[KATARIBE 28599] [HA06N] 小説『春の日の花火』

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Date: Fri, 1 Apr 2005 16:15:21 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28599] [HA06N] 小説『春の日の花火』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200504010715.QAA88769@www.mahoroba.ne.jp>
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/N/
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2005年04月01日:16時15分20秒
Sub:[HA06N]小説『春の日の花火』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーる@忙中閑有リ です。
昨日のログを元に、話にしてみました。
てか、途中で落ちちゃったんで、どうしても六華に言わせたい台詞が(がふ)
<どうしてそれで一つ話を書きますか己!

 ねこやさん、れあなさん、はりにゃ、それぞれ台詞とか登場人物紹介に問題ありましたら、
宜しくお願い致します(ぺこり)。

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小説『春の日の花火』
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 登場人物
 --------
 桜木達大(さくらぎ・たつひろ) 
     :底の知れないシステム管理者。 最近すっかり若旦那扱いされている。
 六華(りっか)
     :元花魁の冬女。現在桜木宅に居候中。
 前野浩(まえの・ひろし)
     :無道邸の執事。相当腹黒らしい。六華のスノウドームの作者。
 兎夜宵姫(うさぎや・よいひめ)
     :吸血姫。花火に関しては相当危険かもしれない。


本文
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 里見アパートの一室の目当ての扉のブザーを押す。
 奥から返事がある。
 その声に少し首を捻ったものの、黒尽くめの人物は大して表情を動かすでも
なく、扉が開く音に少し身体をずらした。
「……どちらさまでしょうか?」
 よいしょ、と、開いた扉の間から、予想通り見たことの無い顔が覗いた。
 一見年齢を判断しづらい、どこか少女めいた顔である。
「すみません、前野と申しますが……桜木さんは」
「達大さんはまだ帰っておりませんけど……あの、何か?」
「じゃあ、お渡ししておこうかな」
 黒尽くめに黒いサングラス。春の初めのうららかな日差しには、いささかな
らず不似合いな服装のその人物は、厚みのある封筒を手渡した。
「古い写真が出てきたんで、お返ししようと」
「あー……はい」
 ぺこ、と、頭を下げたはずみで、長い髪がこぼれる。それを後ろに払いなが
ら少女……六華はにこりと笑った。
「達大さんにお渡ししておきますねー」
「お願いします」
 そう言うと、前野と名乗った黒尽くめの人は一礼し、きびすを返しかけたが、
「……申し訳ありませんが、貴女は?」
「あ、六華と申します」
「りっか、さん?」
「六に華、と、書きます」
 空にすらすらと書いてみせるのを見て、相手はふと、得心がいったようにこ
くりと頷いて……
 そしてふと、思いついたように口を開いた。
「まぁ、当時の話は達大さんのほうが詳しいんで、色々と思い出を話してくれ
るとおもいますよ」
「あ、はい……」
「じゃ、宜しくお願いします」


 ……そして数時間後。
「写真、ですか……六華さん、中を見ました?」
「いえ」
 少し驚いたように六華は首を振る。
「それ、無礼ですよー」
「──」
 なんとなく微妙な表情のまま、達大は封筒から写真を振り出す。
 はずみで一枚が達大の手を外れ、床へと滑るように流れたのを、六華の手が
掬い上げた。
「懐かしい写真ですね」
 外で会ったとかで達大にくっついてきた、ショートカットの黒い髪に金の虹
彩が良く似合う少女が、それを覗き込む。
「綺麗な方たちですねー」
 にこにこ、と、六華が笑う。

