[KATARIBE 28492] [HA06N] 小説『捜査の理想』

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Date: Sun, 27 Feb 2005 01:55:41 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 28492] [HA06N] 小説『捜査の理想』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2005年02月27日:01時55分40秒
Sub:[HA06N]小説『捜査の理想』:
From:久志


 ちは、久志です。

 とりあえず、ツンデレ事件簿をなんとかしよう。
 ちなみに奈々さんのキャライメージは、小西真奈美でお願いします。
 (個人的趣味丸出しです)

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
小説『捜査の理想』
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登場キャラクター
----------------
 本宮史久(もとみや・ふみひさ) 
     :吹利県警巡査。のほほんお兄さん。またの名を昼行灯。
     :2000年当時、26歳。
 卜部奈々(うらべ・なな) 
     :吹利県警警部。一見キツイ女性。最近振り回され気味。
     :2000年当時、24歳。

奈々 〜夢の終りは
------------------

 小さい頃。
 いつだったか、刑事という仕事は危なくないのか?と父に聞いたことがある。

 単にその頃は映画やドラマでの刑事という仕事はいつも危険と隣り合わせだ、
というイメージを当たり前のように思ってたせいもあるけれど。
 あの頃は、ただ父のことが心配で、このまま帰ってこないのではないかとい
う不安で、いつも心が一杯だった。

『奈々』

 父は笑いながら答えたような気がする。

『確かに刑事という仕事はね、危険な事もあるよ?でもね、そんなドラマみた
いな派手なものじゃあない。捜査というものはね、意外と地味なものなんだよ。
こつこつと正確な情報を集めて、正しい犯人を導きだして、被害が広がらない
うちに先回りして犯人を暴れさせず逃さずに取り押さえる。地味かもしれない
けれど、それが理想的な事件の解決なんだよ』

 大きな手が頭をなでたのをおぼえている。

『そりゃあ今までだって、危険な目にあったことはあるよ。でもね、父さんは
刑事という仕事に誇りを持っている』

 刑事、といういかついイメージからはちょっと外れた、穏やかでのんびりと
した父さんの笑顔。

『奈々がお嫁に行くまで父さんは死ねないよ。母さんに申し訳ないからね』

 でも、いつも最後はあの日の後姿。

 夢の中に父が出るとき、いつも最後は後姿で終わる。
 二度と帰ってこなかったあの日のまま、私の中で止まっている。

 目の前の広い背中。
 その姿が不意にゆがむ。

 そのまま、ゆっくりと振り向いたのは。
 ちょっとぼんやりとした雰囲気の……でも、父とは違う。

 そこで私は目を覚ました。


奈々 〜重なる面影
------------------

 覆面パトカーの助手席に座り、窓から道行く車を眺める。
 朝から県警で今日の捜査方針の打ち合わせをした後、本宮巡査の運転す
る車で例の古物商へ聞き込みに向かうことになった。

 窓の外に流れる風景。
 平日の昼少し前という時間帯ということもあって、車も少なく道はすこし空
いている。それでも、先日調べた古物商はそこそこ市内から離れた位置にある
為、移動には少し時間がかかりそうだ。

 あくびがこぼれそうになるのを我慢しながら、小さく息をつく。
 少し寝不足かもしれない。
 聞き込み捜査で力が及ばないならば、せめて捜査資料集めでと。粘っていた
せいか、疲れがあまり取れていない。

 それに、最近。
 昔の夢ばかり見て、よく眠れない。

 小さい頃の父の夢。
 今まで父の夢を見たことは何度もある、けれど。こんなにしょっちゅう父が
夢に出てくるのは、小学生の頃父が亡くなってすぐの頃以来だ。

 どうして、こんなに父のことを思い出すのか。
 そして、最後には、決まって。

 小さく息を吐き出す。
 どこか父にも似た、でもやっぱり違う、ちょっとぼんやりした雰囲気。
 ふわりとした普段の穏やかな顔、でも時折見せる寸分の隙もない厳しい顔。

 夢の最後には、決まって彼が出てくる。

 もうひとつ、息を吐く。
 まだこれから聞き込みに回らないといけないのに、しっかりしないと。


 赤信号。
 止まった車の中、互いにずっと黙っている。
 車の音、外の雑音がやけに大きく耳に聞こえる。なんとなく居づらくて、
何か話そうかと思いながらも、言葉が出てこない。
 事件のこと、古物商のこと、捜査のこと。
 これから考えなければいけないことはたくさんあって、話すべきことはたく
さんあるはずなのに。言葉になって出てきてくれない。

