Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage
Date: Sat, 17 Sep 2005 22:24:13 +0900 (JST)
From: いー・あーる <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29195] Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005 Never Forget Memories 』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200509171324.WAA92803@www.mahoroba.ne.jp>
In-Reply-To: <200509161251.VAA43583@www.mahoroba.ne.jp>
References: <200509161251.VAA43583@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29195
Web: http://kataribe.com/HA/06/P/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29100/29195.html
2005年09月17日:22時24分13秒
Sub:Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005 Never Forget Memories』:
From:いー・あーる
ども、女装メイド喫茶担当いー・あーるです<担当じゃないっつの(汗)
とりあえず、次の話、書いてみます。
宣伝活動は大事だ、うん。
あ、だぶるたくみーずをお借りしております。
台詞に問題あれば、お願いします>ひさしゃん、ねこやさん。
***********************************
エピソード『吹利学校高等部学園祭2005 Never Forget Memories』
=============================================================
登場人物
--------
関口聡(せきぐち・さとし)
:周囲安定化能力者。現在片目は常に意思と感情を色として見ている。
中村蓉子(なかむら・ようこ)
:SS部所属。秋風秦弥の彼女。関口とは同じクラス。
中里嘉穂(なかざと・かほ)
:姐御肌の同人誌作成者。上二人と同じクラス
蒼雅巧(そうが・たくみ)
:霊獣使いの家の一員。高校二年生。非常に真面目。
桃実匠(ももざね・たくみ)
:桃実一刀流小太刀術の伝承者。ギャップは激しい(?)。
事前の宣伝に邁進せよ
--------------------
事前の営業が必要なのだ、と、中里嘉穂は力説した。
生徒A :「そういうのって、違反にならない?」
嘉穂 :「ならないようにやるの」
クラスは、主に裏方で調理をする組と、喫茶店の内装を行う組、そしてメイ
ド服を着込む組に分かれている。男子から選抜された4名を含むメイド組を前
に、嘉穂は半券のようなものを幾つか広げた。
嘉穂 :「てか、どのクラスでもやってるけどさ、割引券を先に渡
:しとくの。来るかどうかは判らないけど、少なくとも宣伝
:にはなるでしょ」
メイドA :「例えばクラブの子とかに?」
嘉穂 :「そうそう」
メイドB :「そんなに割引券出しちゃって大丈夫?」
まあ、元々薄利多売、人件費は無料というのが文化祭なわけだが。
嘉穂 :「大丈夫。割引した値段で全員に売るから」
メイドA :「……どやってよ」
嘉穂 :「入り口から少し先で、当日割引券渡すし」
聡 :「……パン屋の一ダース」
ぼそ、と、呟いた積りが、しっかり嘉穂に聞かれたらしい。
嘉穂 :「上手いこと言うわ関口君」
メイドC :「何だそれ」
嘉穂 :「パン屋では、一ダースと言って13個のパンを売ってた
:ことがあるらしいのね。お得に見えるけど」
メイドD :「ああ、実際は重さは、12個の時と同じ?」
嘉穂 :「正解〜」
成程、と、本筋とかなり違うところでメイド軍団(?)は深々と頷いた。
嘉穂 :「とにかくね、幾ら撒いてきても大丈夫だから。しっかり
:宣伝してね」
うむ、と、腕を組んで頷くと、嘉穂は……特に男子達がげっと悲鳴をあげる
条件を付け加えた。
嘉穂 :「但し、全員メイド服着用のこと。しっかり宣伝してよ」
メイドE :「……俺等もっ?!」
嘉穂 :「当然よ。特に男子達は絶対」
メイドE :「げーーっ」
