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Date: Fri, 29 Jul 2005 00:02:29 +0900
From: 月影れあな <tk-leana@gaia.eonet.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28977] Re: [HA06P] エピソード『無明の天使』編集版
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おいっす、れあなっす。
相変わらず、別方向からアプローチのベルナデッタ続きを流します
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> エピソード『無明の天使』
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教会堂の神父
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神父 :「休暇ですか?」
ベルナデッタの突然の申し入れに、神父は驚いたように目を見開いた。
カソリック教徒のイメージする理想の神父象を体現したような、柔和な顔を
した恰幅の良い初老の紳士である。
カソリック吹利本町教会。早朝のミサが終わり、人のいなくなったゴシック
建築の教会堂で、ベルナデッタは彼女の上司に当たる神父と向かい合っていた。
ベルナデッタ :「はい、突然申し訳ございません」
神父 :「いえ、いいんですが。どうして唐突に?」
ベルナデッタ :「志摩沙耶子ちゃんのことで」
神父 :「……ああ、日曜のミサによく来ていらした子ですね」
数瞬目を瞑って考えてから、神父はため息混じりに言葉を吐き出した。その
声色には、隠せないほどの苦味を滲ませている。
『来ていた』と、過去形で言った。
彼女が教会に来なかったのはつい先日の日曜日。それだけなら『何か用事が
あったのだろう』で済ませる程度のことだ。そこをわざわざ、まるでもう二度
と来ることがないかのように過去形で言ったのには理由がある。
神父 :「たしか、先日から家出をなさっていて行方不明だとか」
ベルナデッタ :「はい」
詳しいことは知れないが、同じく教会に出入りしている彼女の級友の話して
いたことだ。その信憑性はかなりのものだった。
神父 :「彼女がどうかしましたか?」
ベルナデッタ :「……昨日の夜、公園で見かけたんです。なにか妙なこと
:に巻き込まれているようで、放ってはおけません」
神父 :「なるほど」
そういえばと神父は思い出す。少女沙耶子は、と言ってもこれは沙耶子に限っ
たことではなく本町教会に出入りする信徒のほとんどに言えることだが、奇人
変人の多いこの教会の中で、珍しくも温厚で優しげな雰囲気をもつベルナデッ
タに懐いている様子があった。
神父 :「もしかして、なにか相談でもされていましたか?」
ベルナデッタ :「……はい」
軽く唇を噛んで、ベルナデッタは長いまつげを伏せる。その口元には、苦い
悔恨の表情が浮かんでいた。
ベルナデッタ :「懺悔をしたいと言われました」
神父 :「懺悔を?」
ベルナデッタ :「はい、けれど私はただの修道女ですから、ゆるしの秘蹟
:を執り行うことはできません。だから、神父さまにお願い
:しようと言って、その場を離れて呼びに伺いました」
神父 :「ああ……」
そのことには彼自身も憶えがあった。ベルナデッタに呼ばれ、懺悔室に趣い
たはいいものの、ベルナデッタが呼びに来ている間に少女は居なくなっており、
結局懺悔を聞くことは無かったのだ。
神父 :「家出の一日前、あれは沙耶子さんだったんですか」
ベルナデッタ :「はい。沙耶子ちゃん、私が断った時ひどく傷ついた顔を
:していて。思い返せばあの時、私が話だけでも聞いていれ
:ば……」
膝に置いた手を、指先が白くなるほど強く握り締める。
神父 :「わかりました。気の済むまで行ってらっしゃい」
ベルナデッタ :「神父さま! ありがとうございます」
神父 :「いえ、迷える子羊を正しい道に導くのも我々の大切な仕
:事です」
ベルナデッタ :「はい!」
それに、と神父は心の中で付け加える。
彼自身も祓魔を司る吹利本町教会の神父、ベルナデッタの言う『妙なこと』
には興味もあった。まだ何の確証も無い以上、自身で動くわけには行かないが、
ベルナデッタが自らの意思で調べてくれるのならこれほどありがたいことは無
い。
ベルナデッタ:「それでは。シスター・ベルナデッタ、行ってまいります!」
言うが早いか立ち上がり、スカートの裾を乱しながら走り出す。神父はその
様子を咎めることもせず、にこやかに見送ってから静かに十字を切った。
神父 :「天にまします我らが主よ、どうか彼女らをお守りくださ
:い……」
エィメン。
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/ 姓は月影、名はれあな
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