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Date: Thu, 02 Jun 2005 00:14:34 +0900
From: "Sakurai.Catshop" <zoa73007@po.across.or.jp>
Subject: [KATARIBE 28831] [HA06N] 小説『放課後の決闘?』
To: Kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
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こんばんは、Catshop/桜井@猫丸屋です。
西園寺久遠とねぶらぎ流の少女の決闘を小説化しました。
ラブコメばっかじゃなくて、アクション巨編も書けるぞ、というところを
見せてみたく書いてみた次第です。
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[HA06N] 放課後の決闘?
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登場人物
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西園寺久遠(さいおんじ・くおん):http://kataribe.com/HA/06/C/0380/
気の優しい高校生。
諸事情あって、人並み外れて眼が良い。
少女 :(キャラクターシートなし)
ねぶらぎ流の後継者を自称する小学生。
時折、通り魔的に決闘を申し込む。
狩野しのむ(かのう・しのむ) :http://kataribe.com/HA/06/C/0395/
西園寺遙(さいおんじ・はるか) :http://kataribe.com/HA/06/C/0395/
或田衣留(あるた・いる) :http://kataribe.com/HA/06/C/0369/
久遠を取り巻く女性たち。
順に、冒険園児な妹(のようなもの),母親代わりの姉、電波系な彼女。
西園寺久遠は困っている
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西園寺久遠は困っている。
陽射しがじわじわと強さを増しつつ、しかし爽やかな五月の薫る風が心地
良く過ごし易い五月の半ば。まだ日の高い放課後のこと。
部活動もバイトもない久遠の放課後だが、気ままに見えて忙しい。
町内を冒険するしのむを探さなくちゃいけないし、お姉ちゃんの代わりに
買い物にも行かなくちゃいけない。読みかけの本も急いで読んで図書館に返し
にいかなくちゃいけないし。
──それから、たまには衣留さんとデートもしたい。
とにかく、忙しいのだ。
なのに。それなのに。
私は世界を巡って修行をしている格闘家だっ
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「私は世界を巡って修行をしている格闘家だっ。そこのお前っ、私と戦って
いけっ」
小学校の高学年ほどの少女が立ちふさがって言う。いきなり言う。
腰に手を当てて胸張って、人差し指をビシっと向けて言われてもどう反応
したものやら。
かてて加えてアドリブには弱い性質でもある。
「──えっ、あっ、あのっ、女の子とは戦えないですよぅ」
反応に困ってフリーズすること1秒。
それでようやくこれだ。我ながら情けないというか、通り越して頭が痛い
というか。
しかも、これがまた少女の逆鱗に触れたらしい。
「女と侮るか。死に装束をまとった決死の覚悟をあざ笑うつもりか。許さん、
ねぶらぎ流隆盛乱打破ーっ」
「うわっ──危ないですってばっ。やめてくださいっ」
もはや問答無用と少女は突進しながら、ぶんぶんと手を振り回す。
耳元を掠めて風鳴る音、デタラメに見えて的確に急所を目指す正確な狙い、
息つく暇もなく続く連打。
なるほど『世界を巡って修行をしている格闘家』というのも、あながち大
袈裟でもない。空手部主将で黒帯のクラスメイト、笹塚よりも腕が立つ。
だが生憎と久遠、生まれついて眼の良さには並ならぬ自信がある。
僅かな力み、体重の移動、視線の移動、呼吸の変化。久遠には全て見える。
そして、その先が予測できる。突き出された拳をかわすことはできないが、
突き出される前に動き出せば危なげなくかわすことができる。
つまり、守りに徹すれば分は久遠にある。
あぁ、ホントに今どき見ない白装束だ──すいすいと少女の拳を避けながら
思う余裕さえある。
だから。
「う、うわあああん」
「だからっ、危ないですってばっ──うわっ、泣かないでくださいよぅっ」
「うわあああん、避けるな卑怯物ーっ」
「そんなこと言われてもっ、当たったら痛そうだしっ」
悔しそうに顔中をくしゃくしゃにして、少女は久遠を追う。久遠は困り果て
つつも足を止めれば殴られると逃げ回る。
追う、逃げる。
逃げる、追う。
追う、逃げる。
逃げる、追う。
ついに少女は諦めて座りこんでしまった。
「わーんわーん」
ぼろぼろ涙をこぼして号泣。
「あっ、あのっ、泣かないで下さいってば」
流石の久遠も放っておけず、慌てて駆け寄りハンカチを差し出すが──
がしっ。
凄い力で手首を掴まれた。
やられたっ、と少女を見ればしてやったりと笑う顔。さっきまでの泣き顔が
嘘みたいだ──いや実際、嘘だったわけだけども。
「──はっ」
「くるっ、ぽいっ」
「うわーっ」
久遠の足が綺麗に跳ね上がり、そのままコンパスで描いたような弧を空中に
映して地面に叩きつけられた。仕上げに軽く、砂埃。
まさに一本取られた、というヤツだ。
それを満足げに見届けて、少女は再び泣き出した。
「うう、うわーんうわーん」
「痛たた。あっ、だから泣かないでくださいってばっ」
我ながら懲りないと思いつつ、またハンカチを差し出せば、少女は一瞬泣き
止んで鋭い表情で右手を掴みに掛かった。
予想通りと言えば予想通り。久遠は咄嗟に右手を引いた。
すかっ。
少女の手が宙を泳ぐ。くしゃっと歪んだ顔を、大粒の涙がぐしゃぐしゃに
濡らす。目も頬も真っ赤、呼吸も乱れに乱れている。
「うう、うわーん。尋常の勝負に泥を塗るひきょうものっ、うう、えぐっ
えぐっ」
「そんなこと言われても──あの、あ、そうだっ。勝負はいったん中断して
オヤツにしませんか? ほら、きっと疲れも取れますよっ」
「──これ以上ばかにするなーっ、うわああああん」
困り果てて捻り出した久遠の提案は、あっさり否決。
少女はものすごい勢いで走り去っていく。
生憎と、久遠は泣きじゃくる少女を見捨てて立ち去れるタイプではなかった
ので。
「あぁっ、もうっ」
少しだけ迷ったあと、少女が去っていった方へ走り出すのだった。
やっぱり西園寺久遠は困っている
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西園寺久遠は困っている。
陽射しがじわじわと強さを増しつつ、しかし爽やかな五月の薫る風が心地
良く過ごし易い五月の半ば。まだ日の高い放課後のこと。
部活動もバイトもない久遠の放課後だが、気ままに見えて忙しい。
町内を冒険するしのむを探さなくちゃいけないし、お姉ちゃんの代わりに
買い物にも行かなくちゃいけない。読みかけの本も急いで読んで図書館に返し
にいかなくちゃいけないし。
──それから、たまには衣留さんとデートもしたい。
とにかく、忙しいのだ。
なのに。それなのに──
時系列と舞台
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5月の半ば頃、吹利市内の人通りの少ない路上にて。
解説
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放課後の久遠、ねぶらぎ流の少女に出会う──というお話。
女の子を泣かしちゃいけません。
関連リンク
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元ログ
http://kataribe.com/IRC/HA06/2005/05/20050522.html#210000
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