[KATARIBE 28790] [CHN] 小説:『醒』

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Date: Sat, 21 May 2005 22:16:14 +0900
From: Paladin <paladin@asuka.net>
Subject: [KATARIBE 28790] [CHN] 小説:『醒』
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 ぱらでぃんです。

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小説:『醒』
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 胸ポケットから噴霧器を取り出し、鼻腔に一噴き。中に篭められた薬剤芸術
家謹製の薬物が作用し、ガアクの思考が弛緩する。ボロ船が豆粒のように見え
る宇宙空間へ飛び出す共に空洞泡の深淵へ叩き込まれ、網膜に星虹の波長が乱
舞する。
 コンソールがコンマ一秒を数えるより速く彼は現実へ戻り、当直を続行する。
副作用は芸術家連中が稼げるように少し織り込んだ習慣性のみ。ちらと後ろを
覗けば、ジャンクヤードで拾ったコンソールをいじって作った電極のオバケに
身を沈めている相棒が恍惚の表情を浮かべている。
「ったく、金物野郎はよ」
 地球人類であるガアクとは身体組成が違う彼らにとって擬験はただの仮想現
実でなく、それ以上の何かを感じることができるらしい。体表がぼんやりと光
り、ちらほらと火花が散っている。
 耳の奥でビープが鳴り、網膜への情報投影を求められる。思考トリガが許可
を送ると共にオレンジの細かい文字がだらだら続く。
「エマージェンシー出るんだから当直なんて意味ねえんだよ」
 法規への愚痴をこぼしながら文字列を読み込む。規定値を超えた事象海面の
ゆらぎ。
「おいでなすったか」
 コンソールにゆらぎの中心付近が投影される。
「はあ、何だよこれ」
「どうした」
「波だ。いつもの百倍はあるぞこりゃ」
「何だそれ。ヤクのやりすぎで機械も壊れたか」
「馬鹿言うな。そっちに回すぞヌゥ」
「おう」
 擬験を切った電気椅子にデータが流れ込むとヌゥが嘆息する。
「俺様もあれだ、電気通しすぎか。確かに桁が違う」
 ガアクの指がスイッチの上で震える。
「本チャンが来たらいちころだ。トンズラこくぞ」
「いや」
 後に帝国が発表した記録によれば、星呑みが姿を現した瞬間にゼータ・レテ
ィキュリのセントールおよそ五度角が消滅したとある。

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