[KATARIBE 29015] Re: [HA06P] エピソード『無明の天使』(編集版)

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Date: Thu, 04 Aug 2005 02:32:24 +0900
From: 月影れあな <tk-leana@gaia.eonet.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29015] Re: [HA06P] エピソード『無明の天使』(編集版)
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 おいっす、れあなです。
 とりあえず、書けたので流します〜。

 天使の使ってた技能については、単なる「物語で書かれている場所のほかで
も被害を受けている人が居るよん」という演出から。いや、多分これは宗谷君
のアレですが。彼自身、あと姉も出すつもりはありません。
 狭間世界ってたしか「100人に一人は異能もち」くらいの世界なんで、もっ
とバンバン襲われててもおかしくないのよね。特に吹利だともっと密集してそ
うだし。

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エピソード『無明の天使』
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 吹利市街、深夜。
 とうのむかしに日は落ち。街の人々は帰宅する人と、眠る人の二種類にのみ
分かれる宵闇の時間。
 達大もちょうど、BARでの会談を終えて帰宅しているところであった。右手
には酔い覚ましにと買ったポカリスエットをぶらさげ、悪酔いにふらつく足を
叱咤しながら、姪の待つ里見マンションへと歩み向かう。

 達大     :「うーむ。うっかり呑み過ぎたかもしれない」

 既に時計の針は終バス時刻にも回り、ポツリポツリとまばらに立ちつくす、
街灯に照らされた夜の道に人の影はない。時折見かけるものと言えば帰路を急
ぐ車の赤いテールランプくらいのものだった。
 
 熱帯夜特有の、生ぬるい風が首筋を撫でる。

 背後から、盛大に羽ばたく鳥の羽音聞こえた。ギクリと胸が跳ね上がる。こ
れほど大きな音を立てて夜空を羽ばたく存在に、達大はちょうどひとつ心当た
りがあった。
 まさか、と思う。それは確かに達大がここ数日、有給を取ってまで得た時間
を費やして追いかけていた相手だ。しかし、まかり間違ってもこういう形の対
面を望んでいたわけではない。
 振り返ると、そこには確かに天使憑きの少女が立っていた。話に聞いたとお
り、翼は白と黒のハイブリッド。和紙の先を墨汁に浸したように、かつては純
白であったろう翼の先から黒の色が侵食している。

 達大     :「あなたは……」

 なんとか対話に持ち込もうと、口を開いたとたん、少女が動く。どこから、
いつの間に取り出したのか、その手に握られているのは一本の槍。

 達大     :「――ッ!」

 とっさに、ペットボトルを逆手に構え、言霊にて見立てを言い放つ。槍の正
体は知れないが、それがなにをもたらすものであるかは重々承知している。大
人しく刺されるわけにはいかなかった。

 達大     :「このうつわはかたきはがね、あらゆるをはじくつよきこ
        :んぼう――あめつちのあいだにうちかえせぬものはなし」

 迫り来る槍の穂先に向けて、思い切り打ち払う。
 ガィンと鈍い音を立てて槍は弾け飛び、回転しながら大きく弧を描いて少女
の手に納まった。

 達大     :「いきなりご挨拶ですね。話を聞いてくれませんか?」
 天使憑き   :「生憎、我は魔性と交わす言葉など持たぬ」

 凍てつく氷のように冷め切った言葉だった。
 一言の元に交渉を跳ねつけられて、達大の背筋を冷や汗が流れ落ちる。
 正直なところを言えば、達大は戦闘に向いた能力者ではない。通り名となっ
ている『猫廻し』の名にしても、猫丸との交渉の妙からきたものだ。つみきの
暴走があったとは言えあの前野浩が遅れを取った相手に、翼を持たず追撃が出
来なかったとは言え遠野響が取り逃した相手に、正面から戦って無事ですむと
は到底思えない。