嘉穂 :「注意されたらこの服装でウェイトレスしないといけない
:から、練習中って誤魔化すこと」
蓉子 :「……それで誤魔化せる?」
嘉穂 :「大丈夫。そう先生にも言っといたから」
どうしてそういうことを、先生水際阻止してくれないんだ……と。
メイド軍団全員が思ったことだろうが。
嘉穂 :「一応服は揃ってる筈だし。足りないものがあったら即衣
:装係に言って。どっかほつれたりした時も同様」
さあいって来て、と、やられた日には全員異議の申し立てようがなかったり
する。
或る意味……強烈な人徳なのかもしれない。
**
中村蓉子は、自分の部員に渡すという。
蓉子 :「関口君は……」
聡 :「うーん」
ワンピースなぞ、まさかに着たことがない。後ろのファスナーを上げてホッ
クを止めるだけでも一苦労である。貧乏くじを引いた男子達それぞれの着付け
を女子が手伝ってくれるのだが、聡の場合は女子で一番ちびっこ(聡は男子で
一番ちびっこである)、かつ前の席に座っているよしみで、蓉子が手伝ってく
れた。よって同時に教室を出て、さて心当たりに行こう……として。
聡 :「クラブ入ってないし、知り合いあんまり無いし」
蓉子 :「……さっき中里さんが言ってた剣道部は」
聡 :「そこまで身売りしたくないよ(苦笑)」
長めの髪の毛を素直に伸ばした蓉子と、男子にしたら少々長め、ショートカッ
トくらいの長さの髪の聡、双方メイド服なので、これがやたらに目立つ。通り
すがりの生徒達が目を丸くするのに、聡は苦笑した。
蓉子 :「……関口君、案外、平気なんだ」
ぽつん、と言われて聡は笑った。
聡 :「どっちにしろイロモノだから。下手に下向いて照れてる
:ほうがからかわれ続けるよ」
蓉子 :「そうかな」
聡 :「サンドイッチマンと思えばね」
そこまで言ったところで、SS部に向う渡り廊下に出る。じゃあね、と別れ
てから、聡は少々途方に暮れた。
聡 :(困った)
一番知った顔の多いのは図書室、図書委員である。どうせならそこに行って
割引券を撒いてこようか、と、考えたところで。
聡 :(あれ)
最初に見えたのは、茶金の大きな翼である。慌てて右目をつぶると、やはり
茶金の大きな鳥が、透明球の中に浮かぶように見える。
見慣れた鳥。秋芳。
その近くに必ず居るのは。
聡 :「あ、せんぱーい!」
ぶんぶんと手を振った先で、見慣れた顔が目を丸くするのがわかった。
**
運良く、というか何というか。
蒼雅巧の近くには、この前出会った桃実匠が一緒に居た。
巧 :「……さっ……聡殿?」
駈けてきた聡を見た途端、巧は目を丸くした。咄嗟にそれ以上の声が出ない。
聡 :「あ……うちのクラス、メイド喫茶やるってことで」
照れくさくはあるのだが、それ以上にこの先輩の驚きようがある意味ありが
たい。ここに来るまで、通りすがりの生徒達は『メイド服』に驚いても、それ
を来ているのが男子、というのには驚いていない……つまり、通りすがりには
男とわからなかったらしいのである。
聡 :「女の子だけじゃなくて、男子のちっこいのも女装しろっ
:て言われて」
巧 :「……メイド喫茶、で、ございますか……」
そう言って目を丸くしている巧の服装も、相当目立つ。誰が選んだのか、細
いサーベルを腰に佩いた軍服姿は、この姿勢の良い先輩に良く似合っている。
似合って、いるのだが。
聡 :(違和感無いのが違和感だなー)
……人のことが言えたものではない。
匠 :「おー。ヌシやん、よう似合うてるなー」
けたけたと、その横で笑う匠の服装は、これもまた珍妙である。いわゆると
ころのお侍さんルック、しかもカツラはベタな宴会グッズときている。珍妙と
言えば珍妙だが、似合っているのも事実である。
聡 :「仮装ですよ、仮装」
黒い、膝下丈のドレスに白い清楚なエプロン、頭には控えめなレースのヘッ
ドドレス、黙ってにこにこ笑っていればかなり完璧なメイド姿の聡と。
かっちりとした軍服を着こなして、目の前のメイドさん(?)に多少おろお
ろしている巧と。
侍姿にカツラつき、片手に持った大きめな扇子がハリセンに見える匠と。
……立ってるだけで相当なんてもんじゃなく目立っていたりするわけで。
聡 :「僕は、ほら、いわばイロモノですから。他にちゃんと可
:愛い子が一杯居ますから、文化祭の時には宜しくお願いし
:ます」
巧 :「……はぁ」
にこにこ笑った聡は、今度はしっかりと視線を匠に向けた。
聡 :「可愛い『女の子』も居るし」
女の子が好きやねん、と、連呼されたことを憶えていたらしい。
匠 :「そーそー、ひかりちゃんとかなぁ」
聡 :「ひかりちゃん……?」
そういう子がメイドに居たかどうか、ちょっと考えてみる。
