[KATARIBE 28866] [HA06N] 小説『謹慎中です』

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Date: Sat, 25 Jun 2005 02:15:16 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28866] [HA06N] 小説『謹慎中です』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年06月25日:02時15分16秒
Sub:[HA06N]小説『謹慎中です』:
From:久志


 久志です。
 なんとなくツンデレ(ぽいもの)を一本。ツッコミはききませんヨ。
思いつきオンリーなので流れなど知らぬ。

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小説『謹慎中です』
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登場キャラクター 
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 本宮史久(もとみや・ふみひさ) 
     :吹利県警刑事課巡査。屈強なのほほんおにいさん。昼行灯。
 卜部奈々(うらべ・なな)
     :吹利県警刑事課長補佐。仕事とオフの顔が違う人。史久の婚約者。

史久 〜謹慎中
--------------

 一字一字、丁寧にシャーペンを走らせる。
 時折手を止めて、全体を眺めながら、心の中で文章を読み直しておかしな点
がないかを確認する。

 始末書と反省文の提出と二日間の謹慎。
 以上が、先日の幸久の駆け落ち騒動で県警を飛び出した僕に下った処分だ。
 正直、思ったより軽くてホッとしてるけど。これも僕の処分を軽減する為に
奈々さんや他の刑事課の人達があれこれ心を砕いてくれたのだろうかと考える
と、素直に喜んでばかりもいられない。

 ともあれ謹慎とはいえ、さすがにこないだの騒動で心身ともにかなり疲れが
溜まってたし、この二日間で調子を取り戻すのも必要かもしれない。

 食卓の椅子に座ったまま、書きかけの反省文を読み直していると、ことんと
テーブルの目の前にコーヒーカップが置かれた。
「あ、すいません。奈々さ……卜部警部」
「順調ですか?本宮巡査」
 って、ああ奈々さん、職場の顔だ。
 ええと、でも奈々さん今日は非番のはずなんですけど……
「はい、反省しています」
 奈々さんとしては、心情的に辛かったんだろうなあ。でも上司という立場上、
勝手な行動をとった部下を処分するのは当然のことだし。
 本当に悪いことしたなあ……奈々さん。

「申し訳ありません、卜部警部」
「自宅謹慎は休暇とは違います、しっかりと反省して、私的行動を慎みなさい」
「はい、わかりました」
「……ですから」
 こほんと、奈々さんがひとつ咳払いをする。
「今日は食事の支度も掃除洗濯もすべて私がしますので、あなたはちゃんと身
を慎んで反省なさい」
「はい、卜部警部。ですがここしばらくの間、家の雑用は少々溜まっています
ので、出来る限り作業を分担して効率よく家事を行ったほうがよいかと思われ
ますが、いかがでしょう」
「だめです、体を休めなさい。命令です」
「はい、申し訳ありません」
 淡いクリーム色のエプロンにジーパン姿で、せっせと流しの掃除をしている
奈々さんの後姿をぼんやり眺めながら、コーヒーをひとくち口に含む。
 このところ事件やら騒動やらで、こんな風にのんびり時間をつぶすというの
は久しぶりだ
 コーヒーをもうひと口飲んで、テーブルに頬杖をつく。
 なんだか、ほっとするなあ。


 ふと時計を見ると五時を回っている。

 って、あれ?
 どうやら、溜まった洗濯に部屋の掃除にと、ぱたぱたと走り回る奈々さんを
眺めているうちに、いつの間にかテーブルに突っ伏したまま寝入ってしまって
いたらしい。
「お目覚めですか、本宮巡査」
「申し訳ありませんっ」
 思わず飛び起きて頭を下げる。って何で寝てるかな僕。おまけに反省文半分
も書いてないし。
「いえ、体を休めろと言ったのは私です」
「ですが」
 言いかけた僕の言葉を指先でさえぎる。
「疲れは、とれましたか?」
「……はい、申し訳ありません」
 椅子を引いたままの姿勢の僕の膝の上に、奈々さんがひょいと座って、胸に
よりかかるように頭を預ける。
「あの、卜部警部」
「どうしました、本宮巡査」
 口調はいつもの厳しいままで、ぎゅっと上着の袖をつかんで胸に頭を預けて
よりかかってくる。
「はい、ええと、卜部警部。膝の上に座られていては反省文が書けません」
「……知りません」
 困ったなあ、もう。
 でもまあ、時間はあと十五分程か。
「卜部警部、怒っておいでですか?」
「……怒っているわけではありません」
「はい」
 怒ってるわけじゃなくて、心配したんだろう、なあ。
 上司としても婚約者としても、なんだかいつも奈々さんには心配かけてばっ
かりだ。

「申し訳ありません、反省しています」
「…………」
 返事のかわりに、こつんと胸に奈々さんの額があたる。

 さて、あと五分。

「ご心配、おかけしまして」
「……はい」

 時間だね。

 両手を伸ばして、膝の上に座った奈々さんを抱えこむように抱きしめる。
「も、本宮巡査?」
 軽く指先で細いあごを撫でる。
「勤務時間は過ぎましたよ、奈々さん」
「もう……史さんてば」
「あはは」

 なんだか謹慎になってないなあ。


時系列と舞台
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 2005年3月30日
解説
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 結婚騒動収束後。謹慎処分中の史久。
 ていうか謹慎になってない、というか、何をやっとるんだお前ら。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
以上 




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