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Date: Tue, 15 Mar 2005 00:48:35 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28541] [HA06N] 小説『ひっかかる心』
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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2005年03月15日:00時48分34秒
Sub:[HA06N]小説『ひっかかる心』:
From:久志
久志です。
『のばせない手』の続きです。
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小説『ひっかかる心』
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登場キャラクター
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藤村美絵子（ふじむら・みえこ）
：幸久の元カノ。ちょっと気が強いけどいいお姉さん。
：三月末に結婚式を控えていたりする。
本宮幸久（もとみや・ゆきひさ）
：葬儀屋さんで霊感のある軟派にーちゃん。
：今更自分の気持ちに気づいた鈍い奴。
2/13 〜帰り道
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なんだか、なあ。
なんで、こんな急に昔のこと思い出したりしたんだろう。
「大丈夫か？」
「うん、ごめん」
ことんと、手にしたカップを置く。少しさめたミルクティーの表面が小さく
揺れた。喫茶店のカウンター席に座ったまま、隣の席のユキがじっとこっちを
見てる。
なんでかな、ユキの視線が痛い。
こっちの気持ちなんて、あいつちっともわかってないはずなのに。
「帰ったほうがいいんじゃねえか？送ってこうか？」
「平気、ちょっと疲れがでただけ」
「なら、いいんだけど、さ」
なにか、言い出しにくそうな風に、こっちをちらりと見る。
「……忙しいんじゃねえの、今の時期ってさ」
式は三月二十六日。
もうあと一ヶ月ちょっとのはずなのに、なんだか他人事みたいで実感が湧か
ない。細かい打ち合わせとか衣装合わせとかもあるし、それなりに慌しいはず
なのにね。
「……別に、周りがばたばたしてるだけよ」
「そう、か。なら、いいんだけどよ」
「うん」
途切れる会話。
でも、さっきまでの重苦しさはない。
ちょっと久しぶりに、昔みたいに二人でいたせい、よね。
ただの感傷、よね。
もう、あたしもユキも、昔とは違うものね。
そういうもん、よね。
「なんかゴメンね、急に」
「いや、俺は平気だけどよ、その……お前の調子の方がさ、大事だろ、今は」
「……うん」
「今、さ。大事な時期なんだろ」
「……まあ、ね」
そういうものだと納得して、理性で自分を言い聞かせて。
でも、まだ少し。ちょっとだけ心の奥で何かがひっかく。
でも、もう今はあの頃みたいに無鉄砲になれない。
もう今は、あの頃みたいに一直線でいられない。
「そろそろ、出よっか」
「ん、ああ」
席から立ち上がろうとして、目があう。
「美絵子」
ゆっくりとユキの手が近づいてくる。
近づいた手が髪に触れる前に、止まる。
「……出るか」
「……うん」
それる視線。
やっぱり、なあ。わかってたはずなのに。
もう、期待なんてしないって、何度となく思ったはずなのに。
それでも、どこかでまだ期待してたのかな。
胸の奥で、ひっかく何か。
もう、忘れよう。
あたしからは、もうなにもない。
もう、がっかりしたくない。
時系列と舞台
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2005年2月13日
解説
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小説『のばせない手』の続き。
複雑な心境の中、やはり手をのばせない幸久に、美絵子は。
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以上
ゆっきー
お前を殴りたい……（むしろ殴られるべきはPLだと思います）
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