[KATARIBE 28551] [HA06N] 小説『行動開始それぞれ』

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Date: Sat, 19 Mar 2005 18:39:55 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28551] [HA06N] 小説『行動開始それぞれ』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年03月19日:18時39分54秒
Sub:[HA06N]小説『行動開始それぞれ』:
From:久志


 ちは、久志です。
 ツンデレ事件簿、そろそろなんとかしないとなあ。
そろそろ大詰めむけて強引にでも押し進める所存。

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小説『行動開始それぞれ』
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登場キャラクター
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 本宮史久(もとみや・ふみひさ) 
     :吹利県警巡査。のほほんお兄さん。またの名を昼行灯。
     :2000年当時、26歳。
 卜部奈々(うらべ・なな) 
     :吹利県警警部。一見キツイ女性。ちょっと微妙
     :2000年当時、24歳。
 相羽尚吾(あいば・しょうご) 
     :吹利県警巡査。ヘンな先輩。別名おネエちゃんマスター 
     :2000年当時、28歳。 
 石垣  :刑事課の応援の人。

史久 〜噂の古物商
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 古物商とか骨董店とかいうと、古めかしい店構えとか怪しげな雰囲気とかい
うイメージをしがちだけど、本当に怪しくて古めかしい店というのは案外多く
はない。その手の店は、大抵わざとそういう雰囲気を作っているし、そのほう
がお客さんの受けがよく品物の購買意欲をそそる。イメージに合った店作りと
いうのは、どの商売においても必要なものだ。

「思ったより小さいお店ですね」
「ええ、調べでもそう古いお店でもないようです」

 今日の目的である例の古物商も、一見店構えこそ古めかしいものの、あくま
で雰囲気を出す為にわざと古く見せかけて作った感のある、特に目立って不自
然な所も見当たらない、ごくごくありふれた店に見える。

 けど、逆に。
 なんだろうなあ。
 あからさまに普通を装ったありふれた店構え、特に目立った商品もない品揃
え、見せ掛けだけの雰囲気。
 この完全につくりものめいた店構えにどこかちょっとズレた何かを感じる。
 自然に見せようとしすぎて、逆にちょっと不自然な……何か。
 まあ、僕の勘に過ぎないけれど。

「では、警部お願いします」
「わかりました」

 当初の打ち合わせ通り、警部が店内の品物をあれこれ見聞きして店主の気を
引く間、僕は少し店内を見回してみる。
 少し落とした照明。店内を分断する細い棚に狭い通路、その棚には風情はあ
るが実用性には欠ける小物が並び、店の壁際にはガラスケースで仕切られた棚、
その奥には少々値の張りそうな置物や、年代ものらしい古びた時計などが並ん
でいる、しかし今ひとつ特に目も引くものは置いていない。

 目立たない品揃えの中、店の奥に埋もれるように、ぽつんとおかれた屏風が
見える。特に目を引かない似たり寄ったりな品物ばかりの中、いかにも価値の
ありそうな本物の風情を醸し出している。これが警部の調べた品かあ、確かに
なかなか良い品ですね。でも、なんだか不釣合いだなあ。

 ついっと視線を店主のほうに向けて、棚に置かれた商品を見る振りをしつつ
様子や雰囲気を窺う。少し白髪交じりの髪貼り付けたようなよそゆきの笑顔、
それだけならば別に珍しくもない。仕草や雰囲気にもそう変わった様子は見受
けられない。これが普通の会社勤めの人だと言われれば違和感はないだろう。
だけど、このまったく儲かっていそうな気配もない店の店主だと言われると、
少し引っかかる。
 儲かっていない古物商などいくらでもあるだろうが、そういう店主たちは少
なくとも仕事や品物に対して愛着を持っている。だが、目の前で警部相手に受
け答えるこの店主には古物商という仕事に愛着も感じられない。しかし、そん
な店主がこの屏風ともうひとつ値打ちものらしい絵巻を買ったという理由がい
まいちかみ合わない、やっぱり不釣合いだ。
 店主の視線を避けて背後に回りこみ、会話中の警部に小さく手で合図した。
 一瞬、こちらに気づくと、すぐに店主を呼び奥のガラスケースの前へと誘導
した。
 警戒しつつ、そっと擦り寄るように屏風の置かれた店の隅へと足を滑らせる。
ゆっくり手を伸ばし、屏風の表面をそっとなでてみる。
 ざらっとした感触の中、微かに不自然に湿った感触を感じる。
 おかしいな。何故、購入して間がないはずの屏風の表面が湿っている?

 気取られないように、軽くこぶしで表面を叩いてみる。
 返ってくる衝撃が……ちょっと鈍い。

 これは、何かが、ある。


相羽 〜流石の先輩
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 助手席に座ったまま、胸ポケットから携帯電話を取り出す。
 さして古すぎるわけでもないが最新式でもないありふれた型。少々使い込ま
れてるせいもあり、多少の傷は否めない。まあそろそろお役御免の時期かな?
そろそろメモリもボロくなってきたし、電番もヤバくなってきた。
 さて、この時間帯だとおネエちゃんはおねむかな、まあ一応かけてみようか。
手打ちで番号を叩いて通話ボタン押す、二回目半のコールで相手が出た。

「もしもし……ああ、起きてた?ごめんねこんな昼間に……うん……そ、察し
がいいねえ、なんか思い出したことでもあった?……ああ……そっか、いや悪
いね急に……ん、ああいいよ……また顔見に行くからさあ、ね?……わかった
わかった、ご同伴しましょ……また電話するから……じゃあまたね」

 さて、追加情報は無しか。
 ぱたんと二つ折りの携帯をたたんでポケットにしまう。

「……相羽さん」
「ん?どした」

 運転席に座った、応援の後輩が微妙に何か言いたそうな目で見てる。
 まあ、言いたいことはわからなくもないけどねえ。

「いえ、なんでもありません……」
「まあ、これもお仕事の一環よ?堅いこと言わないの」
「……ええ、まあ、そうですけど」

 石垣ちゃん、そんな微妙な顔しなさんなよ。俺、真面目に事件追ってるよ?
誤解されやすいねえ、まったく損な役割だよ。

 さて、羽振りのいい男をもちょっと細かく洗うには、やっぱおネエちゃんと
片言の日本語で通じそうな場所……アポロレーン……かね、やっぱり。おネエ
ちゃんタイムまでにはまだまだ時間あるし、今の時間でアポロレーンに顔出し
てもそれほど収穫がありそうもないな、とすると男はひとまず後回しか。
 そいじゃ目撃情報収集もかねて、周辺と最近挙動がおかしくなった不審人物
の聞き込みの方に力を入れるとしますかね。

 手にしたファイルのリストをぱらぱら手繰る。ここ数日で集めた挙動不審人
物の一覧がまとまってるが、その数は相当多い。まあ、細かい情報がさして出
てない以上大まかな絞込みができないってのも痛いところだが。一応、その中
で特に勘にひっかかりそうな人物を数名チェックしてある。とりあえず片っ端
から当たってみるとしようか。

「んじゃ聞き込み継続といこか、石垣」
「は、はい」


時系列と舞台 
------------ 
 2000年2月頃 
解説 
---- 
 史久と奈々さんの出会いの頃。小説『捜査の理想』の続き。 
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以上。

 もちょっと書こうかと思ったけど詰まったので流す(おい)



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