 達大     :「まあそう剣呑なことを言わないで下さい。私はあ――」
 天使憑き   :「くどい」

 少女の指先に、仄かな緑色の光が燈る。直後、緑色の光が風を切って達大の
方へと走った。

 達大     :「うわッ!」

 とっさに金属バットと化したペットボトルで払う。ギィンと甲高い金属質の
音があたりを引き裂いた。

 達大     :「……怖いことをしてくれますね」

 ペットボトルに突き刺さっているのは、緑の燐光を纏う小さな木の葉だった。
穴の空いた隙間からは、ちょろちょろとポカリスエットがもれ出ている。資料
には無かった能力。おそらく、また別の異能者を襲い力を奪ったのだろう。
 こんな時だと言うのに、思わず嘆きの言葉が口からこぼれた。

 達大     :「ああ、勿体無い」
 天使憑き   :「今のを防ぐか……ならこれでどうだ?」

 少女が言ったとたん、ざわりざわりと周囲の樹木と言う樹木が揺らめき始め
る。達大は恐るべき嫌な予感にギクリと声を上ずらせた。

 達大     :「まさか……」
 天使憑き   :「行け」

 少女の号令と共に、周囲の樹木から一斉に光が走る。

 達大     :「このかみはかたきかべ、やいばをとおさぬむそうのたて」

 早口に言霊を言い放つと、達大は鞄の中から資料の書類を取り、ばら撒いた。
 今回の事件についての大事な書類だが、大切なことは既に頭に入っている上、
後で拾い集めれば読めないことも無い。何より、命に代えられるはずも無かっ
た。

 天使憑き   :「ハハハッ! それが汝の力か。面白い」
 達大     :「こっちはちっとも面白くないんですが、ねッと!」

 軽口を叩きながら、絶え間なく飛んでくる硬質の木の葉を避け、紙で弾き、
或いはペットボトルで叩き落す。
 書類の数には当然限界もあるし、体力的なことを考えてもいつまでも続けら
れることではない。なんとか逃げる隙はないものかと周囲に視線を巡らせる。
 注意をおろそかにしたつもりは無かった。しかし、結果的に達大の方が隙を
突かれる形になった。

 天使憑き   :「足元がおろそかだぞ」
 達大     :「なッ!?」

 少女の嘲りに、気づいた時には既に遅い。つんのめるようにして、達大は足
を止める。否、止められる。
 黒々とした木の根がアスファルトの地面を割って伸び蠢き、達大の足を、腕
を、体をしっかりと拘束していった。

 天使憑き   :「跪け」

 言葉と同時に何らかの力で操作された木の根が、無理矢理に達大を地面に引
きずり倒す。
 少女の掌から伸びるようにして、先ほどと同じ槍が現れた。今度こそ避ける
手立ては無い。
 元々後衛に徹するつもりだったから、能力の喪失自体はさほどの問題でもな
い。つみきのように言葉を奪われれば少し面倒だが、それでも意思疎通が不可
能になるわけではない以上、大したことでもない。ここに至って自分に出来る
ことといえば、少しでも多くの情報を集めるだけだ。

 達大     :「冥土の土産に、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
 天使憑き   :「……言ってみろ」
 達大     :「あなたの目的は何ですか?」
 天使憑き   :「知れたこと! 我は神の使徒、なれば神の意思のもとに
        :排泄すべき悪、即ち魔性の力を刈り取ることこそがその使
        :命なり!! ハハ、案ずるな。汝の中に膿み巣食う魔性を取
        :り除きさえすれば、あえて命までは取ろうとせん。運がよ
        :ければ貴様も死なずにすむだろうよ」

 大仰に口上を述べて、高らかな哄笑を上げる。神を語るその言葉からは、言
霊を聞くまでも無く明らかな狂気の色が読めて取れた。獣性の者ではなく、狂
人であったわけだ。つみきの交渉が通じなかったのも納得できた。
 ぎょろりと少女の相貌が皿のように見開かれる。そこに浮かぶ感情は、怒り
か、憎悪か、愉悦か、侮蔑か。いずれにせよ、達大にもとうとう年貢の納めが
きたようだ。

