[KATARIBE 28592] [HA06N]小説『結婚騒動 断章』

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Date: Wed, 30 Mar 2005 09:19:42 +0900
From: 月影れあな <tk-leana@gaia.eonet.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28592] [HA06N]小説『結婚騒動 断章』
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 おいっす、れあなです〜。
 なにやら大騒ぎなので、芽衣さん辺りの事情も書いてみたりする〜。

 いや、別に『折角だから最後くらい一枚噛んどこう』なんて思ったわけじゃ
ナイデスヨ。アハハ


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小説『結婚騒動 断章』
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登場キャラクター
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 本宮幸久(もとみや・ゆきひさ)
     :葬儀屋さんで霊感のある軟派にーちゃん。
     :行き当たりばったりに花嫁を浚ってしまう。
 藤村美絵子(ふじむら・みえこ)
     :幸久の元カノ。ちょっと気が強いけどいいお姉さん。
     :来ない新郎に心が揺れ、自棄になって幸久に浚われる。
 蓮池芽衣(はすいけ・めい)
     :美絵子とは中学時代からの親友、幸久とも仲が良い。
     :幸久に想いをよせていたらしいが……
 仲本佐緒里(なかもと・さおり)
     :その昔、幸久を狙ってたらしい人。現在は関係ないらしい。
     :何だかんだいって美絵子や幸久とは今では友人らしい。


芽衣 〜〜取り残された式場で
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 走り去る幸久の姿を見送って、芽衣は小さくため息をついた。
 新郎は未だ現れず、新婦が連れ去られた会場は当然のことながら騒然として
いる。式場の人間も同様だ。ドラマなんかではありがちな、『花嫁強奪』とい
う展開だが、実際はそうあることじゃないだろう。
 そう思って芽衣は、少しだけ同情的な視線で関係者一同を眺めやった。

「でもま、ある意味理想的な展開か」
「なにがよ? 大騒ぎじゃない」

 芽衣の独り言に、佐緒里が耳ざとく反応する。

「佐緒里のことだから感づいてたでしょ、美絵子の微妙な気持ち」
「一応、薄々とは……ね」

 美絵子は、二股をかけない。
 芽衣は一度、なにかの時に話したことがあった。美絵子は最低限の礼儀だと、
そう言っていた。
 美絵子と幸久を見て、しこりのような違和感が残った。
 好きな人が出来たから幸久と別れたか、幸久から別れたかったから好きな人
が出来たことにしたのか。少なくとも、美絵子の幸久を見る目は、多少の翳り
こそあれその奥に潜む情熱は、あの頃と全く変わりないように思えてならなかっ
たのだ。
 疑問を確かめることは、けれど芽衣には出来ようもなかった。例え聞くこと
が出来ても、美絵子は答えなかっただろう。

「このまま何事もなく結婚してたら、美絵子はきっとユキを引きずってた。だ
からあたしは、今の展開は理想的だって思う。こうなったらもう、美絵子はどっ
ちかいらない方を選んで、捨てなきゃならない」
「でも、結婚式はメチャメチャじゃない」
「美絵子とその婚約者サンが付き合って何年になる? あたしは日本にいなかっ
たから正確には知んないけど、結構になるって聞いたよ。それだけの時間を一
緒に過ごして、ユキがちょっと横槍入れたくらいで破綻するってんなら、最初
から愛なんてなかったってことよ」
「芽衣、あなた幸久くんのことが好きだったんじゃないの?」

 芽衣が淡々と言い切ると、佐緒里は複雑そうに眉をしかめ、言った。
 直球の言葉に、芽衣は一瞬だけ口ごもる。

「好きだったよ。うん、今でも多分、あたしはユキのことが好きなんだと思う」
「じゃあどうしてそんな、恋敵が有利になるような状況を喜べるの?」
「……美絵子のことも好きだから、かな?」
「あなたの気持ちは?」
「ちゃんとあるじゃん、好きって気持ちはさ。あたしは二人ともが好きだから、
二人ともに幸せになって欲しい。それだけだよ」
「呆れた、それって恋愛じゃないんじゃないの?」
「じゃ、アガペーとでも言う? なんでもいいの、別に」

 実際は、そんな簡単に割り切れることでもなかった。日本へ帰って美絵子と
幸久が別れたと聞いて、芽衣の心が高鳴ったのも確かだ。
 しかし、嘘をついたり、自分を騙しているつもりは、芽衣にはこれっぽっち
もなかった。

(あたしもまだまだ未熟ってことか……)

 また一つため息をついて、辺りを見回す。
 喧騒と混乱、怒鳴り声も時折聞こえる。本当に来るのかすら怪しい新郎もま
だついていないようで、打開案も無いためか、先ほどから状況は変化していな
い。

「ちょい……」

 芽衣は唐突に立ち上がると、佐緒里に手招きをして歩き出す。

「なに?」
 追ってきた佐緒里が不審そうに聞いてきた。

 どうせ誰も聞いていないだろうが、一応もう一度辺りをうかがって、声をひ
そめ耳打ちする。

「ユキに電話。ここじゃ落ち着いて話せそうにもないでしょ」

 あっと口を開く佐緒里。まさか、幸久の電話番号を知らないわけもないだろ
うに。流石の佐緒里も動転しているのか、携帯の存在に思い至っていなかった
ようだ。
 そんなことを考えながら、人気のない場所を探し、携帯を取り出す。
 十秒、二十秒、まさか、電源切ってないだろうなと心配になり始めたところ
でようやく、声が流れ出てきた。

『はい、本宮です』

 電話の向こうから聞こえたのは、はいつもと変わらない幸久の声だった。

「このドアホがッ!!」

 芽衣は思い切り罵声を叩きつけた。


時系列と舞台
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 2005年3月26日
解説
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 幸久の突然の行動にホッとする芽衣。
 けど怒鳴りつける。


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