[KATARIBE 28571] [HA06N] 小説『ありえない光景』

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Date: Thu, 24 Mar 2005 00:33:07 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28571] [HA06N] 小説『ありえない光景』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年03月24日:00時33分07秒
Sub:[HA06N]小説『ありえない光景』:
From:久志


 久志です。

 ゆっきーがんばれ、これからだ。

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小説『ありえない光景』
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登場キャラクター 
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 本宮幸久(もとみや・ゆきひさ) 
     :葬儀屋さんで霊感のある軟派にーちゃん。 
     :今更自分の気持ちに気づいた鈍い奴。
 藤村美絵子(ふじむら・みえこ) 
     :幸久の元カノ。ちょっと気が強いけどいいお姉さん。 
     :三月末に結婚式を控えていたりする。

胸の痛み
--------

 どれほど辛くても。
 どれほど苦しくても。

 今日が過ぎて明日が来て、また次の日になる。
 ぽっかりと心に風穴が開いたまま、それでも時間は待ってくれない。

 会場設営の図面を片手にバイト連中相手にあれこれ指示を出しながら、小さ
くため息をついた。
 とにかく今は、何も考えずに仕事に打ち込んでいたい。

「ユキさん」
「ん?」
「最近どうしたんですか?」
「なにがだよ」
「いやその、なんかその、このところ妙に目がウツロですよ」
「……んなことねえだろ、ぼさっとすんなよ」

 早朝から吹利を離れて、わざわざ仕事で京都くんだりまできてるんだ。
今自分がやんなきゃなんないこと、きっちりこなさないとな。

「社長は?」
「奥でご親族のかたと打ち合わせ中です」
「わかった」

 小池のおやっさん。
 俺はまだおやっさんのような想いにはたどりつけないけど、俺はあいつを諦
めきれないけど、いつかはおやっさんのようにあいつの幸せを祈れるだろうか。

 ただ母さんの幸せを祈ったおやっさんのように……

『ただ、これだけは言える』
『君のお母さんもお父さんも、私にとってかけがえのない人達なんだよ』

 美絵子。
 お前は、俺にとって。

 本当に、大切で。

「ユキさん?」
「ああ、すまん」

 胸が痛い。
 でも、あいつに気持ちを伝えたことは後悔していない。


 日も大分傾いて、夕方に差し掛かった頃。早朝から続いていた仕事を終えて、
俺と後輩は帰りの途中に立ち寄った店で簡単に食事をしていた。
 良くあるチェーン店の二階席、窓際の席に男二人が陣取って、表の人通りを
ぼんやり見ながらサンドイッチをむさぼってる。正直サムイ図だよな。

「せっかく京都まで出たのに、全然することないですねえ」
「当たり前だろ、遊びにきてんじゃねえぞ」
「そーですけどねえ」

 注文したタマゴサンドをかじりながら、コーヒーで流し込む。

「てか、ホント。ユキさん大ジョブですか?」
「なにがだよ」
「いや、なんかマジで目死んでますよ」
「……んなことねえよ」
「なら、いーんですけど、ねえ」

 やっぱ、わかるもん、なんかな。
 式は……もう明々後日なのか。

 一瞬考えに浸ってると、向かいの席で窓の外を見ながらコーヒーをすすって
いた後輩が俺のひじをつついた。

「ユキさんユキさん」
「んだよ、急に」
「あのカップル、見てくださいよ」
「あ?」

 後輩が指差す先を見ると、人通りもそれなりにある通りだっつうのに、若い
男と女が向かい合って手を取り合ってる。つうか、女のほうは涙ぐみながら、
しがみつくように男の手を握ってる。

「おアツイですねえ、なんかドラマみたいです」
「なに見てんだよ、お前」
「いやあ、だって見ちゃいますよ」

 頬に涙を伝わせながら、男の手を握る女。
 指先で女の頬を拭いながら、女を慰める男。

 ったく、この人通りの中で見せつけてくれるじゃねえかよ。

 って。
 ふと、何故か、男のほうの顔にどこか見覚えがあるのに気づいた。

 え?
 思わず窓の外を凝視した。

 え?
 思い当たった相手の顔。

『北原一也さん、これが写真よ』

 って、おい。
 ちょっと待てよ。

 美絵子のやつに何回か見せてもらった写真。

 待てよ、おい。
 なんなんだよ、それ。

 当の男は泣いてる女の方を抱いて、そのまま雑踏の中に消えていく。
 ちょっと待てよ、おい。

「ユキさん!?どしたんですか?」

 困惑げな後輩の声も耳に入らない。

 そのまま席を立って駆け出す、あやうく転がり落ちそうになりながら階段を
駆け下りてた。

「ユキさんてば!」

 勢いよく店を飛び出して途中何度も通行人にぶつかりながら、あの男が女と
二人で歩いていった後を追う。
 けど、夕方の人ごみの中。もうあの二人の姿はどこにも見えない。

「くそっ」

 思わず力任せに地面を蹴りつけた。

 なんなんだよ!

 ありえねえよ!

 どういうことだよ!

 あいつの式……明々後日じゃねえかよ。

 ちくしょう!
 どうすりゃいいんだ。

時系列と舞台 
------------ 
 2005年3月23日
解説 
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 美絵子に引導を渡された幸久、仕事で京都へ来た折に見かけたのは……
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
以上 

 さあ、どうするゆっきー



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