 天使憑き   :「……汝の力、頂く」

 軽く放たれた宣言に身を硬くして、達大は槍の先を睨みつける。
 その直後だった。

 声      :「おやめなさいッ!」

 唐突に声が割り込んできて、濃い藍の色に覆われる。自分と少女の間に誰か
が割って入ったのだと気付くのに数瞬の時間を要した。
 背を向けてるため顔は窺い知れない、声に聞き覚えが無いため、少なくとも
知人であることは無さそうだった。身に纏った藍の修道衣から察するに、恐ら
くはキリスト教関係のシスターだろう。

 シスター   :「あなたがしたかったのはこんな事じゃないはずです、沙
        :耶子ちゃん! 正気に返ってッ!!」

 『沙耶子』という名前に、達大は聞き覚えが無かった。
 しかし、少女の方には心当たりがあるようで、槍の動きが躊躇するようにピ
タリと制止する。

 天使憑き   :「汝は、なんな、何だ。私は、わ、わ我はし、知らぬ……」
 シスター   :「沙耶子ちゃん」
 天使憑き   :「我わ、わた、私、は……知らぬ! じゃあ、邪魔をする
        :な、女ァッ!!」

 怒号と共に、周囲にざわめいていた木々の葉が一斉に女に向かって放たれる。

 達大     :「危ない!」
 シスター   :「キャアッ!!」

 血飛沫とともに、藍色の修道衣が散々に切れ飛ぶ。一瞬でボロボロの様相に
変わり果てるが、シスターは怯んだ様子も見せず、優しげに少女の目を見据え
ている。

 シスター   :「沙耶子ちゃん……」
 天使憑き   :「ち、ちが……違うんです、シスター。わ、わた……我は、
        :汝など……わ、私、こんなことが、したかったんじゃ、あ、
        :ああ、我、わ、ご、ごめんなさい。ごめんなさい、し、シ
        :スタ……あ、あああ、ああぁぁぁぁぁあぁあぁあッ!」

 絶叫する。言霊を聞くことの出来る達大には、その声は魂が引き裂けるよう
な音にも聞こえた。二つの精神を持ったがゆえに、相反する思考に耐え切れず、
びりびりと引き裂けるような、そんな音に。
 不意に響の言葉が蘇る。今にも壊れそうな天使。将にそれだ、一つの肉体に
二つの精神を無理矢理押し込まれ、少女の肉体は今悲鳴を上げていた。

 先ほどより明らかに黒い部分が広がった翼が、大きく羽ばたく。少女の意思
の散逸で力を無くした木の根を振りほどいた時には、既に少女の翼は空高く舞
い上がっていく。夜の闇より暗い黒い羽が、まるで綻び落ちるように辺りに舞
い散った。

 どさりと、シスターが倒れる。

 達大     :「大丈夫ですかッ!?」

 返事はしかし、無い。どうやら既に意識を失っているようだった。静かに、
アスファルトの地面に血溜まりが広がっていく。

 達大     :「このみずは、きよき、なおき、あかるきいやしのみず。
        :つきあかりうけ、たちまちにけがれをはらいやみをはらい、
        :たちまちにいやすおちのわかみず」

 手元に残った言霊を、癒しの霊水に見立てる。先ほどの戦闘で随分こぼれてし
まったが、それでもまだ結構の量が残っていた。
 全身をポカリスエットに塗れさせるのは少々哀れだが、この際仕方が無い。新
しい真水を探してくるほど悠長な状態でもなかった。

 なんとか全身に広がった傷を閉じ終えた時、既に大量の血液が流れ出してい
た。このまま放置しておくのも危険だし、何よりこの血溜まり、人に見つかれば
言い訳が出来ない。
 達大は溜め息一つついて携帯を取り出した。

 達大     :「もしもし、前野さんですか? ……はい、例の天使に教
        :われました。怪我人も居ますので煖さんを……いや、そう
        :ですね。煌さんもつれて来てください」

 手短に用件を伝え電話を切る。
 思わず大きなため息が出た。ようやく、達大は人心地つけるのだった。


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 / 姓は月影、名はれあな
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