「警部」
「はい?」

 黙ってハンドルを握っていた彼が口を開いた。

「少し座席倒して楽にしててください」
「え?」
「目的地まだ先ですから」
「ですが」
「無理はいけませんよ、休息も仕事のうちです」

 いつものふわりとした穏やかな笑顔。

「体、資本ですから。ね?」
「でも、あなたは」
「僕は頑丈なのが取り柄なので。大丈夫、先輩なんて移動中しょっちゅう寝て
ますから」

 ちょっとのんびりとした声、少しぼんやりとした顔。
 特に彼が何をしたというわけでもないのに、何故か体中から重苦しいものが
するりと抜けていくのを感じる。

「……すみません、巡査」
「いえいえ」

 信号が変わり、彼は黙って車をスタートさせる。
 少しシートを倒してゆっくりと体を沈める。ここ数日気を張りすぎたせいも
あって、かなり疲れが体に染みついている。
 力を抜いたまま、ぼんやりと運転席の姿を眺める。

 夢の終り、父の後姿に重なるのは……何故なのか?


史久 〜捜査の理想
------------------

 車を運転しながら。
 最初は昼少し前という時間帯で、車の流れも少なかったものの、大通りに
入ってからは、少し道が混んできた。まだ目的の古物商までには少しかかる
のになあ。
 警部は助手席で座席を倒してぐったりとシートに寄りかかっている。
 やっぱり、初現場で色々疲れているんでしょうね。

 でも、こう。なんだろうなあ。
 なんだか警部がこっちを見ているような気がして。なんかちょっと落ち着か
ない。

「……巡査」
「はい?」
「捜査の理想とは、どういうものだと思いますか?」

 どうしたんだろう?なんだか突然だなあ。

「捜査の理想……ですか」

 ふむ、と。ハンドルを握ったまま少し考える。

「理想的な事件の解決を考えるならば、派手な追跡や銃撃戦もなく。確実な情
報を集めて、正しい犯人をあぶり出し、被害が拡大する前、犯人が動く前に先
回りして取り押さえる」

 ドラマや映画のような派手なやり合いなどなくていい。つまらなかろうが、
地味だろうがそんなものは関係ない。
 事件が解決するならば、そんなことはどうでもいいことなのだ。

「その為になすべきこと、と考えると。やはり正確で正しい情報と証拠を素早
く集め、的確に推理し、状況を常に判断することでしょうね」
「……はい」
「一瞬の判断ミスで、最悪の事態に陥ることもある仕事ですから」
「そう、ですね」

 そうだ。ほんの少しの判断ミスで、状況が最悪に転じることもある。
 今の僕には、状況を見て判断を下さなければいけないという重要な任がある。

 でも。
 警部、突然どうしたんだろう?


奈々 〜求める記憶
------------------

 何気ない言葉に、一瞬どきりとした。
 重なった姿、重なった言葉。

 思わず、小さなため息をついていた。

「……巡査」
「はい」
「最近、昔のことばかり思い出すんです」
「え?」

 私は何を話してるんだろう。こんな何の意味もないことを。

「何度も何度も、繰り返し……すっかり忘れていたはずのことを今になって思
い出すんです」
「はい」
「……どうしてなのか、わからないのですけど」

 父を忘れていたわけではないけれど。今まで、父のことを思い出さなかった
ことはなかったし、あの日の夢を見たことは何度もあるはず。
 でも、それは過去のこととして心にうずめていたはずなのに、どうして今に
なって?
 でも、それを、何で彼に話してるんだろう。

「警部」
「はい?」
「何かを思い出すということには、ちゃんと意味があるんですよ」
「……え?」
「思い出は、今自分が求めている記憶です」

 ずきりと、なぜか胸が痛んだ。

「何かを思い出すということには、その思い出に関わることをあなたが求めて
いるということだと、僕は思います」
「…………」
「まあ、あくまで僕の素人考えにすぎませんけど」
「はい……」
「あまり気にしすぎてはいけませんよ」
「はい……ありがとうございます」
「いえ、気になさらず」

 ひとつ、息をつく。
 思い出は、今自分が求めている記憶。

 求めている記憶……私が?


時系列と舞台 
------------ 
 2000年2月頃 
解説 
---- 
 史久と奈々さんの出会いの頃。小説『蝙蝠の思惑』の続き。 
 聞き込み移動中での史久と奈々さんの会話。奈々さんの想いは?
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以上。

 事件が進んでねへ!(思いつかないから!)




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