http://kataribe.com/HA/06/C/0483/
 軽部真帆(かるべ・まほ) 
     :自称小市民。多少毒舌。ネズミ騒動以来相羽宅に移住。
     :http://kataribe.com/HA/06/C/0480/

朝の食卓
--------

「お弁当は……間に合わなかった、ごめんなさいっ」

 それっきり逃げるよう部屋へ駆け込む真帆を見送って。
 テーブルの上には、慌てて作ったというわりにはきちんとした食事が並んで
いる。
「……参ったね」

 なんというか、バツが悪い。
 それにしても、こんな青臭い気まずさを感じるのは生まれて初めてのような
気がする。
 ため息をついて味噌汁をすする。
 これ以上は何を言っても無駄そうだ、下手に捕まえて話しても余計に赤面し
て泣くだろう。暫く落ち着く時間を置いたほうがいい。

 閉じこもったままの部屋を見て。

「んじゃ、いってくる」

 もちろんドアの向こうから返事はない。


逃げる視線
----------

 帰ったら何を言うべきか。
 どういう態度をすべきか。
 対して変えられるわけでもないんだが。

「おかえりなさい」

 何事もなかったかのように……振舞ってるつもりなんだろうけどねぇ。
 お前さん、さっぱり隠せてないから、それ。

 無言のまま、ご飯をよそって。食事の間も一度も視線を合わせずに。

「…………」

 一瞬でもこちらの視線を感じたらすぐさま目を伏せる。
 恥ずかしいんだろうねえ。まあ、無理もないんだろうけど。

 それにしても。

「……お茶、入れますか」

 箸を置く音を聞いてすぐに、掠れるような蚊の鳴くような声でつぶやく。

「…………気にしてる?」

 瞬時に顔が真っ赤に染まる。
 まあ、当然の反応だろうけど。

「ちがう、相羽さんには感謝してる、ほんとにっ!」
 慌てて手を振って全身で否定する。
 昨日の出来事には自分に全く非がないのは確かだ。だが、後になって冷静に
考えてみると、自分の行動もまずかった。

 たとえ猫でも、真帆は真帆で。
 それを抱えて寝るというのは、普通に考えたらまずいのは確かで。

「申し訳無いんですっ」
「いや、そういう問題じゃないしょ、お前さんの場合」

 ぽつん、と。真帆の目から涙が落ちる。
 どうしたものか。
 知らず、伸びた手がくしゃくしゃと頭を撫でる。

「悪かった」
「わ、悪くないっ」
 ぽろぽろと、次から次へと涙が零れ落ちる。
「お世話になったのに、全部お世話になったのに」
 手首で目を押さえたまま。
「……迷惑ばっかで、ごめんなさいっ」
「いや、まあ、それとは別だし」
「ほんとに、ごめんなさいっ」

 本当にどうしたものか。
 いつぞやの自分ならば。こんな時、もっと気が利く行動が取れていたはずな
んだけろうけどねえ。

「ごめんなさいっ」

 言い終わらないうちに、両手を背中にまわして引き寄せる。

「謝らなくていいから」
「お礼、言いたかったのに……っ」
 ぎゅっと服を握り締める手。
「まあ、とにかくさあ」
 何度も、頭を撫でながら。
「戻ってよかった」

 それは本心からそう言って。

「捨て猫に、なるか、って、おもったし」
「捨てないっていったっしょ」

 どうして、そこまで自分に自信が持てないのか。
 どんだけ言えばこいつは理解するのか。

「だって、猫、だったしっ」
「猫一匹くらい、なんとかできるって言わなかった?」
「そうだけどっ」

 それか……やはり自信を持たせるものが自分に足りないせいなのか。

「……役に立たない、から、猫なんて」
「役に立つ立たないじゃなくて、お前が要るっていわなかった?」

 自分がどんだけ悪辣で何をやってきたか、こいつは知ってる。

「……猫でも?」
「猫でもなんでも」

 ふと、小さく真帆が笑った。

「……猫のまんまのほうが、良かった、かな」
「なんで?」

 人としてより。
 猫としているほうが信用できるということなのか。

 必要だと言って。
 ここに居て欲しいといって。
 惚れてるといって。

 どうしてここまで伝わらないのか。

 頭を撫でていた手をそのまま後ろ頭へと回し、背中に回した手を離して、涙
で濡れた頬をゆっくりと指で拭う。

 そのまま、頬に唇を寄せる。
 一瞬、びくっと身体が震えるのが伝わった。

 無理ないか。
 思わず苦笑しそうになり、そのまま離れて抱きしめる。
 
 こうして腕の中に居るのに。
 真帆が近くに感じられないのは、何故なのか……


時系列 
------ 
 2005年9月初め。『後悔後を絶たず』の先輩バージョン。
解説 
----
 真帆さんとは反対方向に難儀な先輩。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。

 とっととプロポーヅまで話を終わらせたい、、、、




 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29200/29260.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage