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Date: Thu, 04 Aug 2005 01:25:23 +0900
From: "Hikaru.Y" <hukira@blue.ocn.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 29014] [HA06P]エピソード『フィル、持ち主を決める(仮)』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200508031625.AA00062@hikaru-h8akl379.blue.ocn.ne.jp>
X-Mail-Count: 29014
Web: http://kataribe.com/HA/06/P/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/29000/29014.html
ふきらです。
このまえやったチャットをエピソード化しました。
チェックと修正よろしくです>きしとくん。
というか、タイトル案プリーズ(汗)!
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エピソード『フィル、持ち主を決める(仮)』
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登場人物
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津久見神羅(つくみ・から):式神コレクターな陰陽師。
フィルオナ:好奇心旺盛な人形の九十九神。
一白(いっぱく):神羅の式神。
鳥居での遭遇
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午前八時を過ぎた夏の朝は、今日も真夏日であることを予感させる。
セミの鳴き声が響く帆川神社の境内を神羅は竹箒で掃いていた。
神羅 :「しかし、夏が暑いというのはどうにかならんかね……」
その帆川神社の石段を上がっている者が一人。
フィル :(ここは、神社のようですねぇ……)
フィル :(……む、人がいるのです)
鳥居の陰に隠れて、神羅の行動を観察する。
神羅はそのまま境内を掃きながら鳥居の方へ進んでいく。
フィル :(はわわわわ!こ、こっちに来るのです!って、に逃げら
:れないです!)
神羅 :「ん?」
慌てるフィル。
フィル :「はわっ!み、みつか……(もごもご)」
自分で自分の口を手で押さえて、黙る。
神羅 :(おや、朝から客とは珍しい)
:「おはようございます」
フィル :「お、おはようございますのです!(かちこち)」
神羅 :「こんな朝っぱらから……て、もう夏休みかな?」
フィル :「は、はひ!もう夏休みなのです!」
神羅 :「……固いなあ(苦笑)」
フィル :「えー、えと……」
フィル :深呼吸
フィル :「はぁ、落ち着きましたのです。」
神羅 :「そりゃ、良かった」
フィル :「お兄さんはここの人なのですか?」
神羅 :「そう」
フィル :「神主さんなのです?」
神羅 :「いや、神主はうちの爺さん。わしはただの手伝い」
フィル :「そうなのですか」
神羅 :「それより、中に入りな。ここはぼちぼち暑くなるやろ
:うから」
フィル :「はいなのです」
拝殿へと続く石畳の上をフィルはきょろきょろしながら歩いていく。
神羅 :(久しぶりに珍しい客やな)
フィルから感じる気配に神羅は気付いていた。
拝殿の前にて
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拝殿の屋根は賽銭箱が置いてある箇所だけ出っ張っており、影を作って
いる。神羅はフィルに影に覆われている階段の部分に座るように勧めた。
神羅 :「しかし、朝から神社とは通やねぇ。自由研究か何か?」
フィル :「ほえ? 私は、ただ入ったことのないおもしろそうな
:場所があったから覗いてみただけです」
神羅 :「面白そうな場所ねえ……」
周囲を見回す神羅。さすがに毎日見ている風景だけに特に面白そうな場所は
見つからない。
神羅 :「如何せん、普通の神社やからね。面白いものはないなあ」
フィル :「行ったことのない場所は、大体面白いのです」
フィル :「面白いと言うよりは、興味がある、と言った方が正確な
:のです」
神羅 :「なるほど。interestingの方か」
神羅 :「ま、せっかく来てもろたんやから。お茶でも出すわ」
フィル :「ありがとうございますなのです」
フィルがお辞儀をする。
しかし、お茶を出すと言った神羅はその場から動こうとはしない。首をかし
げるフィルの視界に、社務所から少年がお盆の上にお茶を乗せてやって来るの
が見えた。
少年 :「どうぞです」
フィル :「ど、どうもなのです」
お茶を差し出してくれた少年をまじまじと見るフィル。
少年 :「何か付いているですか?」
不思議そうに見返す少年。
その光景を神羅は少し意地悪そうな笑みを浮かべて見ていた。
フィル :「あ、いえ、そう言うわけではないのです」
フィル :(なんだか、仲間の気配がするのです。でも、微妙に違う?)
悩むフィル。
神羅 :(さすがに気付いたかな?)
神羅 :「ところで、ご両親はいてはるのかな?」
フィル :「両親です?いえ、保護者が一人いるだけです。といって
:も、今は家にいるのですが」
神羅 :「保護者と言い換えるってことは……まあ、ええか」
フィル :「どうかしたのです?」
神羅が少年の方を見ると、彼は何か言いたそうな顔をして神羅を見ていた。
神羅 :「言いたいことがあるならどうぞ」
少年 :「このおねーさん、人間?」
フィル :(ぎくっ!?)
