[KATARIBE 29238] Re: [HA06P] エピソード『無明の天使:鳥籠』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Fri, 23 Sep 2005 19:32:54 +0900 (JST)
From: Saw <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29238] Re: [HA06P] エピソード『無明の天使:鳥籠』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200509231032.TAA60965@www.mahoroba.ne.jp>
In-Reply-To: <200509221325.WAA24334@www.mahoroba.ne.jp>
References: <200509221325.WAA24334@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29238

Web:	http://kataribe.com/HA/06/P/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29200/29238.html

2005年09月23日:19時32分54秒
Sub:Re:  [HA06P] エピソード『無明の天使:鳥籠』:
From:Saw


Sawです。無明の天使ちょっと続けます。

**********************************************************************
エピソード『無明の天使:あげは』
================================
あげは
------

 達大     :「目標が最初現れたのがこのビル。それからこの赤い印の
        :場所に最長で三日以内というペースで出現している。ポイ
        :ントを見るに毎夜少しずつ北西方向に移動していることが
        :わかります。こうして、平行線を引くとわかりますがそう
        :大きな移動はしていませんね。そして最後の目撃証言があ
        :ったのがここ。つまり、順当に行けば今晩夜半以降、この
        :円の中のどこかに目標は現れる」

 机の上に広げた吹利市近郊の地図に半径5cmほどの円を桜木は描いた。
 喫茶あげは。店の扉には本日休業の札が下げられており、だけれどその窓か
らはオレンジ色の光が煌々と漏れている。カウンターでは、自分のためのつま
みを作りながら仏頂面の店主が無音の野球中継を見ている。
 平時、このくらいの時間になるとあたかも飲み屋のようになり、酒に酔った
常連達により賑わうこの店だが、今晩に限り皆素面である。無駄話に興じる者
もいない。ただ一人、桜木達大その人だけが淡々とこれから行われる事につい
て説明を続ける。
 店内にいる者達はそれぞれ手帳を広げたりノートパソコンを叩いたり呪具や
武器の最終的なチェックをしていたりと思い思いの姿勢。しかし桜木が話して
いる間だけは揃って彼の方に意識を集中する。
 そして桜木は店の中央に置かれたテーブルに両手をつき、身を乗り出し気味
に言った。

 達大     :「目標──かの天使憑きは今晩限りで止めなければならな
        :い。皆さんにはその為の駒になって頂きます」

 今この場所は喫茶店でも飲み屋でもない。天使憑きとの戦いに備える前哨基
地なのだった。



黒い翼、舞う
------------

 葉の大きく広がった亜熱帯の木々が並ぶ深夜の公園には、津海希の他にどん
な生き物の影もない。じっとりとした空気はケープに覆われた肌にねっとりと
まとわりつき、いくら安全のためとは言えこんな時期にこんな物を持たせた前
野を津海希は少し怨んだ。
 植物も空気も真夏がすぐそこまで来ていることを盛んに主張していて、全て
が終わったら海に行きたい、と津海希に思わせた。腰に下げた懐中時計を開く
と短針が11時を少し過ぎたところ。右手から下げた鳥籠がこれから来るかもし
れない相手を待ち受けているように見えて、津海希は気を引き締め直す。
 ケープの内側のポケットに仕込んだ携帯電話が唐突に震動する。津海希はは
イヤホンマイクを左耳に付けて通話ボタンを押す。

 達大     :「津海希さん、配置にはついてますね」

 津海希はマイクを人差し指で一回叩く。

 達大     :「先程も説明しましたけどすぐ近くに煌さんと煖さんもい
        :ます。万が一そちらに目標が現れても迂闊に手を出さない
        :ように。人払いをしてその鳥籠に閉じこめるのがあなたの
        :お仕事です。わかってますね」

 津海希は頷きながらもう一度マイクを叩く。

 達大     :「それでは、健闘を祈ります。他の皆さんにも連絡入れな
        :いとならないんで切ります。いやあ、なんだかドキドキし
        :ますね。凄く偉くなったみたいだ」

 津海希は通話を切る。
 桜木のおどけたような声で津海希の肩の力はすっかり抜ける。みんないるの
だから大丈夫──津海希は月を見上げてその時がくるのを待った。

 それから五分と立たず、巨大な黒い翼を持つ人の姿が月に映りこんだ。

$$



 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29200/29238.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage