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Date: Sat, 3 Sep 2005 14:32:20 +0900 (JST)
From: いー・あーる <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29132] [HA06N] 小説『ジャニスガレージ・溜息日和』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200509030532.OAA92028@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 29132
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29100/29132.html
2005年09月03日:14時32分20秒
Sub:[HA06N]小説『ジャニスガレージ・溜息日和』:
From:いー・あーる
ども、いー・あーる@一日できれば一作品、です。
（そのうち絵を描いて逃げると思います＜おい）
とりあえず、今日……つか、今晩の分を早回し。短編です。
朱敏君お借りしました＞ひさしゃ
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小説『ジャニスガレージ・溜息日和』
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登場人物
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軽部片帆（かるべ・かたほ）
：毒舌な大学生。ジャニスガレージでバイト中。結構シスコン
橋本朱敏（はしもと・あけとし）
：ワーウルフな大学生。地雷踏み。ジャニスガレージでアルバイト中。
本文
----
何だか溜息ばかりの夏。
姉は姉だし。
バイト仲間は……これだし。
「…………ううう」
ジャニスガレージの休憩室に、さっきから泣き声が響いている。
一応、バイトに入る時間より１０分前。
時間より１０分くらい先に来るってのが不文律。だからそういう意味ではバ
イトの休憩室で、こうやって座り込んでるのは間違えてはいない。ついでに言
うと扉は厚いしかっちり閉まってるしで、お店のほうには音が聞こえることは
ないらしい。
らしい、けどさ。
「………うう………うぉ……」
えぐえぐと、こちらが来る前から此処に来て泣いているらしい。
空帆ちゃんが流石に困った顔をしていたっけ。
『な、なんか、振られたーってって、泣いてるんですよう』
厄介な話である。
「…………ほら」
ぽんぽん、と、肩を叩く。延々と続いていた泣き声が、多少小さくなる。
「はい」
ハンカチを渡して。
「…………うう、すんません」
「どうしたん」
「…………」
あ、聞いたらまずかったかな。
「ご、合コンで、知り合って」
それでもとんとん、と、背中を叩いているうちに、橋本さんは話しだした。
「好みの女の子と、デート、したんすけど」
「うん」
……ってあーあ。一度拭いて乾かした目からぼろぼろまた涙をこぼして。
「……犬じゃねーっ」
まあ……狼ではあるな（いやそういう問題じゃない）。
「うん、貴君は立派に人間だから」
「うう……」
えっえっと、橋本さんは泣きながら続ける。
「引越しばかりで、動物飼えなかったとか言って」
「はあ」
「大きな犬が飼いたかったの……とか言って」
ああはいはい。また合コンで狼に変じたなこの人は。
「……初デートで人に首輪つけるってどーよっ！」
「そらあ……災難だったね」
まあ、その彼女に言わせれば、そんなら合コンで狼になるなーってことかも
しれないけど。
「つまり、さ」
「あい」
はい、の声がハンカチに遮られて、あい、と聞こえる。
「振られたのが痛いんじゃなくて……人扱いされないのが哀しかったのか？」
「……いや、振られたのも痛いんだけどね……」
「あははっ」
まあ、この人の場合、たとえ初デートで首輪つけられて、それがショックで
あっても、自分から振るようには見えないから。
……まあ、災難だねえ。
「……まあ、そう落ち込むな」
ぽんぽん、と、肩を叩く。
「あい……」
「落ち着いてからレジに来て」
「……う」
「こっちも一人だと、ちときついから」
ぐしぐしぐし、と、顔をやたらにこすっていた橋本さんが、ようやく顔を上
げた。
「……ごめん、顔あらってくら」
「はいはい」
ばたばた、と、引っ掴んだハンカチと共に去っていった橋本さんを見送って。
……やっぱ、溜息が出る。
「何だろうねえ」
貴方が狼だからってデートを承諾する人と。
ネズミが怖いからって異性の家に転がり込んで出てこない姉と。
どっちが常識外れかっつーと、かなり微妙な気がする。
「……やれやれ」
カウンターに立って。
泣き顔を洗いにいった、バイトの先輩を待ちつつ。
何だか溜息ばかりの夏。
何だか……ほんとに肩の凝る夏。
時系列
------
2005年8月。
解説
----
ジャニスガレージの一風景。
毎度のことながら……朱敏君、可哀想なことになってます（汗）
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『女の子が泣いてたらハンカチをそっと渡す』……をアレンジしたらこうなりました。
泣いてるのとハンカチを渡すのとが、微妙に性別入れ替わってるのは仕様ですええ。
ではでは。
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