 長い髪の少女と、おかっぱの少女。
 そっくりの顔立ち。
 長い髪の少女のほうが、ややきつい表情かもしれない。

「ああ……巽ヶ丘さんだ」

 どれです、と、差し出した手に六華が写真を渡す。受け取って達大は頷いた。

「可愛らしい方たちでしたよ。妹ができた気分だったなぁ」 
「……あら、彼女じゃなかったんですか?」 
 どこかあどけないような顔のまま、六華が小首を傾げた。
「うーん。微妙でしたねぇ──彼女のような妹のような。あの年頃の女の子で
すから」 
「…………ふむ」 
 妙に生真面目な顔で、こくり、と、頷く六華に、達大は苦笑して続けた。
「ごっこ遊びみたいなものでしょう。恋に恋するって状態で」 
(まぁ、ヨコシマなことを思いつきもしなかったからなぁ。ようするに妹だっ
たんだろーな) 
 そこらの判断は当然ながら口には出さない。
 ふむ、と、もう一度頷いた六華は、にこっと笑った。
「それは……ある意味とても純粋だったんですね」
「どう……かなあ」
 邪気が無いのか、カマをかけられているのか、微妙な言葉をふわりと避けて。 
「案の定、飽きられちゃってしばらくお会いもしてません」
「あらら……」 
「いっしょに花火とかして、仲良さそうでしたのにねえ」 
 私も一緒に遊びましたから、との言葉に六華が少し目を細めた。
「……花火、ですか……」 
「えぇ。公園で」 
「……なんだか懐かしい単語ですね」 
 六華の言葉に、金の虹彩の少女……宵姫が大きく頷いた。
「楽しかったですよ。あ、今度みんなでやります?」 
「……見たい、なあ」
 ぽつりと呟いて、六華はふと視線を宙に浮かせる。
 まるで……遥か昔の光景を思い出してでもいるように。

「──わかりました。じゃぁ、今夜、公園でやりましょう。花火大会」
 今夜? と、宵姫が流石に頓狂な声をあげる。
「せっかちさんですねえ」 
「はい」 
 にこにこと……そしてあっさりとそう頷いた達大に、六華はほこっと笑った。
「……あ、じゃ、線香花火見たいです」 
「鍵屋、玉屋は夏までのお楽しみで──えぇ、線香花火と。あと火狐さんは派
手なのが好みなので、その辺りも」 
「はい」
 嬉しそうに頷いた六華の横で、約一名。
「うふふ、たしかどこかに、とっておいた奴があったかしら」
 どうやら妙なことを企んでいるようで。 
「それじゃ買いに行ってきます。六華さんは、できたらお酒と簡単につまめる
食べ物を仕入れておいてください」 
「あ、はい」 
 じゃ、お願いします、と部屋から出て行こうとして……

 戸口のあたりでふと、達大は立ち止まって振り返った。
「ちなみに、ボクは一度に二兎を追えるほど器用な性質じゃありませんので」 

 そのまま、くるっ、と再びきびすを返して部屋から出てゆく。
 数瞬の沈黙の後、宵姫がくすくすと笑い出した。
「つまり、そう言いたかったんですね、さっきから」
 言いながら宵姫は傍らの自分よりかなり小柄な相手に目をやり……
 そしてふと、その笑いを止めた。
「…………それほどに器用な方とは」 
 少し首を傾げるようにして、六華は微笑んでいた。
 ひどくやさしい笑みに見えた。
「……思ったことは、ございませんよ」
 達大さん、と、小さく念を押すように呟いて、六華はまた微笑った。
 どこかしら哀しげな……とも、宵姫の目には見えた。

 ほんの数瞬。
 そしてまた、六華は長い髪を一度後ろに払った。

「あ、しまったなー」
「え」
「お酒って、日本酒で良かったのか、訊くの忘れてました」
 あたし、日本酒しか良く知らないんですよー、と。
 いつものように、六華は笑った。


時系列
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 2005年3月終わりから4月のはじめにかけての、暖かい日

関連ログ
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http://kataribe.com/IRC/HA06-01/2005/03/20050331.html#230000

解説
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 交友関係が問題なのか、それが性格なんだか。
 妙に不器用な若旦那と居候の風景……でしょうか。
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つーか。己、達大さん書く時は、大概ログを元にして書いてるんですけど。
だから台詞なんかはねこやさんが書いてるままなんですけど。
……なんでこうも不器用かな若旦那(苦笑)。
#己の書き方が悪いのかなあ(むーーー)



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