[KATARIBE 28495] [HA06N] 小説『比較対照』

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Date: Sun, 27 Feb 2005 21:28:18 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28495] [HA06N] 小説『比較対照』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年02月27日:21時28分17秒
Sub:[HA06N]小説『比較対照』:
From:久志


 久志です。

 高校時代の美絵子のお話、入学したての頃です。
 何気に女子高生時代の美絵子書くの好きだったりします。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『比較対照』
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登場キャラクター 
---------------- 
 藤村美絵子(ふじむら・みえこ) 
     :幸久の元カノ。ちょっと気が強いけどいいお姉さん。 
     :当時高校一年生。 
 本宮幸久(もとみや・ゆきひさ) 
     :葬儀屋さんで霊感のある軟派にーちゃん。 
     :当時高校一年生。 
 本宮友久(もとみや・ともひさ)
     :幸久の二つ上の兄。学校内で人気。
     :当時高校三年生。隔世遺伝で青い瞳している。

入学後のひとコマ
----------------

 吹利学院高校に入ってすぐの頃。
 クラスの友達につきあわされて、何度か三年の教室をのぞきにいったことが
ある。まあ、よくあるアレよね。憧れの先輩の姿をこっそり見たいっていう、
よくある女の子の事情。

『ねね、ちょっと三年の教室見に行くの付き合って!』
『いいけど、何しにいくの?』
『えへへ、部活の先輩にプリント渡すの口実にして、こっそり友久先輩にお会
いしたいなあって』
『ああ、友久先輩か』
『そそそ、青い瞳の友久先輩♪』

 三年の友久先輩。その頃、クラスの女子生徒で一番の話題の主。
 というか、ほとんど学校中の女子生徒の話題の主でもあったりする。

 友久先輩、ユキの二つ上のお兄さん。
 すっきり整った端整な顔立ち、どことなくユキにも似てる。立ち居振舞いも
カッコよくて、そんでちょっと不良っぽい雰囲気だけど優しくて。
 ここまででも充分人気がでるに足りるんだけど。

 何よりも、皆の目を引くのが、顔立ちに合わない澄んだ青い瞳。

 まるで焼きつくような強い印象。このインパクトは大きい。
 なんていうか、これで人気でないほうがおかしいわよね。


「お兄さん……なんだよね?」
「なんだよ、その疑いを含んだ言い方は」

 別に疑ってるわけじゃないわよ、二人ともよく似てるし。
 ていうか、これって聞いてもいいことのかな?

「先輩のあの目って……」
「ああ」

 あたしの問いに、聞き飽きたとも言いたげな感じで。

「うちのばあちゃんが外国の人なんだよ、青い目の」
「そう、なんだ」

 そうなんだ。
 でも普通さ、瞳の色って黒いほうが優先的に遺伝するんじゃなかったっけ?

「よくわかんねーけど隔世遺伝っつーやつ?どういうわけか友兄貴と弟の右目
だけが青い」
「へぇ」

 そーすると、よ。

「じゃあ、あんたもクォーターなんだ」
「まあ、そだな」
「ぜんっぜん見えないわね、おもっきし日本人顔」
「うるせえよ!」
「あははっ」

 当の幸久。
 別段、お兄さんに比べてカッコ悪いなんてことはない。そこそこカッコいい
んじゃないかとは思うわよ、あたしの贔屓目で見ても。兄弟だから友久先輩と
もどことなく似てるし、雰囲気とか面影とか。

 でもなあ。
 やっぱりというかなんというか、青い瞳のお兄さんの印象が強烈すぎる。
 本人全然ダメなわけじゃないのに、すぐ身近に強烈な比較対照がいるせいで、
霞んでしまうというかなんというか。彼だって悪くはないけどあのお兄さんと
比べるとやっぱりどこか物足りないように見えてしまう。
 でも、こう、こっちのほうが素朴というか、親しみがあるというか、とっつ
きやすいというか、別に悪いわけじゃあないと思うのよね。
 って、なにフォローしてるかな、あたし。

「なに人のツラじろじろ見てんだよ」
「別に」

 ふと、そんなやり取りの間、クラスの女の子がユキの肩を叩く。

「ねえねえ、幸久くーん」
「あんだよ」
「ねえ、この差し入れ、友久先輩に渡して!お願い」
「いーよ、でもあんまし期待すんなよ」
「ありがと〜」

 もう慣れたというか、あきれたというか、何度となく交わされたっぽい会話
を繰り返してる。

「……ホント人気よね、友久先輩」
「橋渡しに使われる俺はたまんねえよ」

 憮然として、渡された紙袋を机の上に置く。


 ユキとはじめて話した講習帰りの時。
 兄弟ことの話題になって、ちょっとひねた感情を垣間見たことがある。

『頼れるお兄さんっていいじゃない』
『まあ、頼れるってのはあるけど、いいとこばっかじゃねえよ』

 いいとこばっかじゃない、かあ。
 なんか、このユキの様子だと、昔っからあのお兄さんと何かと比べられてき
たって雰囲気のかな?
 世間一般は、口を揃えてお兄さんの方がいいって言うんでしょうけど、ね。

 でも。

 あたしは。

「……なにまたガンつけてんだよ」
「べっつに」

 あたしは。
 こっちのが、いい、って思うからね。


時系列と舞台 
------------ 
 1993年4月 吹利学院高校
解説 
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 吹利学院高校入学直後、幸久と美絵子の会話。
 ヒネた幸久に対して美絵子が思うのは……
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
以上 




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