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Date: Sat, 12 Mar 2005 01:31:10 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28534] [HA06N] 小説『のばせない手』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年03月12日:01時31分10秒
Sub:[HA06N]小説『のばせない手』:
From:久志
久志です。
ダブルデート初回のゆっきー美絵子組、幸久サイドの心情です。
短いですがねえ。
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小説『のばせない手』
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登場キャラクター
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本宮幸久（もとみや・ゆきひさ）
：葬儀屋さんで霊感のある軟派にーちゃん。
：今更自分の気持ちに気づいた鈍い奴。
藤村美絵子（ふじむら・みえこ）
：幸久の元カノ。ちょっと気が強いけどいいお姉さん。
：三月末に結婚式を控えていたりする。
のばせない手
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適当に入った喫茶店、まだ夕方のそれほど遅くもないという中途半端な時間
のせいかかなり空いている。ほとんど引っ張り込むように、美絵子の腕を引い
てカウンターの席に座らせる。
「大丈夫か？」
「……うん」
ちっとも大丈夫に見えねえよ、おい。
なんでか理由はわからんが、一緒に歩いてる途中、急にこいつの様子がおか
しくなった。もともと今日の呼び出しだって、桜木のやつと六華にはめられて
連れ出されたわけで、ひょっとしてお前調子悪いのを無理してきてたんじゃな
いのか？
「なあ、調子悪いのか？」
「……そんなんじゃないわよ」
「ちっともよく見えねえよ。少し休んで落ち着いたら送るから帰れよ、な？」
「違う……大丈夫だから、少しほっといて」
「……そう、か」
美絵子の奴はカウンターに肘をついて両手で顔を押さえてる。
隣に座った俺は、それきりなにもできない。
「……美絵子」
思わず手が伸びて、そのまま髪を撫でようとして。慌てて手を引っ込めた。
って、おい。それはまずいだろ、俺。
「飲みもん、紅茶でいいよな？」
「……うん」
こいつは、三月末に結婚する予定で。もう、俺のもんじゃない。
俺には、こいつに触れる資格なんて……ない。
顔を押さえてうつむいたままの美絵子の隣で、俺は何もできず、ただ横で
見つめているだけ。
手を、伸ばしたい。
けど。
『ね、ユキ』
『なんだよ』
『愛してるって、言ってみ？』
あの時、言えなかった言葉。
今なら……
なんだかな。
どうして、今頃。
なんで、今更。
もう、どうしようもないのに。
手を握り締める。
どうしてもっと早く、もっとずっと前に、というかあいつにあの台詞を言わ
れたあの頃に、気づかなかったんだよ、俺。
なのに。
もっかい、あの髪に触りたい。
肩だきよせて、頭を撫でてやりたい。
「……美絵子」
「……大丈夫、だから」
「……そう、か」
そんなこともうできやしないのに。
もう、何もかも手遅れなのに。
こんな状況になって、やっと気づいたのかよ、俺。
莫迦だろ、俺。
本当に、莫迦だ。
時系列と舞台
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2005年2月半ば。
解説
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常に自分に自信のない男、幸久。
やっと自分の本当の気持ちに気づくも、それを伝えられず。
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以上
ゆっきー、お前は本当に莫迦です(マジ)
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