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Date: Sat, 6 Aug 2005 00:21:50 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29024] [HA14N] 小説『祝』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200508051521.AAA10833@www.mahoroba.ne.jp>
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2005年08月06日:00時21分50秒
Sub:[HA14N]小説『祝』:
From:久志
久志です。
知ってる人は知っている、過去に狭間14霞ヶ池の影に出ていた二人です。
いーさんに住所を送るのに、用件だけじゃさみしいなーとか思ってたら
こんなん書いてました。
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小説『祝』
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登場キャラクター
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本宮友久（もとみや・ともひさ）
：青い瞳を持つ空間操作能力者。１８歳の時、自ら死亡偽装し
：裏社会へ消えた。野枝実の家に居候。
鬼崎野枝実（きざき・のえみ）
：影を支配し、意のままに操る影使いの力を持つ者。
小泉狭霧（こいずみ・さぎり）
：偽装や物品手配などに優れた後方支援者。友久の旧知。
唐突
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「……は？」
『ふふ、驚いた？』
休日、突然架かってきた狭霧からの電話に思わず耳を疑った。
「いや……まあ、驚いたことは驚いたけどな」
『ふふ、先越されたよ？』
「しかし、何でまたそんな情報を俺に話す」
『いいじゃない。それくらいの情報くらいは知っていても』
十二年前。
自ら事故を装って、家族からも友人からも表の世界の全てからも姿を消した。
生まれながらにもった異能。
それだけを見るならば、自分だけでなく下の弟達も人と違う異質な力を持っ
ていた。自分と同じ空間を操る瞳、普通では見えぬものを見る目。
だが、弟達に比べ、自分の瞳が持つ力は強すぎた。
人より強いが故に、埋没することができず……それ故に、姿を消した。
もう、あの場所は自分が触れてはならないものとして、心の奥底に封じてい
たはずだった。
だが。
「……結婚、か」
『……それくらい、知っててもいいじゃない？』
「……ああ」
兄、史久。
上の弟幸久。
昔から大人びていてしっかり者だった兄ならばわかるが、あのやんちゃもの
だった幸久が結婚とは、流石に驚いた。
電話を切って、軽く目をつぶる。
大学生だった兄、高校一年生だった幸久、そして中学一年だった和久。
病気がちだった母の代わりにいつも台所に立っていた兄。
自分の真似をして無理をしてタバコをふかしていた幸久。
生真面目で自分と同じ目を持つことを悩んでいた和久。
それ以上はもう浮かんでこない。
今は。
「……さ」
「ん？」
「……友久？」
色の淡い虹彩。
少し不思議そうな顔をして、野枝実がじっと目を見ている。
「野枝実か」
「……どこか、様子がおかしかったから」
「少し、考え事してた」
「そう、か」
野良猫を思わせる目つきが少し柔らかくなる。そのまま、膝を抱えたままの
姿で、すとんと肩に頭を乗せてくる。くせのある長い髪が肩からこぼれた。
くしゃっとかき回すように髪を撫でる。
失った家族。
今の家族。
兄と幸久はどんな家族を作っていくのか。
和久はどんな家庭を望んでいるのか。
「……おめでとう」
「え？」
「いや、こっちの話」
届くことのない祝いの言葉を。
せめて、今は。
時系列と舞台
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2005年７月 野枝実宅にて。
解説
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過去に自ら切り捨てた家族の祝い事を知る友久。そして、今の家族と。
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以上、即書きでした。
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