[KATARIBE 29182] Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005   Never Forget Memories 』

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Date: Fri, 16 Sep 2005 19:06:52 +0900 (JST)
From: Saw <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29182] Re: [HA06P] エピソード『吹利学校高等部学園祭 2005   Never Forget Memories 』
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2005年09月16日:19時06分52秒
Sub:Re:  [HA06P]エピソード『吹利学校高等部学園祭2005 Never Forget Memories』:
From:Saw


Sawです。祭だ踊れ。
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エピソード『吹利学校高等部学園祭2005 Never Forget Memories』
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登場人物
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桜居津海希(さくらい・つみき)
    :秘密の多い生徒会長。
西園寺久遠(さいおんじ・くおん)
    :こと自分に関することになると鈍くなる生徒会書記。

交錯する思惑
------------
 先月まではまだ明るかった時間であるが9月ともなると太陽が傾くのが早い。
生徒会室には西日が射し込み二人は長い影を落としていた。まだまだ暑い日が
続いていたがその点でのみ9月は秋を主張している。
 後夜祭恒例フォークダンス。
 A4版のシンプルな企画書をぱしっと広げ、生徒会長の桜居津海希が溜息をひ
とつついたとき、向かいの席に座っていた書記の西園寺久遠は作業の手を休め
て顔をあげる。
 彼の目に写る生徒会長はどこか物憂げで、事実そのとおりだった。日頃明朗、
時に傍若無人な彼女としては珍しいのだ。こんなことは月に一度あるかないか
だろう、といったところである考えに至ってしまい久遠は赤面する。若者らし
い想像力はその潔癖さと相容れずに自己嫌悪をもたらす。
 だけど津海希はまるで気にかけていない。彼女はどこか深い森の中で恋人に
ついてぐるぐる考え続けていた。彼をフォークダンスに誘うというのは魅惑的
なアイデアだったが、同時に不可能と結論づけていた。本人達がどう思ってい
ようと十の年齢差は社会的に大きいとされてるし、学校という場は特にそう
いったことについて不寛容なものだ。とりわけ生徒会長という立場はそれを許
さない。

 津海希    :「やめやめ。悩むことが目的の悩みは不毛だわ」
 久遠     :「どうしましたか?」
 津海希    :「ん、これ」

 フォークダンスの企画書を久遠に見えるよう裏返し、そのままやる気のない
映画女優のような素振りで後ろに放り投げる。そして投げちゃまずいわよね、
などと言いながら拾いあげる。
 一連の動作を苦笑しながら眺めた久遠は言う。

 久遠     :「フォークダンス、ですか」
 津海希    :「そちらも駄目そう?」
 久遠     :「ええ、まあ、残念ながら。本当に」
 津海希    :「お互い難しい──とはいえ、何もしないというのも悔し
        :いし万が一誰かに誘われた時お断りするのも心苦しい」
 久遠     :「相手なら、和泉先輩がいるじゃないですか」

 三年で最も渋く、女子の人気も高く、津海希とも交流の深い和泉の名を上げ
て久遠は微笑む。実は和泉の下の名は凛であり、つまり女子だ。だけどこの場
合妙な勘ぐりを入れられることもなくもっとも相応しい相手といえる。普段の
津海希なら真っ先に候補に上げる程度には。

 津海希    :「凛ねえ、ちょっと喧嘩してるのよね。聞いてくれる?」
 久遠     :「ええ、あとでよろしければ」
 津海希    :「あとでよろしければ、ね」
 久遠     :「長いのでしょう?」
 津海希    :「たいしたことないわ。残務がまるまる明日回しになるく
        :らいのもの──」

 二人同時にため息をつき、それを合図に雑談は打ち切られる。
 書類をめくる音と鉛筆が紙を走る音だけが生徒会室に響く。

 津海希    :「西園寺君。私と一緒に踊りましょうか」
 久遠     :「仕事しましょうよ」
 津海希    :「してるわ。どう?」
 久遠     :「いけませんよ、そういうのは。お互いのパートナーに対
        :して失礼です」
 津海希    :「当日の光景が目に浮かぶようだわ。あなたを囲む女の子
        :の集団。その中から一人おずおずと出てくる可愛い後輩。
        :そして誘いの言葉。あなたは勿論断ろうとする。だけどで
        :きるのかしら、周囲には彼女の友達がたくさん居て目を光
        :らせている。正当な理由を求められる。答えられるのかな、
        :はたして」
 久遠     :「怒りますよ。生徒会長」
 津海希    :「私は久遠君のようにもてないけれど、万が一ということ
        :もあるし不安ではあるのよね。相互のボディーガードとい
        :う名目ならどう?」
 久遠     :「楽しんでませんか?」
 津海希    :「そんな風に見えて?」
 久遠     :「ええ」
 津海希    :「じゃあそうかもね」

 くすりと笑い、一連のやり取りの間に四則演算をこなすかのような速度で提
出書類を仕上げた津海希が立ち上がる。

 津海希    :「まあ、考えておいて」
 久遠     :「そんなだから──妙な噂があったりするんですよ」
 津海希    :「私達が恋人という話? 言いたい人には言わせておけば
        :いいわ。とりあえずお互い相手も居ないから踊る、生徒会
        :の付き合いで。これってそれ程不自然じゃないと思うの」
 久遠     :「そうでしょうか」
 津海希    :「下世話な視点を考慮しない限りにおいて」

 言いたいことを言って下校した津海希を見送り、自分の仕事を片付けて生徒
会室の鍵をかけた久遠は深く長い溜息をついた。

場所・時系列
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 2005年9月はじめ。吹利学校高等部学園祭の準備序盤。

解説
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 玉砕前にもうひとつネタを振ってみます。

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