[KATARIBE 28806] [CHN] 小説:『題名未定、その一』

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Date: Wed, 25 May 2005 07:23:15 +0900
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Subject: [KATARIBE 28806] [CHN] 小説:『題名未定、その一』
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 ぱらでぃんです。

 字面を揃えて題名をつけてましたが、うっかり文字コードを見ていなかった
ために今回は題名が一番の難産でした。結局、暫定でこうしました。

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小説:『題名未定、その一』
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 加圧器の調子がよくないのか、キは不快な膨張感にさいなまされて覚醒した。
代謝管を鳴らして不快感をひとり表明しつつポッドのコンソールを確認するが
人工重力の状態はいつも通り母星と同じ値にセットされている。
 思考粒子の分泌に連動した生命維持装置が体表に硫化水素を噴出させ、組織
を活性化させる。弛みきった形成筋を再構成し、感覚器を使いやすい場所へと
集中。
 複合樹脂で隔てられた外界では今まさに一連の作業が大詰めに入ったところ
であるらしく、慌ただしく飛び回っていたポッドも整然と議場の中心を向いて
展開している。
 寝ているうちに舞い込んでいた細かい案件や個人的な対話を処理すると、途
端にやることが無くなり、キにも儀式の前にした静謐が訪れる。
「チューブ漬けにしたってせいぜい五百年で限界が来る奴らと俺たち長命種を
一緒にするなっての」
「口が過ぎるぞ、マ」
 左側面の思考組織が自律し、刺々しくスピンした思考粒子を投げつけてくる。
「お前さんもそう思ってんじゃねえのか」
「帝国に参画している以上、我々も平均的な種に合わせるのが利口なやり方だ」
「すっかり模範的帝国市民とやらになりやがったな、キ。皆で仲良く化け物と
星を殺しても、向こうはたかだか数百年で退場だ」
「お前こそすっかり短命種の発想が身についたようだな、マ。記憶野ごと退避
人格を作れば問題はなかろう」
 思わぬ反撃であったのか、副人格は沈黙する。
「どうせ任期はもう切れる。私が副人格に沈むというのも選択肢に入るな」
「お前さんのそういう献身ってやつが鼻につくんだよ」
「それこそ短命種の発想だ。この肉体が保持される限り私も保持される。お前
のように時々出てきて茶々を入れたほうがよほど楽だ」
「はいはい。せいぜい後悔しなさんな」
 無駄話をしているうちにも時は進み、スタートリガー起動コードを送信する
プログラムがポッドのコンソールに転送され、画面に帝国共通語で説明文が表
示される。
 元老院議員全員から分解されたコードが結合用プログラムで結合され、それ
が新星化の指示を与えるという手順で議員への精神的負担を軽減する。そう説
明されている。
 議場中心の投影型球モニタに送信を指示する文字列が映され、議員が乗るポ
ッドにも彼らの母語でその旨が表示される。
 キも触腕を形成してコンソールを叩く。
 そして、それは始まった。

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