夏の空気が凍る。少しだけセミの鳴き声が大きくなったような感じがする。
フィル :「な、なななななななな、何を言うのです!」
神羅 :「……ど真ん中ストレート、やな」
変に動揺するフィルに神羅は苦笑を浮かべた。
神羅 :「とりあえず、失礼なことを言ってるんやから謝れ」
少年 :「むー…… ごめんなさいなのです(ぺこり)」
フィル :「ど、何処をどう見たって人間ではないですかほら!」
やけに力説するフィル。
丁度、腕を振り上げたとき、バイン、と音がした。
フィル :「…………あ゛」
振り上げた腕の手首から何かが上に向かって飛んだ。
その手首の先にちらりとバネが見え、中から伸びている紐が放物線を描き、
カコンと乾いた音を立てて「何か」が石畳の上に落ちた。
フィルは固まったまま冷や汗を流し、少年は目を大きく見開いて落ちたもの
を凝視し、神羅は再び苦笑した。
再度、境内の空気が凍った。
フィルの正体
------------
神羅は落ちた彼女の右手を拾い上げると、付着した砂を軽く払いフィルに差
し出した。
フィル :「あ、すみません」
フィルは自分の手を受け取ると、ワイヤーを巻き取り始めた。その目には涙
が浮かんでいる。
フィル :「うぅ〜、ばれてしまったのです〜(ぐすっ)」
一方、少年は自分の意見が正しかったことに満足しているのか、少し誇らし
げな顔をして神羅を見た。
少年 :「ほらぁ」
神羅 :「ほらぁ、じゃねえよ」
神羅はその脳天に拳骨を食らわせる。頭を押さえてうずくまる少年。
フィルはワイヤの巻き取りを終え、最後に自分の手を填めた。
神羅 :「ばれたところで何か問題があるかい?」
フィル :「今まで、正体がばれて、良かったことはあんまり無かっ
:たので……」
神羅 :「まあ、ここにはこんな奴もいるんやけどね」
そう言うと、神羅はうずくまっている少年の頭を軽く叩く。ふ、と少年の姿
が消えて後に残ったのは一枚の人型の紙。
フィル :「って、えぇ!?(びっくり)」
神羅 :「あ、びっくりされた」
フィル :「び、びっくりしますですよ。今のは何なのです!?」
神羅 :「率直に言うと式神。まあ、使い魔みたいなもんやね」
フィル :「へぇ〜、そうなのですかー。すごいのです」
紙が再び少年の姿に戻る。
少年 :「だれが使いっ走りやねん」
神羅 :「誰がそんなこと言うた」
フィル :「あはははは」
笑うフィルの姿を見て、神羅は安堵する。
神羅 :「なかなかええタイミングや」
少年 :「いやいや。これも兄さんのおかげですわ」
神羅 :「まあ、君の方が……そういや名前を聞いてなかったな」
フィル :「えっと、フィルオナというのです。お二人は漫才コンビ
:なのです?」
神羅 :「コンビやないね。これが日常。ちなみに、わしは津久見
:神羅という」
フィル :「はい、初めましてなのです」
少年 :「僕が一白(いっぱく)といいます。よろしくです」
改めて頭を下げる一白。
フィル :「えと、一応私は元人形で、この姿も人の姿に化けた物
:です」
神羅 :「ほう。化けられるってことは相当年季が入ってるね」
フィル :「えと、まぁ、それなりに……」
一白 :「えっ、じゃあフィルってお(ゴツン)」
言いかけた一白の脳天に再び拳骨。そして再び紙の姿に。
神羅 :「まあ女性に年を聞くのは野暮やったね」
年齢の話をしたのは神羅の方なのに、とは言わない一白。そもそも紙の姿で
は言えるはずもない。
フィル :「3桁いってるのは間違いない事実なのです……」
フィル :「とはいえ、ここまで古くなってしまうともらい手が居な
:いのも事実なので……年は取りたくない物です」
神羅 :「えーと…… 貰い手がいないって、さっき言っていた保
:護者は君の持ち主やないの?」
フィル :「違いますよ?氷我利は、持ち主じゃないのです」
神羅 :「んん?何か微妙な関係やね」
頭を掻く神羅。
フィル :「えっと、佐上の家は私みたいな物を集めて新たな持ち主
:が見つかるまで居場所をくれるところなのです」
神羅 :「その氷我利って人が持ち主だったらいいなって思った
:ことは?」
フィル :「だったら、とっくに持ち主に決めているのです」
神羅 :「何か事情でもあるわけか…… 難しい話だなぁ」
フィル :「そうですか?」
フィル :「氷我利よりも、むしろお兄さんみたいな人の方が良いで
:すけど。フィルは」
その言葉に反応して、いきなり人型に戻る一白。
一白 :「兄貴! これって告は(ゴツン)」
三度、脳天に拳骨を食らい紙の姿へ逆戻り。
神羅 :「今日は一段と主張が激しいな……」
フィル :「こくは?」
神羅 :「いや、まあ……」
ごまかしの咳払いを入れる。
神羅 :「つまり、その氷我利って人が持ち主になっていいってん
:だったら、佐上家とやらにある君のようなもの全ての持ち
:主になってしまうから、それはよろしくない、
:てわけかな…… って、考え過ぎか」
フィル :「そう言うわけではないですよ?氷我利を持ち主にしてい
:る人もいますですよ?」
神羅 :「あ、そうなの?」
神羅 :「でもまあ、うちが良いって言ってくれるんだったら、
:うちに住む?」
フィル :「ほんとですか?」
神羅 :「うん。特に問題はない。ただうるさい奴もいるけど」
フィル :「いえいえ、にぎやかなのは良いことなのです」
神羅 :「じゃあ、その氷我利って人に挨拶に行かないといかんね」
フィル :「はいなのです」
漫才トリオ結成?
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懲りずに再び人型に戻る一白。
一白 :「おじょーさんをぼくにくださいっ、とか言うんだ」
神羅 :「……一白君。君とは一度ちゃんと話し合う必要があるよ
:うだね」
フィル :「誰があなたの物になるって言いましたか!(スパーン)」
一白の台詞に、神羅が冷たい言葉を浴びせ、フィルがどこからとも無く取り
出したハリセンで一白の後頭部をはたく。初めてにしては絶妙の連係。
一白 :「うう……心と体が痛い……」
フィル :「自業自得です」
神羅 :「やな」
時系列と舞台
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2005年7月末日。帆川神社。
解説
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この話以降、フィルは帆川神社に住むことになる……のかな?
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