が、無論憶えていない。聡が憶えているのは他の男子3人と、中村蓉子くら
いのものである。
そこで、そうですね、なんて言うと、匠が店に来た時に、ちょっと面倒かも
しれない……と、そこらは何となく判断して、聡は話題を変えた。
聡 :「えっと、そうそう、これ、割引券です」
ぐるりをフリルで縁取ったエプロンの、やっぱりフリルで縁取られたポケッ
トから割引券を取り出して二人に渡す。
巧 :「はい……ありがとうございます(汗」
聡 :「巧先輩、匠君、彼女さんと一緒にいらして下さいね」
二枚ずつ渡しておきますから、と言われて巧が絶句した。
巧 :「……なっ」
聡 :「ドレス一緒に買いにいったって、情報が入ってます」
全体に、自分の周りで人は呑気になる。よって男子には聞かせないような噂
話なども、鼻先で堂々と話されることがよくある。そういった噂話の一つを披
露すると巧は明らかにうろたえた。しかしながらうろたえつつも、
巧 :「そ、それは……いえ、事実ですが」
と、言うあたり……ほんっとに正直者である。
で、もう一人の噂の主は、というと。
匠 :「はっはっは。残念ながら、まだひかりちゃん、つれない
:ねん」
らしいといえばらしい反応では、ある。
聡 :「んーと」
二人の反応をにこにこ笑って見ていた聡は、そこで中里嘉穂の教えを思い出
した。きっちり押すのよ、頑張ってね、と、例の如く押しの強い口調で言って
のける。
ああいうきっぱりとした色合いの精神は、嫌いじゃない。故に、その教えに
従うことも別に苦では無い。
聡 :「どのような縁でも構いません。来店して頂けましたら、
:最後までお世話させて頂きます」
出来ればそこでスカートをつまんで、と言われたが……流石にそれは出来な
かった。
聡 :「皆々様、ご贔屓に宜しゅう」
『そこで小首をちょこんと傾げて、少し心もとなげにっ』……とは、嘉穂の教
授内容なわけなのだが。
はて、それがどの程度有効なのかは、聡には流石にわからない。
匠 :「最後まで? そりゃぁ、学校行事じゃマズい──」
べき、と、気持ちの良い音と一緒に、匠の声が途切れる。何事、と、目を丸
くした聡と巧の視線の先で、どうやら匠の女友達もしくはクラスメートが、右
の手をぶんぶんと振っていた。
匠 :「イタタ──なにも殴らんでもえぇやんか」
女生徒 :「なーにを廊下でセクハラかましてんのよ、女の子に」
匠 :「女の子ちゃうって」
女生徒 :「何いってんのよ」
匠 :「男の子やん、なあ」
全く信用していない目つきで、女生徒が聡を見る。途端にその目がまん丸に
なった。
女生徒 :「え、え、うわ、関口君と蒼雅先輩っ?!」
聡 :「はあ……」
女生徒 :「え、もしかしてそれ文化祭の服装?女装メイドって関口
:君のクラス?ええっうそっ」
ぴょこたこ跳ね回らんばかりの勢いの彼女は、『そんなことなら割引券頂戴、
うんと宣伝しとくからっ』と、聡のポケットの中の割引券を根こそぎ巻き上げ
てしまった。
女生徒 :「で、あの、蒼雅先輩は、その服装で文化祭にもっ?!」
巧 :「はい、そうなっております」
女生徒 :「で、関口君のクラスにも行きますよねっ」
巧 :「はい」
きゃああ、と、思わず聡が目をこするほどの勢いで、蛍光ピンクとパステル
グリーンの火花を振りまいた女生徒は、やがてスキップでどこかに行ってしまっ
た。
聡 :「…………もしかしてあれが?」
匠 :「そーなるな」
流石の匠が多少なりとも唖然とするほどのパワーである。
聡 :「……なんか、宣伝用の半券無くなっちゃった」
巧 :「これを、お返ししたほうが……?」
聡 :「いえいえ、先輩達に来て頂きたいですから」
巧 :「では、ぜひお邪魔させていただきます」
匠 :「楽しみにしとるわー」
聡 :「ありがとうございます」
ぺこり、と、頭を下げると、教室に向う。
時計を見るとまだ半時間。相当の速さで宣伝活動が終わったことは……如何
に覚悟を決めているとはいえ、ありがたいことではあった。
聡 :(なんか余計に目立ってた気もするけど)
最短の時間で、最高の宣伝になったのなら……それもあの二人に助けられる
格好で……それはそれで、クラスのためにもなるだろう。
何となくくすっと笑って、聡はまた走り出した。
時系列
------
2005年9月初め
解説
----
女装メイド+正統派メイド喫茶の宣伝風景。
察するにあの女生徒は、剣道部員でしょう(謎)
************************************
てなもんで。
ではでは。
---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29100/29195.html